死霊魔導師(禁じられた遊び アサガオ) Lv52
ノイズ。まるでチャンネルが合っていないような雑音と映像。
次第にチューニングが合っていき映る何か。
それは記憶だ。
それは光景だ。
それはただ一度きりの邂逅だった。
夕方の校舎屋上。
フェンスの外側に痩せた少年がいる。強風にさらされて、夕陽に染まった柔らかそうな髪と、白いワイシャツをなびかせている。
彼は躊躇なくその身を外側に向けて、遥か下界をのぞき込んでいる。
金網を握っているその少女のように細い指を離してしまえば、真っ逆さま――デッドエンドしてしまうのに、まるで恐れた様子がない。
その光景に、私は――夕凪朝顔が抱くのは奇妙な共感と、苛立ちだった。
彼は私と同種だ。
私も彼のように死を恐れたりしない。
でもそれでも私はああいうふうに生を無造作に扱うことができない。そんなもったいないことができるだろうか。
「――――」
「いや。そんなつもりはないよ。死んだらどうなるのかについて考えてたんだ」
少年がこちらに気がついて、笑いかけてくる。夕陽の逆光で口元しか見えないが優しげな顔をしていると、私は思った気がした。
「――――」
「死んだら次に行くべきところはどこなんだろう。天国とか地獄って場所が本当にあるのかな」
「――――」
「そうか。君の生死観は非常にさっぱりしてるね」
彼の笑顔はすこし困ったような、さびしそうなものに変わって――ノイズ。
数秒間の砂嵐の後、ブラックアウト。
電源が落ちたように画面は真っ暗で静かなものになる。




