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スケルトン Lv8

「染まりな三度黒(タランチュラ)


 巨斧を構えて正面から迎え打ったつもりだったが、思った以上に素早い動きで巧みに懐へ入り込まれる。相手の剣撃がスマッシュヒット。後方に吹き飛び、激しい音を立てて崩れる全身の骨。


「こいつにヒットすると一度目で毒、二度目で麻痺、三度目で即死する」


 おいおいせっかちすぎるだろ、せっかく見つけた『協力者』はどうやら話の通じる相手ではないらしかった。


 どうやらスライムの死骸を生産していたのはこのショートソードらしい。確かにスライムの弾力性のある塊を裂けるほどなら切れ味は鋭そうだし、黒い刀身は毒を塗りたくったか、毒そのものを固めて造ったように見えるくらい強力そうだ。


 だがしかしそれだけのこと。


「期待外れだな」

「なに?」

「神経毒なんてスケルトンに効くわけがないじゃないか」


 俺はしゅるりとスケルトンの身体を復元させる。

 この身体――何度壊れても限界なく元に戻ろうとする上、倒れるたびに戻るスピ-ドが確実に早くなっている。身体を循環している力場のようなものが少しずつ鍛えられているらしい。


「ちっ情報通りだな。あっさり復活しやがる」


 さてどうしよう。

 彼の『協力』を得るにはどうすべきだろうか。説得、懇願、強要、恫喝、詐欺、賄賂、取引。手練手管はいくらでもあったが、こういう状況になってしまってはティガーさんとやらに『協力』を仰げそうもない。


 まあいい。

 だとすれば最良の一手は「説明しない」ことだ。作戦の性質上、黙っていても思い通りに事が運んでくれさえすればいい。細かい調整についてはこちらがうまく誘導してやれば済むのだから。


「じゃあこれなら文句ないだろう」


 三度黒とやらを一旦鞘へと戻すと、帯剣していた別のもうひと振りを取り出してくる。こちらもショートソードで、似たように異様なまでに黒い。違いは先ほどの剣が一切光を弾かなかったのに対して、こちらがくまなくぬらぬらと黒光りしている。


「塗りたくれ――」


 斬りかかってくるティガー。

 先ほどの失敗を活かしてバックステップで距離をとろうとしたが、果敢にも飛び込んでくる彼の動きに押される。よほど自らの足と甲冑に信頼を置いているらしい。全身を鎧っているとはいえなかなかできない行動だ。


黒漆喰(キングコブラ)!」


 刎ねあがり、おれの右即頭部の近くを通り過ぎるショートソードの刀身。避けきったつもりだったが失敗したらしい。ワンテンポ遅れて、背後でごちんと床に落ちる音。右腕骨の途中が切断され、巨斧を握っていたはずのその先が消えている。


 だがそれだけの事。


「戻れ」


 俺の呼びかけに応じて、右腕骨を復元させようと働き出す力場。

 だが反応が芳しくない。全身ごとバラバラになっても数秒で戻ってきたはずなのに何も起こらないできる。


「何んでだよ」


 振り返り確認する。

 三歩ほど離れた場所には転がっている巨斧。そしてそこから更に二歩ほど離れて右腕の骨らしきもの。白かったはずのそれはどういうわけかひどく汚れているようだ。黒くなったというのが正しいのかもしれない。しかもその形状は辛うじて原型を留めてはいたが蝕まれ溶けかけている。


「残念だったねえ。こいつの腐食性毒は鉄だってえげつなく溶かすのさ」


 毒による溶解。これは効果的かもしれない。

 最初から死んでいるアンデッドモンスター、しかも殴っても、蹴っても、斬っても、砕いても元に戻ってしまうようなスケルトンを殺すには元から断つしかない。徹底的に手の骨も、足の骨も、肋骨も、背骨も、そして頭蓋骨まで残らず塵に変えるような方法しか。


「お次は左腕だよ」


 右腕と武器を奪われた時点でこちらは殆ど為す術はなくなった。反撃ののろしを上げるにはまず巨斧を取り戻す必要があったが、そんなことは敵さんも読んでおり、先回りして蹴り飛ばされていた。

 その上で宣言通り、左腕を跳ね上げられてしまう。


「その次は左足で、その次は右足」


 ヒットした部位は毒によって溶けてしまう以上、受け止めることは不可能。だとすればこちらにできることは回避に徹しつつ、隙をついて、彼のはるか後方にある巨斧を奪還することのみ。

 盾があれば状況が違うのかもしれなかった。だがひたすら身ひとつで避け続けることにも限度がある。目で追うことがやっとの剣撃を紙一枚の差で二回避けた後で、左足の骨に刃がかする。

かするだけでもアウトらしい。数秒の後、斬られた足は斬り口から黒く蝕み始め折れてしまう。


「思ったよりも手応えがなかったねえ。ティガーさんがっかりだな」


 膝をつくこともできなくなった俺に伸しかかると、舌舐めずりするティガー。あとはもう子供に遊ばれる人形のようなもの。四肢をもがれても、身体を引きちぎられても、逃げるどころか抵抗することも不可能だった。


「すけるとんはあたらしいわざをおぼえた」


■■■■■■■■■■■■■■


《名前》「ベス(魔王の僕見習い)」 


《種族》「スケルトン」


《Lv》「8」 


《HP》「9/9」 


《スキル》

「ポイズンタッチ」:毒性冒された掌による一撃。拳による攻撃+毒の追加属性。特にボーナスは発生しない。


「ペイルドレイン」:スケルトン固有の異常体質バッドステータス。骨を媒介に返り血を取り込み、怨念ごと魔力を蓄積、強化する。戦闘終了後、殺害した人数*6D/2の結果を[魔力]に付与。並行して[狂気]にも加算。暴走判定は狂戦士と同じく毎ターン行う事。また百人斬り達成の時点でレッドスケルトンへの昇格判定を行う事。


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