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彩時〜基本色編〜  作者: ビードロくん。


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#ED1A3D

街中に響き渡る機械音……辺りで起きる爆発音。

そして、ガウラ隊員達の戦声。


「……すげぇ、あの二人だけでほとんど対処してるじゃねぇかよ」


「だから、言ったでしょ。この程度なら修羅場にすらならないんだよ」


中衛でロボット兵と戦闘をしていた、玄吉は前衛で戦いを続ける、遥冴達の姿を見て驚愕を受ける。


話では聞いていたが、実際にそれを目撃するのは初めての事だった。

映像にも写真にもなっていない、戦闘の様子を。


「___ッ!」


「呆気にとられるのは良いんですが、気を緩める事はしないでください」


玄吉の鼻先を通っていく弾丸は玄吉を襲おうとしていたロボット兵の頭を捉えていた。


「あぁ、悪い。ちょっと気ぃ引き締めるは」


「そうしてくれ。今守れたのも、玄吉に当たらなかったのも奇跡だと思ってくれ」


久里田は次々とやってくるロボット兵を狙撃しながら云う。


「思うんだが、なんでこの距離で外す事を毎回視野に入れるんだ? 一応、だとしても気にし過ぎだと思うが」


玄吉は久里田の発言に疑問符を抱きつい尋ねる。

もちろん、ロボット兵との戦闘をしながらだが、周りにいるガウラの隊員達のお陰で小話を挟むくらいの余裕が出来ていた。


「保険張って言ってる訳では無いよ。僕の力はそこまで万能じゃないんだよ、むしろ出来ることは数少ないと考えるのが妥当だよ」


手を休めること無く、ロボット兵を撃ち抜いていく。

引き金を引けば百発百中、全ての玉がロボット兵の核を見事に捉える。場合によれば貫通を利用し複数機を一気に処理している。


「今の状況を見てもそうは思えないよ」


玄吉は久里田本人に聞こえないくらいの小さな声量で呟く。

久里田とは違い戦闘向きの力では無い玄吉は、ロボット兵相手であろうとも頭を使いながら戦う必要がある。

幻影を映し出し、気が逸れた所を久里田から渡された武器を使ってトドメを刺す。


「全く、羨ましいぜ。いちいちめんどくさい工程を挟む事をしなくていいのは」


玄吉は不満をこぼす。


「確かに…玄吉の力は、戦闘には不向きかもしれませんが…その分幅広い事が出来るのが特徴です。僕からすれば、こういう状況にならなければそっちの力の方が羨ましいですよ」


