#0095d9
「お前ら、一体何しに行ってたんだ?」
過去から帰ってきた妃乃達に尋ねる玄德。
「時間を超えた事を怒るつもりは無いが、何しに行ってたのかはきちんと報告してもらう」
「「はい……」」
怒られると思い込んでいた妃乃達は、想像とは違う玄德の発言に安心しつつ、申し訳なさを感じていた。
自分達で決めた事とは言え、何も言わずに時間を飛んでしまったことで心配かけてしまった。
置き手紙、メッセージ、何かしらで安心させるべきであったと反省している。
「あの、玄德さん」
「どうした?」
「パパやかおりさんは?」
玄德は、デュナと失市の方をチラッと確認しアイコンタクトをとる。
絶対に聞かれる事だとは分かっていた、長い時間旅行から帰ってきて家に家族が居なかったら、そりゃ気になるはずだ。
しかし、現在の街と遥冴達の状況を言うかどうかというのは話が別になってくる。
遥冴本人は話して良いとしていたが、妃乃達が生まれてからずっと隠してきた事を話すのは勇気がいる。
ましてや、本人の口からではなくその友人の口からとなるとまた話が別。
「遥冴とかおりさんは今、買い物に行ってるんだ〉
玄德は二人とのアイコンタクト、己の中で考えた末に嘘をつく事にした。
遥冴は戦闘中、かおりはガウラ本拠地に避難しているのが本当の状況。
「そうなんですね。わかりました」
なんの疑う事もなく純粋に信じる妃乃達。
「それで、何しに行ってたんだ?」
玄德はボロが出る前に話題を元に戻す。
「その、パパがなんで華蓮さん達から信頼…というかなんと言うか……その…一緒に居続けるのか気になって」
妃乃が代表として話し、緒牙がアシストするように続けて話す。
「華蓮さんや鶴見さん、もちろん玄德さんもそうですが、パパの周りにいる人は皆凄い人ばかりです。それなのに……個人喫茶を営業しているだけのパパになんで皆集まって来るのか、どうしても気になってしまったんです」
より明確に理由が判明した。
玄德は頷きながら話す。
「確かにそうだな、気になるのも納得だ。他に理由は無いのか?」
その質問に、最年少の深月が答える。
「いつも、危ない時に助けに来てくれるのは華蓮さん達なのに、皆が口を揃えてパパが一番強いっていつから本当なのか確かめたくて」
最年少の口から出る答えに、玄德は自分達のせいかと責任を感じた。
言われてみれば何回か、そう言った話をした記憶がある。というか改めて言われて思い出した。
「そうかぁ…半分は俺達のせいか。時間移動して怪我とかしなかったか?」
「はい、大丈夫です。むしろ本来の時間軸に戻ってきて元気いっぱいです」
その質問に緒牙が答え、一同は頭を縦に振った。
「そうか、良かった。……………それで君達が気になった事に対する答えは見つかったのか?」
玄德は優しく尋ねる。
九人は顔を見合せて、頷く。
「そうか良かったな。どうだった?昔のお父さんは、今と全く分からなかっただろう?」
遥冴をいじるように玄德は云う。
「はい、一目見た時着いてきたんじゃないかってヒヤヒヤしました」
笑いながら答える妃乃達。
「あっ、どのくらい前まで遡ったんだ?」
玄德は素朴な疑問を投げかける。
「えっと……三十年前? パパがまだ学生だった頃をひと月分見てきました」
「ひと月か……」
ひと月と言う短い期間に玄德は悩み出した。
妃乃達が見てきた期間は比較的安全で大した出来事も起こっていないはず。
遥冴の歴史の数パーセントも分かっていない状態で話すべきなのか、ひとりで悩んでいた。
「玄德さん? どうかした___」
パレットの周囲で大きな爆発が起き、建物が揺れた。
「デュナ、失市! 頼んだ」
玄德は二人にパレットと妃乃達を任せて、爆発の中心に向かう。
「玄德さん!」
「ダメ、着いていこうとするなら、痛くする」
玄德の後を追おうとする妃乃達の身体を黒紫色の手が捉え失市が警告する。
皆は何が起こってるのか分からずに困惑する。
