Extra Daily-X'mas Lovers 01
粗筋でも述べたとおり、今回の主人公は〈Another Daily〉でもチラッと登場した神崎先輩です。
去年のクリスマス用に書き下ろしたもので、今年のクリスマス用の書き下ろしは明日にうpされる予定です。恐らくこちらはDailyとは無関係の話になる予定です。
電車を降り、俺は池袋駅に降り立った。構内を出ると、ヤマダ電機の正面に出た。
時刻は午後5時12分。周りを見渡せば、人、人、人。
スーツを着てトイザらスのビニール袋を下げて歩くお父さん、仲睦まじく手を繋ぎ歩く恋人たち……。
クリスマスイブの今日、街は人で賑わっていた。いつも人は多いのだが、今日はそれに輪をかけて混雑している。
そして、俺はというと。
「……よし、予定どおりだ」
サンシャイン60通りを少し脇道に行ったところにある、とある公園に入り、そこのベンチに腰掛けた。
俺はこの間、片思いの相手をデートに誘うことに成功した。そしてそのデートを行う日というのが、今日なのだ。
約束の時間まで、あと20分。
約束の時間から、10分が経過した。彼女は、まだ来ない。
それでも、何か事情があって遅れているのだろうと思い、膝に抱えたプレゼントをぎゅっと握り締めて待つ。
そして、約束の時間の30分後。ケータイにメールが来た。携帯を開き、内容を確認する。
「ごめん、私はやっぱり神崎とは付き合えません。今日のデートもキャンセルさせてもらいます」
……その時、俺の中の何かが音を立てて崩れた気がした。それは俺が彼女に対して抱いていた想いかも知れないし、もっと別の何かかも知れなかった。
取り敢えず公園から出て、サンシャイン60通りを歩く。特に何処に行くといった目的も無いままに、ただ、人の波に流されるがままに歩く。
そうしていると、
「あら、大輝。こんなとこで何してんの?」
同じ部活の同級生であり、更にその部活の部長でもある竹崎綾菜がいた。
「…あ?……ああ、なんだ綾菜か」
まさかこんなところで出会うとは。
「なんだって何よ、なんだって。失礼ね、大輝の分際で」
「…お前の台詞よりはましだと思うが」
「まあいいわ、大輝、暇なの?」
「…まあな」
丁度予定が潰れちまったからな。
「じゃあ大輝、あたしにちょっと付き合いなさい」
「…何故そうなる」
「いいでしょ、別に。それとも…迷惑だった?」
そう言いつつ、上目遣いで俺のことを見る綾菜。…ダメだ、可愛すぎる。これじゃあ断れない。
「…わかったよ、一緒に行ってやる」
俺がそう言うと、綾菜は一転してうれしそうな顔になり、微笑んだ。その笑顔が少し眩しくて、俺は綾菜から目を逸らした。
「…で、どこ行くんだ?」
「んー。付いて来て!」
そう言いつつ、綾菜は俺を振り帰りもせずに歩き出した。
「…やれやれ」
溜め息を吐きつつ、俺は綾菜に付いて行った。