ロボット兵を処理しながら云う久里田。


「はぁ……もういいや」


玄吉は何を言っても久里田は羨ましいしか言わない事を悟り、大人しくロボット兵との戦闘に集中する。



「……多いな、単純に疲れてきたよ」


華蓮はロボット兵と戦いながら疲労を感じていた。


「ふぅ、さすがに歳? んな事考える暇ないか___ッ!」


ロボット兵との戦闘中に空から迫ってくる気配を感じ確認すると、ミサイルが華蓮目掛けて飛んでいた。

しかもそのミサイルはロボット兵を積んでいない普通のミサイルであった。


「あっぶなぃ………えへへ、こりゃ厄介なのが来たかもしれない」


ミサイルの爆発し煙が立ち込める。

華蓮は回避した後に煙を確認すると、中に人影が確認できた。


「流石だ。戦場の花…出来ればこの不意打ちで死んで欲しかったが、しかたない」


華蓮は自身の前に、立ちはだかるのが普通の人間では無いことを瞬時に理解した。

鍛え抜かれた肉体、常人とは思えない体格、そして頭に生える赤黒い角……


「性蝕者か、これでほぼ出揃ったって訳か」


「俺達は待ってたんだ首を長くしてな、スティーリィーと手を組むのは癪だったがな」


「犬猿の仲が手を取り合うとは、大層厄介な事をしてるみたいだな」


華蓮は体勢を立て直し、男と向き合う。


相性不利の相手と接敵し久しぶりに命の危機を感じる華蓮。

力比べなら勝てるはずがない、それにプラスして体格を見ると防御力も凄まじいものだと認識できる。


華蓮は次の一手を考えていた。


「今日が! 貴様らの…命日だ!」


男は大声を上げ、華蓮に突撃する。

速度は自動車程度でそこまで早くは無いが、見るだけで分かる、当たれば死の文字。


「お前ら! こいつは私が対応する、総員距離を取れ!」


華蓮は仲間に指示を出す。

自分や遥冴、四英以外の人間では対応出来ずに無駄死にする可能性を考え、愚策だが不利な相手と一対一の構図をとる。


「乱花………」


突撃してくる男の足元を凍らせる。


「なに! だが無駄!」


通常なら、破壊する事が出来ない程厚く凍らせたはずだが男は止まることをせずにそのまま突撃してくる。


華蓮は当たるスレスレで横に避けるが男は、それを読んでおり腕を横に振るう。


「___ッ! んだと!」


横に振り払い華蓮を攻撃したはずの腕は建物から伸びる氷の柱によって阻止され、そのまま腕を拘束されてしまう。


「結葉…檻氷工」


華蓮は拘束では大して時間を稼げない事を理解している為、瞬時に技を繰り出す。


空から氷で作られた柱が男を囲うように落下。

地面に突き刺さると柱と柱の間が繋がるように凍りついていき完全に覆い尽くす。


「このまま、大人しくしてくれれば話が早いんだけど……そうはいかないよね」


檻氷工は対処を囲うように氷の檻を創り出し、窒素が充満する様に細工が施されている。

そのため脱出から時間が掛かればかかる程、生命の危機に直面する。


数十秒後には檻にヒビが入りだす。

地面にもヒビが入り揺れ動く。


「おかしいな、宇宙空間でも耐えられる檻なんだけど…」


「グォォォォォオ゛!」


男の叫び声と同時に檻が破壊される。


「なかなか、良い技だ。もう少し出るのが遅れていたら、脱出どころか死んでたかもしれないな」


男は息を整えながら、体勢を整える。


華蓮は男の息が整う前に、畳み掛ける。

武器を構え踏み込み、一瞬の間に男との距離を詰める。

細剣を突き刺す様に連撃を繰り出す。

一秒間に三千八百回、それが華蓮が秒間で攻撃出来る回数の限界。

常人なら耐えるどころか跡形もなく消えてしまうが、男は攻撃を喰らいながら防御の体勢をとる。


華蓮はその行動に違和感を感じ、男から三十メートル離れた場所に氷の人形を創り出す。


十秒間攻撃を繰り出すと、男の腕が赤く染まり出した。

最初は出血によるものだと思っていたが、次第にエネルギーを溜めていると言う事に気がついた時には既に……


「死ねぇぇぇぇぇぇぇえ!」


エネルギーを放出しながら叫ぶ男。

男を中心に大規模のエネルギー衝撃波が走る。

