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第5話 第2ラウンド

第2ラウンドのゴングはすぐに鳴った。


「おい、その鞄も袋の中に入れろ」

「ダメです!」


アタッシュケース男・奥山は、アタッシュケースを必死に抱きしめた。

だがノッポはそれを強引に取り上げようと、引っ張る。


「やめてください!これは、ただの書類です!」

「嘘つけ。そーゆー鞄には金が詰まってるって決まってんだよ」



ドラマの見すぎだ。



和彦が心の中で呟いた。

だが、和彦の考えていることを察した武上は、

「お前がゆーな」と目で突っ込む。


「本当にただの書類です!ほら!」


奥山はノッポにアタッシュケースを開いて見せた。

なるほど。確かに金ではなく、何やら書類が入っている。


ずっと奥山を気にしていた武上は、その書類をチラッと覗き見た。



何かの設計図みたいだな。

あれほど大事にしているということは、よほど大切な設計図なんだろう。

それにしても・・・



武上はため息をついた。



適当に「いいですけど、ただの書類ですよ」とでも言って、あっさり渡そうとすれば、

あのノッポも「邪魔になるからいらない」と受け取らないだろうに。

固執するから、逆に相手は欲しくなるんだ。



案の定、ノッポは中身を見て一瞬怯んだが、

一向に引き下がらない。


「お前に選択の権利はないんだよ。ほら、入れろ!」

「い、いやです!」

「んじゃ、死ぬか?」


ノッポは奥山に拳銃を突きつけた。

先ほど武上が見た限りでは、本物の拳銃のようだ。


「い、いえ・・・」

「じゃあ、さっさと入れろ」


さすがに奥山もここで撃ち殺されるのは嫌なのか、

渋々アタッシュケースをノッポの手の中の白い袋に入れた。


「よしよし。最初っから素直にそーすりゃいいんだよ」


ノッポは満足気に、次の客のところへ行った。


だが、奥山が憎しみを湛えた目でノッポの後姿をジッと睨んでいたことに、

武上は気付いていた・・・。






「おっしゃ、終了!行くぞ!」


チビが再び和彦の腕を掴んだ。


「いてーな・・・おい、まだ向こうの車両の客から、金巻き上げてねーだろ」


どーゆーアドバイスだ。


「グリーン車はここで最後だからな!じゅうぶんだ!どーせ一般車両の奴らなんか金持ってねーだろ」


一人当たり平均で見ればそうかもしれないが、

一般車両には乗客も多い。

合計金額で見れば、断然一般車両の客から金を取った方が得だろうに、

チビはとにかく「グリーン車は金持ち!」と思い込んでいるようだ。


和彦も、さすがにそれ以上は面倒臭くて口を噤んだ。


「和彦さん!」


寿々菜が、立ち上がった和彦を涙目で見る。


「あのな。死にに行く訳じゃねーんだぞ」

「でも・・・!危ないです!」

「そうですよ!行っちゃダメです!」


山崎も、必死で和彦を止める。

だが、やはり拳銃の前では無駄な抵抗というものだ。


「大丈夫だって。こいつらも、わざわざ人殺しなんて面倒なこと、しねーだろ。なあ?」


和彦が振り向くと、ノッポとチビが頷いた。


「ああ。KAZUなんか殺したら、日本中の女を敵に回すことになるからな。

でも、妙な真似したら、ちょっとくらい痛い目にあうぞ?わかったな」

「へえへえ。んじゃ、行ってくるわ」

「和彦さぁ~ん」


寿々菜と山崎は、指をくわえて、和彦を見送ったのだが・・・



あれ?

なんだろう、これ・・・



「うーん」

「どうしました、寿々菜さん?」


武上が、隣で唸る寿々菜に訊ねる。


「あの、何かちょっと・・・」

「違和感、ですか!?」


武上は勢い込んだ。


和彦は、ドラマ「御園探偵」の探偵役で鍛えたお陰か、武上も一目置く推理力を持っている。。

そして、寿々菜。

物事を理論的に考えるのは苦手だが、優れた直感の持ち主である。


和彦も武上も、寿々菜の直感には幾度と無く助けられている。

(迷惑をかけられることもあるが)


その寿々菜が、またしても何かに違和感を感じたらしい。

だが、残念ながら、いつもその違和感の正体をつきとめてくれる和彦は、今いない。



いや、和彦なんかに頼ってたまるか!

俺だって!



武上は寿々菜にゆっくり話しかけた。


「何を見て、違和感を感じましたか?」

「ええっと・・・さっきの黒づくめの2人、です」


そりゃ、違和感ありまくりである。


「あの人たち、何しにきたんでしょうか?」

「え?」


寿々菜は首を傾げた。


「それは、グリーン車の乗客の持ち金を集めに来たんだろう」


山崎が答える。


「そうなんですけど。そのために、この新幹線をジャックしたんでしょうか?

なんか、割に合わないというか・・・」

「なるほど。確かにそうですね」


武上は頷いた。


仮に、グリーン車だけではなく一般車両の客からも金を巻き上げたとしても、大した稼ぎにはならない。

それならコンビニ強盗の方がよっぽどお手軽でいい。



つまり、車内での持ち金集めは、本来の目的じゃないってことか。

なら、本来の目的はやはり・・・



武上は、ズボンのポケットから携帯を取り出した。





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