失市の謎の力にも爆発の原因も全てがわからずに居た。
「失市さん? これは一体何が起こってるんですか?」
長女の妃乃が代表して質問する。
「皆がいない間、歴史が動いた。今はそれを止めるために皆頑張ってる」
簡潔に答える失市。
「この、黒い手は何ですか?」
「それは、知らなくていい」
失市はそう言うと妃乃達を解放する。
みんなの頭には疑問符と失市に対する少しの恐怖が浮かび上がっていた。
「パパ達は本当に買い物に行ったんですか?」
失市の発言により玄德の話した事が真実なのか質問する。
「行ってない。かおりは避難、君は戦場」
口数の少ない失市から放たれる単語を聞き全員がまたもや疑問符を浮かべる。
「えっ? パパが戦場に居るんですか? 身体弱いのにですか?」
ひと月分しか過去の遥冴を知らない妃乃達。
過去を知り多少は遥冴が強い事を理解するが、その中でまだまだ身体の弱いお父さんと言うイメージが大きく残っている。
「そう、でも、大丈夫。組んだから」
失市の謎の自信にまだ疑問符も浮かべる妃乃達。
過去から帰ってきたばかり分からないことが多い。
そんなやり取りをしてると窓のそのから玄德が吹き飛んで来た。
ガラスの割れる音、コンクリートが壊れる音が店内に響く。
「玄德さん! 大丈夫ですか!」
「動くな!」
妃乃達の心配を遮るように玄德は立ち上がり、戦闘態勢を取った。
「玄德…久しぶりだな」
爆発の中心へ向かった玄德は、そこに佇む男から話しかけられる。
「なんで、あんたがここに居るんだ……親父」
玄德の前に立っているのは、和筆 吾郎。
彼は二十四年前に玄德自身の手で殺したはずの存在。
「死者を復活させる力がある事を知らないのか」
「お前もその力で生き返ったのか」
「そうだ、そして今お前を殺す事が出来るチャンスを得た」
「……プライドだけが取り柄だったお前が、人に使える立場になるなんてな、可哀想なものだ」
玄德は煽るように吾郎に言い放つ。
「我ながらムカつく息子だな。出来損ないをトップに立たせるなどこの国の人間は愚かな奴ばかりだな。総理大臣殿?」
和筆吾郎も玄德を煽るように言い返すのと同時に、玄德との距離を一気に詰め殴り飛ばす。
「ぐっ___」
何とか、ギリギリで防御する事ができたが見事に喰らい、建物を貫通しながら吹き飛ばされる。
パレットまで吹き飛ばされてしまい、店舗を破壊する。
玄德は妃乃達の心配を聞かずに、すぐに吾郎の元まで向かう。
『制化……速力』
目にも止まらぬ速さで吾郎との距離詰め玄德は速度に任せて武器を振り抜くがしかし、
「ふん、速いな……燕返し」
吾郎は余裕そうに玄德の攻撃を弾きそのまま反撃する。
「流石に対応してくるか」
玄德は燕返しを避け、吾郎と対峙する。
「玄德。置いたな? 昔のお前ならもう少し速かっただろう」
「何を言ってる、お前が何を仕掛けてるか分からない以上、慎重に動くのは当たり前じゃないか?」
「ほう、つまりは手を抜いていたと」
「手を抜いた覚えはないが、もしかしたら無意識にそうしてたのかもしれないな」
玄德と吾郎はお互い譲らずに居る。
先に動けば確実に攻撃を喰らうだろう、お互いなんの確証も無いがふたりは同じ考えをしていた。
「久しぶりの再開だと言うのに酷い出迎えじゃないか」
「先に仕掛けてきたのはお前だろ」
「正直に聞くが、私に勝てるとでも思っているのか?」
「どうだろうな、望み薄じゃないか?」
この会話を最後に玄德と吾郎はただ立ち尽くすだけだった。
静寂を切り裂くようにミサイルが徐々に近づいてくる。
「………」
「……」
頭上をミサイルが通り抜けた時、ふたりは一斉に動き出した。
お互いの武器がぶつかり合う。
単純な力比べなら完全に互角、だがそうなるとスピードが追いつかなくなる。
次第に玄德は押されていく。
「どうした! この程度か?」
吾郎は勝ちを確信し一気にギアをあげる。