衝撃波が触れた建物は消滅するかのように崩れ、道に植えられている草木は一瞬にして枯れてしまう。


エネルギー衝撃波を放出された直後、一番強い状態で当たってしまった華蓮は跡形も無くなってしまった。

それを見ていたガウラの隊員や玄吉は声を出せずに、驚愕に包まれていた。


「あっはははー! 飯塚華蓮は俺が消した! 俺の手柄だ! 俺が最強だー!」


男は大きな声で自分の手柄を自慢するように叫ぶ。


「嘘だろ、あの飯塚華蓮が……」


「馬鹿言え、あの人があいつに負けるはずないだろ」


絶望を感じた玄吉の発言を静止するように久里田が云う。


「何言ってんだよ、お前も見ただろ。あの衝撃波に当たった飯塚華蓮が消えたのを、他のガウラ隊員も声が出ないほど絶望してるじゃないか」


久里田は玄吉の頭叩きながら話す。


「僕もガウラも絶望してるから黙ってるんじゃない、興奮してるから声が出ないんだ」


久里田の言葉に疑問符を浮かべる玄吉。


「玄吉の言う通り俺達も見たさ、華蓮さんが消えるのを……いや、移動したのを」


玄吉は久里田が指をさす先を見るとそこには飯塚華蓮が立っていた。


「ふぅ……流石に危なかった。もう少し欲張って攻撃してたら、危うく致命傷を喰らうところだった」


消した………殺したはずの華蓮の声が聞こえ男は困惑する。


「なぜ生きてる、なぜそこにいる! 一体どうやったんだ、何をした! 脱出する隙は与えなかったはずだぞ」


次々と質問してくる男に、華蓮は一言だけ言い放つ。


「歴だよ。君が産まれる前からのね」


男はさらに疑問符を浮かべる。


「どういう事だ……俺の何を知っ___」


男の言葉を遮るように華蓮が云う。


「長田 正吉。年齢十八歳、大学生。ずっとバイトしていた、飲食店を辞めスティーリィーに所属。住所は___」


「いつだ! いつ調べた……」


華蓮に向かって再度突撃しながら男は問う。


「凍血……」


華蓮の呟きに男は苦しみ出す。


「う゛……何をした」


男と一定の距離を離しながら質問に答える。


「凍血、血が凍ると書いて凍血。文字通りあんたの身体に流れる血液を凍らせたんだ」


淡々と説明する華蓮は、再度離れた場所に氷の人形を創り出す。


「何故だ、報告書には人体に干渉することは出来ないと……記載があったはず……さっきの、回避もどうやったんだ」


血液が少しづつ凍りついていくのを感じながら、男は質問を続ける。


「性蝕者と戦ったのは、もう二十年も前の事だよ? 二十年間で成長しない人は居ないだろう?」


華蓮は丁寧に説明する。


「人体に干渉する事が……出来る様になってるとは、流石は四英…………戦場の花だな…完敗だよ」


男は弱々しく話す。


「正直、年齢も年齢だ。若くないなら勝てると思っていた……生物である以上老いには勝てんからな…………」


「若返るとか時間を戻すとか、そういう力がないと確かに老いには勝てないね」


華蓮は気づいていた、衝撃波のエネルギーは身体のダメージを吸収し発動することを。

つまり今、男の血液を凍らせた事によるダメージを着々と集め一気に放出しようとしているのを。


「だからよぉ、あんたのその老いた身体を…………崩してやるよ!」


男は身体を大の字に広げ再びエネルギー衝撃波を放つ。

その威力はさっきよりも強く広範囲であった。

だが、建物の破壊以外の被害は出なかった。


「これでどうだ、今度こそ確実に消し飛ばしたはず」


男は周囲を見渡す。

被害状況を確認し違和感を覚える。


「なんでだ? さっきよりも範囲を広げたんだぞ、なんで誰一人も死んでないんだ」


疑問符を浮かべる男。


「事前に、避難するように伝えていたからな」


「そうか、やる事がバレてたか。飯塚華蓮!」


無傷で立ちはだかる、華蓮に苛立ちを覚える。


「君の力は分かりやすくて助かる。一度見ればなんとなくは理解できる……エネルギーを放出する事によって身体の状況を回復させる事か が可能な事もね」


「よくわかった。そう、俺はダメージを衝撃波として放出する事によって攻撃するのと同時に、身体のダメージを消し飛ばす。どうだ? なかなかに強い能力だろ?」


