Extra Daily-X'mas Lovers 03
と言う事で。俺たちはガストに来ていた。それぞれ注文を終え、互いに無言になる。
綾菜が、先に口を開いた。
「ねえ、大輝」
「…何だ?」
「あんた、何か悩んでない?」
「…当たらずと言えども遠からず、ってところかね……」
そこで、注文していたものが届いた。
俺はそれを口に運びつつ、ぽつり、ぽつりと話しはじめた。何となく綾菜になら、話してもいいような気がした。
好きな相手がいた事、その彼女を今日デートに誘った事、そして待ち合わせに来てもらえず、更に振られた事……。
話し終えると、大分すっきりした気持ちになった。結構色々あったと思っていたが、整理するとそれほどでもなくて、少し驚いた。
話を聴き終えると、綾菜は
「そうだったんだ……」
と、何処か寂しげに呟いた。
「……ねえ、大輝。今でも、その、そ、その娘の事、す、好きなの?」
「…どうなんだろうな……」
自分の手を見つめつつ、胸の内の想いを言葉に表そうと言葉を探す。
「…確かに、今でも俺は、彼女のことが好きなんだろうな」
「そ、そう…」
「…でも、さっきまでのような恋い焦がれるといった感じのモノでは無くなっている、気がする」
「へ、へえ……?」
「…振られた所為かな、それほど彼女が《特別な存在》じゃあなくなっている気がするんだ」
「そう……。だ、大輝。その、わ、私じゃあ、大輝の、と、特別な存在には、な、なれないかな……?」
「…そ、それって」
どういう意味だ、っていう台詞を途中で飲み込む。頭が一瞬、思考を放棄した。
綾菜は続けて言った。
「さ、最後まで言わせないでよ、恥ずかしいから……っ!」
例によって顔を赤くして、綾菜が言う。
その赤く染まった頬が、今の俺にはとても可愛く感じられた。
言葉を失った俺に、上目遣いで俺のことを見つつ綾菜は繰り返し問う。
「ど、どう……かな?」
覚悟を決めて、俺はしっかりと綾菜の目を見て答える。
「…綾菜がそれでいいのなら」
そう言うと、
「…ほ、本当にいいの!?」
綾菜はぱあっと顔を明るくして、にっこりと微笑んだ。その笑顔が見られただけでも、さっきのように答えた甲斐があった気がした。
ガストを出ると、外は更に寒くなっていた。どちらからともなく手を繋ぐ。綾菜の手は小さくて、そしてほんのりと暖かかった。
「……ねぇ、大輝?」
「…何だ?」
「……ううん、やっぱり何でもない」
「…そうか」
しかしまさか、こんな事になるとは。3時間前、俺は振られた事で呆然としていて、何も考えられなかった。でも、綾菜がそれを変えてくれた。
ありがとうな、綾菜。口に出して言うのは少し気恥ずかしかったので、胸の奥でそう呟いた。
〜Fin〜
去年、この話を投稿してから一週間ほど経ってから、〈竹達綾菜〉さんという声優さんの存在を知りました……。
メリークリスマス!斎藤一樹です。
まあ、これを書いているのは9/16なのですが。一時的に雨が強く降ったり止んだり、不安定な天気です。あと蒸し暑い。
予約投稿システムは便利ですよね……。
しかし、相変わらず脈絡の無い後書きですね。それでは良い聖夜を。