その猛攻に玄德は攻めではなく守りに移行する。
捌くのでやっと、その場から動く事も吾郎から目を離すことも、出来ない。
「死ね」
吾郎の会心の一撃で玄德の武器が宙を舞う。
玄德は諦めずに防御の姿勢をとるがその頃には視界から居なくなってた。
「やはり、最終的に子は親に勝てないんだな」
玄德の背後から吾郎の声が聞こえた。
吾郎は背後から玄德の首を狙う。
「カハッ………一体何が」
血を吐いたのは吾郎だった。
手に持っていた刀が地面に転がり落ちる、一歩も動く事が出来ずに、目の前の玄德の背中を見つめる。
「だから言ったろ、望み薄だと」
玄德の声が聞こえると視界に広がる背中は消えた。
「なに? ………いつの間に……後ろに、いた」
吾郎は倒れた。地面に這いつくばりながらも玄德に問う。
「ずっとだ。お前と対面した時からずっとな」
「なんだと? たしかに私はお前を…吹き飛ばした……たしかに、鍔迫り合いをしたはずだ……が」
吾郎の言う通り、玄德は吹き飛ばされパレットを破壊、吾郎の猛攻で武器を弾き飛ばされている。
「お前が死んだのは二十四年前、つまり俺はそこから二十四年間成長している。最初からお前に勝ち目なんて無かったんだよ、まさか二度もこの手で親父を殺す事になるとは思わなかったがな」
淡々と話す玄德に吾郎は笑みを浮かべる。
「あっはははは……やっと、私の息子らしくなったじゃないか……………もう少し早くそうなってくれていれば、共に生きられたというのに………だが、最後に…立派になった……息子を見られて………良かったぞ。天由遥冴には……感謝しなければな………」
吾郎は最後にそう言い残し息を引き取った。
肉体は塵になり、何も残らなかった。
「そうだな、親父の言う通り遥冴には感謝しなくちゃならないな」
最後に玄德は正真正銘、父親の言葉を聞き心のどこがで暖かくなるのを感じた。
「デュナ、どうする?」
「妃乃さん達を逃がすのが先なのですが……退路がありませんね」
デュナ達は大量のロボット兵と戦闘していた。
失市を前線に、デュナは後衛で妃乃達を守りながら戦っていた。
「デュナ、大丈夫なんですよね」
「もちろんです。その為にわたし達がここに残っているのですから」
妃乃達はどうすればいいのか分からずにいた。
「私たちはどうすればいいかな?」
「分からないよ……こんな経験初めてだし」
「デュナが大丈夫って言ってるんだから任せるしかないよ」
戦闘経験やそう言った状況にあった事がない妃乃達はあたふたしながらデュナの後ろに隠れて、邪魔にならないように小さくなっていた。
「流石に多いですね」
デュナがそう呟くと妃乃達の背後からロボット兵が襲ってきた。
即座にデュナは反応する。
「うわぁぁぁ……」
妃乃達の頭上を光り輝く網が通り抜ける。
網はロボット兵達を捉えるのではなくサイコロ状にバラバラにした。
「大丈夫ですか?」
「デュナ……今のは?」
初めて見るデュナの力に疑問符を浮かべる妃乃達。
「網の繊維をとても細くすることによって、切り裂いただけですが」
デュナの返答を聞いて、いやそこじゃないという表情を浮かべる妃乃達。
「それよりも怪我はありませんか?」
「はい、大丈夫です」
「分かりました………緒牙君」
デュナは身体の状態を確認した後に、緒牙の名前を呼ぶ。
「はい、なんですか?」
「飛行機を運転することは出来ますか?」
「えっ? あっ、はい。出来ます」
「そうですが、車は?」
「車も……まぁ、出来ます。というか全部知識だけですが、一通りの運転は出来ると思います」
緒牙の話を聞いたデュナは、数秒考えた後にひとつの提案をする。
「緒牙君。そしたら、そちらの鍵を渡しますのですぐに脱出の準備をしてください」
デュナは一枚のカードキーを緒牙に手渡す。
「えっと、これはカードキーですか?」
「はい、カードキーです」
「……どこに使えば?」