さっきの苛立ちはどこへ行ったのか、男は今度は自慢するように華蓮に話す。


「あぁ、仲間にいたらとんでもなく心強いよ」


「そうだろ、そうだろ! 俺を倒したいなら、エネルギーを放出する前に倒すか、蓄える事が出来ない程のエネルギーを一度にぶつけるしかないんだよ!」


華蓮の言葉を聞き嬉しそうに話す男は、自身の弱点すらもついつい口に出してしまった。

だが、本人はそのミスに気づいていない。


「そうか、一度にエネルギーをぶつけるしかないか……いい事を知れた、感謝するよ」


華蓮の発言を聞き男はようやく自分のミスに気がつき、急いで臨戦をとるが時すでに遅し。


気づいた時には華蓮が懐まで詰めて来ていた。

男は死を覚悟した。


「クソが…………」


それが男の最後の言葉だった。


「結葉伝言……愚緑」


華蓮の技が男を襲う。

一瞬にして男もろとも辺りを氷漬けにする。

男の氷像の表面には歪な形の結晶が浮かび上がっていた。


「愚かで若い青年よ。生まれ変わったなら、今度はせめて命を捨てる行為はしないでほしいな」


華蓮は男の来世に希望を抱きながら、男の氷像を粉々に破壊した。


「流石に焦ったな。子供を殺すのは後味が悪いな」


戦闘を終えた華蓮は休む暇もなく、戦闘に戻る。

衝撃波の影響であたりのロボット兵は跡形もなく消滅してしまったが、次々とロボット兵は襲いかかってくる。


「はぁ……今日はよく寝そうだね。冷え性だから暖かくしないと」


身体の向きを変え、迫り来るロボット兵向き合う。



建物に亀裂が入り崩れ落ちる。


「あっ……やっちまった」


遥冴は桜色の刀身の刀を振り抜くとロボット兵ごと建物を壊してしまった。


「まぁ、後でちゃんと直せばいいか」


少しやりすぎてしまった事を反省しつつ戦闘を続けていると。


「ん? ___っぶね!」


見るからにヤバそうな赤色の衝撃波がギリギリまで迫っていた。


「華蓮の方からか、まぁ問題ないでしょ。それよりも……アレどうにかするか」


遥冴は次々と撃ち込まれてくるミサイルの方を見て……飛んでいく。


人間とは思えない跳躍力を魅せミサイルに飛び乗る。


「っと……うわ。こいつら動くのかよ」


ミサイルに飛び乗るとロボット兵達が起動し活動を開始する。

遥冴はそのまま、ミサイルの上で戦闘を始める。

足を滑らせたら落下しただではすまない、そんな状況下で、三十機のロボット兵と交戦。


「ミサイルの上で三十機は多いだろう……おっ

と…」


体勢を崩しかけながらも対応する。

時々、誤って斬撃を飛ばして建物を傷つけてしまう事もあるがミサイルにヒットし落とす事に成功したりする。

完全なるまぐれである。


「……はぁ、これ軌道変えられないんかな?」


ロボット兵を処理した遥冴はミサイルをミサイルにぶつけようと試行錯誤する。


「……これで……こうだ!」


遥冴はミサイルを足場にして空中に飛び上がる。

その際、刀を軽く当てる事によって進路を変更させることに成功する。


ミサイルがミサイルにぶつかり爆発するのを見届けた遥冴はその爆風で次のミサイルに飛び移る。


空でミサイルがどんどん爆発していく様子を見た、戦場に居た隊員達は一瞬何が起こってるのか分からずに居たが、空から聞こえる遥冴の大声によって状況を理解する。


「天由は何してんだ?」


「さぁ? わざわざあんな事しなくても落とせるはずですが……きっと楽しんでいるんでしょう」


ロボット兵の数が減り玄吉と久里田は少し手が空き暇していた。


「数が多いな……しょうがない。一気に破壊するか」


遥冴近くのビルの屋上に降り立ち、飛んでくる数多くのミサイルには向かって攻撃を開始する。


刀を振るうと斬撃と共に鋭い桜の花弁が飛んでいく。

斬撃はミサイルを捉え、桜の花弁はロボット兵達の核を突いていく。


左から順に破壊されているミサイルは見方を変えるなら花火の様に見えて少しだけ綺麗に感じる。


〈遥冴、今ミサイルの発射ポイントを特定した〉


磁馬からの無線が入る。


〈よくやった。どうするつもりだ?〉


