File 01.須々木ゼミナール殺人事件!
鳴海は、都内某所に存在する予備校、須々木ゼミナールに通っている。
その理由は勿論、東大合格の為である。
その鳴海に、メガネを掛けた男が声を掛けた。
「おっす。鳴海、宿題見せてくれよ?」
「山路、お前また忘れたのか?」
「そうなんだ。だからお前の写させてくれよ」
「断る」
「そ、そんな事言うなよぉ」
その時、金色で長い髪の少女が、山路に声を掛けた。
「アンタね、宿題くらい自分でやんなさいよ」
「五月蝿え、お前には関係無いだろ」
山路はそう言いながら、少女の方を振り向いた。
「何よ?」
「全く、これだからガリ勉はムカつくんだ」
バンッ!──少女は机に手を着き、椅子を倒して立ち上がった。
「な、何だよ?やるのか?」
と、構える山路。
しかし、少女はこっちに来ず、走って教室を出て行ってしまった。
「泣かしたな」
「な、何だよ?俺は何も」
「『ガリ勉』言うたろ?」
「何でそれで泣くんだよ?」
「さあな。本人に訊いてみたらどうだ?」
「何で俺がっ!?」
と、その時、甲高い悲鳴が聞こえて来た。
教室は一斉に静まりかえる。
鳴海は、悲鳴の下へ駆け出した。
「何処行くんだ鳴海!?」
しかし、その言葉は彼にはもう届かない。
鳴海は女子トイレに来ると、そっとドアを開けて中を覗き込んだ。
すると、奥の方で先程の金髪の少女が、腰を抜かしてしゃがんでいた。
「どうしたんだ?」
鳴海は完全に中に入ると、その少女に声を掛けた。
少女は口をパクパクさせ、正面の個室を指差した。
鳴海は、恐る恐るその個室に近付き、中を覗く。
「!」
驚いた鳴海は、少女と同じ様に腰を抜かしてしまった。
目の前には、体中を滅多刺しにされ、全身真っ赤に染まった女性が、便器を背にして寄り掛かっている。
「と・・・・・・取り敢えず、110番だ」
鳴海はそう口にすると、携帯電話を取り出して通報した。
「さてと、死体をちょっと弄りますか」
鳴海はニヤリと笑うと、白い手袋を出してはめた。
「な、何するの?」
「死体を調べるんだ」
鳴海は少女にそう言って、死体を調べ始めた。
(成る程、心臓を一突き。ほぼ即死って所か。
殺害されてから1〜2時間程経ってるな)
鳴海は腕時計を見た。
(10時半って事は、死亡推定時刻は8時半から9時半頃か?)