「それは、こちらをご覧ください」
次にデュナは文庫本程度の大きさの物を渡す。
「メモリ号の説明書? メモリ号とは一体なんなんですか?」
メモリ号とはパレット地下に眠る、陸海空宙天全てに対応出来る飛行艇。
二十数年前に遥冴がひとりで作り上げた傑作のひとつ。
「そんなのが、お店の地下に……」
「そちらを使って直ちに脱出してください。目的をガウラ本拠地に設定すればかおりさんが居るはずですから」
緒牙はデュナにもう少し聞きたいことがあったが、時間が無いことを理解しているのでこれ以上は何も聞かずに頷いた。
「それでは、お気をつけて。あっ、それとこちらを妃乃さんに渡しておきます」
デュナは三十センチ×五センチ、厚さ一センチ程の大きさの長方形ブロックを五つ手渡す。
「おぉ、多いですね。これはなんなんですか?」
「こちらは、危険を感じた際にひとつ地面に叩きつけてください。そうすれば、皆さんを守ってくれる効果を発揮しますから」
「御守り的なやつですね。分かりました、デュナも失市さんも気をつけてくださいね」
妃乃はデュナ達に一言残すし姉弟全員て でパレットの地下室に向かって走り出した。
「おっと、妃乃さん達には手を出させませんよ?」
地下室に向かう妃乃達を襲おうとするロボット兵を破壊しながらデュナは戦闘モードに切り替わる。
「えっと……ここを…右だ!」
緒牙を先頭に地下通路を駆け抜ける。
「緒牙、次はどっち?」
「えっと…真っ直ぐ!」
九人全員が全速力で走り、地下通路にはとても大きな音が響き渡る。
本人たちも、うるさいと感じながらも走るしかないので走る。
しばらく走ると、目的の扉が見えてくる。
「はぁ…はぁ…あったこの扉だ」
目的のメモリ号が収納してある部屋にやって来る頃には姉弟全員息が上がっていた。
「みんな、行くよ」
緒牙はデュナから渡されたカードキーを扉に指し、収納部屋の扉を開ける。
「「うわぁぁぁ……凄い……」」
姉弟全員が部屋に入ると圧巻の景色に思わず声が零れてしまう。
メモリ号の全長は二千メートル。
陸海空宙天に対応できるように様々技術が搭載されている。
「凄い……これをパパがひとりで作ったの?」
「しかも、二十数年前って話だからまだ十代くらいの時に…」
「私達が見に行った時代の時には既に完成してたんだ」
改めて遥冴という父親の偉大さ、凄さを実感する妃乃達。
「…………みんな、とりあえず脱出しよう」
緒牙の言葉で我に返る。
「そうだね。緒牙お願いしていい?」
「もちろん任せて」
メモリ号の入口にカードキーを差し込み内部に入る。
中に入ると、とても広い空間が広がっており、椅子や机などが設置してあり過ごしやすそうな空間が作られていた。
「えっと…操縦席は……ここか?」
緒牙は飛行艇の先端に移動し操縦席に座る。
早速、起動しようと説明書を読みながら試行錯誤するが緒牙でも理解するのに手こずる技術がてんこ盛りだった。
「大丈夫? 緒牙……」
姉達から心配の声が掛けられる。
「大丈夫だよ…………って言いたいところだけど、正直ヤバいかも。今までこんな奇術見た事がないんだ、説明書見たところで理解出来ないんだ」
緒牙は妃乃に説明書を渡す。
渡された説明書を読むが緒牙にも理解できないのに他の人に理解できるはずがない。
「どうしよう……こんなの分からないよ」
「本当に同じ言葉使ってるのか、疑わしいくらいなんだけど」
姉弟みんなでメモリ号、操縦席で途方にくれていると。
〈おい、聞こえるか? これ聞こえてんのか?〉
突然無線から声が聞こえる。
「えっ、なになに」
「とりあえず出てみようよ」
「……わかった……」
緒牙はボタンを押し無線を繋ぐ、
〈えっと……もしもし、聞こえてます〉
〈そうか。その声、緒牙だな? ちょうどいい。メモリ号を動かす事は出来そうか?〉
〈いえ、全くです。動かすどころかエンジンを入れることすらできないでいます〉
