スケルトン Lv1
「ぞんびは、すけるとんになった!」
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《名前》「ベス(魔王の僕見習い)」
《種族》「スケルトン」
《Lv》「1」
《HP》「7/7」
《スキル》
リ・ボーン/スケルトン固有の特異体質。強い衝撃に対して骨がバラバラになるがすぐに復元することができる。物理ダメージを無効化する代わりに、1ターンをスタン扱い。
《所持品》
「ジャイアントコボルトの手斧」:巨大な手斧で扱いが難しい。六面ダイス×2。攻撃命中率-5。
スケルトンになった報告とダンジョンのフロアを煙だらけにした詫びを入れに行くことにした。
アサガオを探すのは難しくない。彼女は殆どの時間をこの「図書館」か別のフロアにある「実験室」に入り浸っている。
魔王の分際で本当にひきこもりな性分である。
「おう。待っておったぞな。ちこうよれぞな」
今回もアサガオは『書架』で本を読んでいる。というか雑誌か。クロスワードパズルというタイトルが見える。暇なのだろうか。
近づくと、こちらが話しかけるよりも先に誌面から顔を上げしゅたと手を挙げてくる。
「……あの俺が誰かわかるんですか?」
「べスであろう?」
アサガオは首を傾げる。
「どんなに太ろうが痩せようが骨格は変わらん。ここに百体スケルトンがおっても見分けがつくぞな」
「いや、別にダイエットしたわけじゃないんすけどねコレ」
そう言えば子供の頃の話し相手が髑髏だとか言っていたな。そもそも有名な死霊魔導師でもあるのだ。彼女にとっては人間がゾンビになったり、ゾンビがスケルトンになることは異常な事ではないのかもしれない。
「くんかくんかくんか。ふむ死臭は消えたようだぞな」
「臭いませんか」
「うむ。これでいつでも私のストーカーを続けられるぞな。よかったな」
ちっ。連日の俺の行動に気がついてやがったらしい。
底知れねえやつだ。
こちらが従う振りをしているだけで、まだ敵意を失っていないことも気がついているのだろう。
だがアサガオの発言に緊張感はなく牽制や挑発のつもりすらないらしい。
それどころか彼女はどういうわけかおもむろに懐から虫眼鏡を取り出すと、不用意に近づいてきた。
しゃがみ込んでじいいっと俺の身体を舐め回すように観察し始めた。予測できないその行動に、俺は対応することができずにただ居心地悪く立ち尽くす。
「ふむ骨格、形状、本数は普通ぞな」
「ちょっと叩くぞな」
「いてっ」
「いい音だぞな。骨密度も見たところ異常なし。基本的な人間と変わらんようだな」
「あの、なんなんですか」
「ただの興味本位だぞな。なあもっと詳しく調べたいのでサンプルに背骨をくれ」
「断る」
「恥骨でもかまわん」
「やれるか」
「ケチめ。こうまで魔王の言うことを聞かんと正直めげるぞな」
アサガオはいまいまし気な顔でこちらを睨みつけながら、しぶしぶ虫眼鏡を懐にしまう。
「とこでベス。お前に用があったぞな」
「なんでしょう」
「このところ侵入者が頻繁しておる」
「そのようですね」
「私の額が跳ねあがったようだぞな。おそらく教会が本腰を入れ始めたぞな」
「教会ですか」
「うむ。懸賞金の手配主だぞな」
生前、賞金稼ぎを生業にしていたので何度か話を聞いたことはある。教会が手配主になることは非常に珍しいことらしい。彼らは「権威」を大切にし、それ故世間の目を非常に気にする彼らは自らの問題を表立って外部に託さない。
その為に、大抵は内々に処理してしまう事が多く。どの教会であれそれ専用の「兵隊」のようなものを飼っていると噂ではきいたことがある。
「なにやらかしたんです」
「にやり。聞きたいならば肋五本くれぞな」
「それなら知りたくありません」
「ちっ」
だがこの女はその教会から名指しでその罪を問われ、その首に値札をつけられることになった。よほど彼らを冒涜するような、もしくは利益を害するような事件を起こしたやってのけたに違いない。
俺も彼女の手配書を見たことがないわけではない。だが普段から人相と懸賞金にしか興味がないため、書かれている罪歴を思いだそうとしたが頭から出てこなかった。
「とにかく現在も、ダンジョンの地下二階あたりをたむろしているやつおるぞな」
「オーケー。早速、追い返してきましょう」
俺は彼女の言葉に即答した。
まだこのスケルトンの身体には慣れていない。これまでのゾンビからどのように変化したのか未知数な部分が大きい。実戦を通して検証しなければ分からない事だらけだった。
ふふふ。腕がポキポキ鳴るぜ。
「ふむ。嬉しそうだぞな」
「新しい武器を手に入れると試してみたくなりませんか。それと同じですよ」
俺の言うことが理解できないというようにアサガオは困った顔をして肩をすくめた。