成らない 携帯
部屋の中央に置かれた携帯
ぽつんと
ひとつだけ
何もない部屋にはとても違和感がある
今日はいつもと違って上から携帯を見てみた
上から見る携帯はたくさん受信している
楽しいね
あたしは携帯があまり器用に使えなかったのでバイブレーターだけであった
鳴りつづけている
みんな何を送ってきたのかな
なんの用があるのかな
見るのが楽しみ
横からみる携帯は
無愛想に存在するだけ
なんの反応もしないし
暗い画面のまま
時計だけが動いている
一秒が遅く感じる
時が止まりそうな勢いだ
悲しいね
下から見る携帯は
意味もなく
待ち受けだけが開かれるためのもの
待ち受けはあたしを見つめてくれるが
待ち受け以外は誰もあたしを見てくれない
寂しいね
上から見ただけでこんなに世界が変わるものなのですか
上から見た世界は多少綺麗に感じます
汚い人や汚い物を見てきたあたしにはそう感じました
突然
ドアがガチャガチャと乱暴にこじ開けられた
大家さんが合鍵で部屋に入ってきた
あたしは
あまりにびっくりして
『いきなりなんですか!』と叫んだ
大家さんはのそのそと部屋に入り
電気をつけた
急に明るくなったため
目がちかちかすると思ったが
全くならなかった
そしてその重い口を開いた
『ここで死なれたら迷惑なんだよ 馬鹿女』と
虚しいね
まだ嫌われるの?まだ終わらないの…
ENDLESS