〈ふーん、遥冴の予想通りか……なら、今から話す手順をそっくりそのままやれ。わかったな?〉
〈はっ、 はい。分かりました〉
無線から聞こえてくる謎の声に従い、メモリ号起動手順を行っていく。
すると、ものの数分でメモリ号のエンジンが起動する。
船内に明かりが灯り、発進準備が完了する。
〈凄い……起動した〉
〈よし、なら後は分かるよな? デュナに頼んで目的地の設定はしておいたから早く飛んでこい〉
〈はい、どなたかは分かりませんがありがとうございました〉
〈はいはい、それと飛ぶ前にハッチは開けとけよ? そうしないとぶつかるから〉
謎の男は無線を切った。
「何が何だか分からないけど、みんな発進するから何かに掴まってて」
「わかった……ってこの椅子シートベルト着いてるじゃん」
緒牙を抜いた八人は椅子に座りシートベルトをロックする。
顔を両手で叩き気合いを入れ、ハッチの開閉ボタンを押す。
メモリ号の頭上が開き外へ続く道が出来る。
「みんな準備はいい! 行くよ!」
「「三……二……一! 発進ー!」」
姉弟全員の掛け声に合わせ、メモリ号が空に向かって飛んで行った。
「なんで俺がそんなめんどくさい事をしないといけないんだよ」
(仕方ないだろ、お前ぐらいしかメモリ号の発進手順知ってるのいないんだから)
遥冴から突然お願いをされたかと思えば、とてもめんどくさい事だったので、引き受けたくない様子のオウガ。
「だいたい、デュナとか近くにいるんだろ?」
(いや、デュナはパレットの防衛で忙しいから対応出来ないって)
「んでだよ、出来るだろあの野郎なら…………はぁ、どうせここでゴネても意味ないんだろ?」
(もちろん)
「引き受ければ良いんだろ、引き受ければ!」
オウガは不貞腐れながら遥冴からの頼み事を引き受ける。
「ったく、本気でめんどくさい…ここ最近で一番かもしれん……」
引き受けてしまった以上、グチグチ言っても仕方ないので、メモリ号に無線を入れ緒牙と会話する。
五分程度で手順を全て伝え、通信を切る。
「相変わらず、意味わからん仕組みだな。メモリ号ってのは」
ひと仕事終えたオウガはもう絶対に何もしないという強い強い意志を持って瞳を閉じる。
「……もしかして寝てます?」
オウガの様子を見たかおりが一言呟く。
「レディース&ジェントルメンー! よくぞいらっしゃいました、天由遥冴君!」
遥冴はミサイル発射ポイントにあった施設に入り通路を進んでいくと、広い空間に出る。
すると、四方からスポットライトを当てられ……今に至る。
「まっぶぅ……少し光弱めてくれない?」
遥冴は状況がどうとかより、光源の強さを弱めてくれとお願いする。
「おっと失礼……意識が散ると会話ができませんからね。おい! 三段階くらいライト弱めて」
ステージに立っていたMC風の男は、素直を遥冴のお願いを聞き入れ光源を弱める。
「これでよろしいかな?」
「おう、ありがとう。いやぁ目がチカチカして今やっとあんたの事を認識したよ」
遥冴は、男の方を見て話す。
MC風の男は紙をペラペラめくって何か準備をしている様子だった。
「……何してんだろう……」
その行動に遥冴と思わず本音が零れてしまう。
少しの待つと準備が出来たようでマイクを握る。
「ん゛っん……天由遥冴君改めて良くいらしてくださいました。ここは知っての通り、過去に重國様が利用していた研究所になります。そして、あなたが生まれた場地でもあります」
MC風の男は説明するように話す。
遥冴はただ黙ってその説明を聞く。
「…………」
遥冴は、長い話に飽きてきていた。
「なぁ……オウガ」
(今度はなんだ)
「いや、特に何も無いんだけどさ…少し見てもらいたいから、視界ジャックしてくれよ」
(自分から視界ジャックしろって変なやつだな)
遥冴の左をジャックしオウガは遥冴と同じ景色と音を聞く。
オウガは三十秒も持たずに遥冴に云う。
(なんだ、これ?)
