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File 09.道警

 二人は署内に入ると、受け付けの女性警官に捜査一課の場所を訊ねた。

「あちらの階段を登って二階の通路を右に折れて突き当たりが捜査一課です」

 と、階段を差しながら答える女性警官。

 鳴海は礼を言うと、受け付けを放れてその階段を理奈と共に登り、通路を右に折れて突き当たりの捜査一課の部屋に入室した。

(あれ?)

 と、誰もいない部屋の中を見回す鳴海。

「どうしたんでしょうね?誰もいないなんて」

「さあな。取り敢えずどっか座って待ってようぜ?戻って来るかもしれねえし」

 鳴海はそう言うと、客人用のソファを見付け、そこに腰を掛けた。



「氷鉋さん、起きて下さい」

 鳴海はその声に気付き、目を開けた。

「やべ、俺寝てた?」

「寝てました」

それより──と、理奈は向かい側を示す。その先には、スーツ姿の刑事が座っていた。

「あ、初めまして。氷鉋 鳴海です」

 と、会釈をする鳴海。

「こちらにはどう言ったご用件で?」

 その問いに、鳴海はある一枚の写真を取り出した。

「この方、ご存知ですよね?一年前に殺されたと言う山路 敏哉さん。犯人はまだ捕まっていないそうですね。その件について、詳しくお聞かせ下さい」

「うーん、外部の者に捜査状況を話すのはちょっとねぇ・・・」

「発見された時は滅多刺しだったそうですね」

「君、それは残酷すぎて一般公開していない情報だよ。それなのに何故君が知ってるんだい?」

「そんな事はどうでも良いじゃないですか。それより、当時の状況を詳しく話してくれませんかね?」

 その言葉に、刑事はムッとした。

「君、ちょっと来たまえ」

 刑事はそう言うと、無理矢理鳴海を取調室に連れて行った。



「それじゃあ話して貰おうか。君が何故、事件の状況を知っているのか」

「だから、そんな事どうだって良いだろ?」

「良くない、こういう事はハッキリしておかないと。それとも、言えない事なのかな?」

「あんた、俺を疑って?」

「事件の状況を知っているのは、我々警察と犯人だけ」

はあ──鳴海は溜め息を吐くとこう言った。

「やれやれ、仕方無いですね」

 と、一枚の写真を机に置いた。

「こいつは東京で起こった事件の被害者の写真だ。俺はこの事件を調査してる探偵でな、警視庁でこっちで起きた事件の事を聞いてやって来たんだ。

 しっかし、こっちに来てもまた取調室か。親父・・・否、警視総監に言いつけてやるか。そしたらお前、多分クビだぞ?」

「脅迫で逮捕しますよ?」

「脅しじゃねえし。なんだったら、本人に直接聞くか?」

 鳴海はそう言うと携帯を取り出し、父の携帯の番号を入力して通話を押した。

「ほらよ」

 と、刑事に電話を渡す鳴海。

 電話を受け取った刑事は、応答した相手に訊ねた。

「もしもし、警視総監さんでいらっしゃいますでしょうか?」

「そうだが、あんたは?」

「私、北海道警察の者でして、今そちらの息子さんがお見えになってるんです」

「そうか、無事に着いたのか。所で、何故わしの息子の携帯を?」

「それは息子さんが、警視総監さんの息子だとか言って、確認しろと私に渡したんです。て言うか、あなた本当に警視総監さんですか?」

「その通り、わしが警視総監の氷鉋 隆一だ」

「えっ・・・・・・」

「どうした?」

「何でもありません!失礼しました!」

 刑事はそう言うと、電話を切った。

「いやぁ、氷鉋さん、先程はとんだご無礼を。お詫びと言っちゃなんですが、事件について詳しくお話しましょう」

 刑事はそう言うと、鳴海を先程のソファへと案内する。




随分まったりだと思い始めた今日この頃。



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