「俺も聞きたい、施設の中に入ったらこれだよ」
(…………もうバレット出して撃ってしまえば?)
「オウガ…それはとてもいい案だ。力借りるぞ」
(あぁ、今回は流石の俺も同情してやるよ)
オウガとの会話を終えた遥冴の手にはハンドガンサイズの銃が現れる。
遥冴はMC風の男に照準を合わせるが、本人は話すのに夢中で気づいてない。
周りの仲間達もライトや音量等の仕事で手一杯なのか気づいてない。
遥冴はなんの躊躇いもなく引き金を引いた。
次の瞬間、MC風の男にシャンデリアが落ちて行きMC風の男はぺしゃんこに潰れてしまう。
「……これで良し。だけど、そりゃ臨戦態勢に入るよね」
技術の仕事をしていた、MC風の男の仲間達がぞろぞろと遥冴の前に立ちはだかる。
「久しぶりに見せてやるよ、パレットバレットの力ってやつを」
遥冴目掛けて、攻撃を仕掛けてくる。
人数がある程度揃っている為かちゃんと前衛後衛に別れて戦ってくる。
前衛はエネルギーブレードを使い斬りかかってくる。
「流石、エネルギーブレード。良い切れ味してるよ」
ブレードは金属すらも簡単に切ってしまう。
後衛はロボット兵達も使っていたエネルギー弾を放ってくる。
攻撃の手を緩めずに遥冴を攻撃する。
だが、遥冴はその攻撃を全て避け、反撃をしていく。
引き金を引き、発砲する。
パレットバレットから飛んでいくのは普通の弾丸ではなく薄いカミソリの刃の様な物が飛んでいく。
色とりどりの刃がスティーリィー 構成員を襲う。
数分もしない内に遥冴は制圧を完了する。
「ふぅ……疲れた。さてと、地下に続くルートは何処かなぁ」
過去にここに来たことがある遥冴は地下へ続くルートを探し出す。
「……あった、ここだ」
遥冴は自分で落としたシャンデリアを退かし、見るに堪えない姿の男の死体を丁寧に横にずらしハッチを開ける。
地下へ続いていく、階段が露になる。
「さて……えっと、ライトはこれでいっか」
遥冴は部屋からライトをひとつ取り外し、その灯りを頼りに階段を降っていく。
階段を下ると、水族館で見たような空間が広がっていた。
「ここってこんなのじゃ無かったよな」
遥冴が過去に訪れた時は、人体実験のあとが広がっていたが、今目の前に広がるのは小綺麗に整えられた会議室の様な空間だった。
「空間の広さはあの時と同じだが、置いてある物が全然違うな、こんなに綺麗な理由は何かあるんだろうな。な?」
遥冴は、地下空間を歩き周り大きなモニターの前に立ち誰かに声をかける。
「いつまでも隠れてないで、出てきてくれよ。こんなに広い空間に俺以外の生命反応があったら流石に気づくって」
遥冴は、パソコンをいじりながら姿を表さない人物に話しかける。
「いいのかぁ、情報を全部コピーして、削除して、最終的にはここを跡形もなく破壊するつもりなんだけど、止めなくていいのかー?」
遥冴は自分がやる事を全て話すが、まだ誰も出てこない。
「もう、ほら。いつまで経っても出てこないから、コピーして削除まで終わっちゃったよ?」
遥冴はパソコンを閉じ、モニターを見る。
「なぁ、どうやって脱出したんだ? 」
最初から誰がいるのか分かっていたのか遥冴は、特定の人物を呼ぶ。
モニターに映るのは地下空間の監視カメラ映像。
その映像にはモニターを眺める遥冴の他に、ひとり男の姿が確認できる。
「な? いつまで話さないつもりなんだ…………重國さんよぉ…」
天由重國、元を辿れば全ての事件の元凶になる男。
そして、二十年前に遥冴と死闘を繰り広げこの世を去ったはずの男。
「ピッタリ二十年越しに、復活しやがって………」
遥冴は、後ろを振り返り天由重國と二十年越しに対面する。
カラーコード:青色