〈それを、聞きたくて連絡したんだ。俺達が対応する方がいいのか、それとも対応したいか?〉


〈…………なら、俺が対応しよう。〉


〈わかった、今座標を送る〉


〈磁馬、玄德は今どこにいる〉


〈玄德さんは……パレット内で待機しているようです〉


〈なら、良いか。華蓮達に連絡よろしく頼むよ〉


〈了解〉


無線を終え、遥冴は座標を確認しミサイルの発射ポイントへ向かう。


遥冴が向かった先はかつて重國がメインで使用していた施設だった。


「いや、予感がするな。読んでるなら、向かってやろうじゃねぇか」


明らかな罠だと遥冴は分かっていたが、それでも自分が向かわなければいけないと考えた。


しばらく走っていると、例のポイントが見えてくる。

すると、どうぞと言わんばかりに扉が開いているのが確認できる。


「また、ここに来る事になるとは…………ん? いや…」


遥冴は施設に入る前にあるひとつの事を思い出した。

それは、この重國が使用していた施設はいつかの事件の収束後、ガウラに指示を出し跡形もなく取り壊しを行っていたはずだった。


もうひとつプラスしてその時の現場の指揮を取っていたのは紛れもない磁馬本人。

それなのになんの違和感も持たないでここが発射ポイントだと話していた事に疑問を抱く、


〈磁馬、発射ポイントについてぞ〉


〈わかった、直ちに中の様子を調べる。もう少しだけ待っててくれ〉


〈わかった〉


遥冴は感じた違和感を磁馬に直接聞くことはしなかった。

だが、代わりに今磁馬の近くに居る人間に話を聞く事にした。


「オウガ、今いいか? 少し聞きたいことがあるんだ」


(磁馬の事だろ? わかってる)


「あぁ、なにか変だとは思わないか?」


(変だ。磁馬にスティーリィーの甦らせる能力の件を聞いてみたんだが、名前を覚えていないみたいなんだ。能力の詳細と顔だけは覚えているらしい)


磁馬の力は、一度見た物は絶対に忘れないという能力な為、顔を覚えていて名前を覚えてない。

なんて事は起こり得るはずが無い。

遥冴は磁馬がガウラに入隊する時にスティーリィーについて話を聞いた。

その時に、必ず自己紹介と能力の開示を行い忠誠を誓う決まりがある事を話していた。


つまり、その時に能力の事や名前を聞いているはず。しかも磁馬はスティーリィーの古株だった為余計に、名前だけを知らないなんて事はないだろう。


「そうか、何があったんだろうな」


(あ? てめぇ何言ってんだ。どうせに何か気づいてるんだろ?)


遥冴の言葉に突っかかってくるオウガ。


「知らないといえば嘘になるが知ってると言うのも嘘になるな」


(予想はあるんだな)


「あぁ、ところでオウガ。ミサイルの発射ポイントがどこが聞いたか?」


(いや、聞いてないが。お前は今そのポイントにいるんだろう?)


おそらくオウガは近くで無線している磁馬の声が聞こえていたのだろう。


「聞いて驚くなよ?」


(もったいぶらずに早く言え)


焦らしてくる遥冴にオウガは若干の苛立ちを覚えていた。


「ミサイルの発射ポイントはな……俺達が生まれた場所だ」


(は?)


オウガはらしくない声をあげる。


(俺達が生まれた場所? 重國の研究所か?)


「そう、目の前にあるぞ。今磁馬が内部を調べてるから今なら、少しだけ視界をジャックしても良いぞ」


遥冴の言葉を聞きオウガは、遥冴の左目をジャックする。


(こいつはたまげた……だが、ここは既に更地にしたはずだろ?)


「あぁそうだ。ちなみにその時の現場指揮をとっていたのか誰か分かるか?」


(施設の内部に詳しいガウラ隊員といえば……おいおい、磁馬じゃねぇか)


「そう、なんだよね。しかもなんにも気にしてる様子なかった」


遥冴から磁馬との無線内容を軽く聞くオウガ。


(……今、聞いてみるか?)


「あっ、そっか。今ガウラに居るのか、なら頼んでいいか?」


(わかった。少し待っとけ)


遥冴の左目は元に戻り視界が統一する。



「さてと……おい。磁馬、聞きたいことが出来た」


オウガは早速、磁馬に近づきしつもんする。


「なんだ、オウガ。今、施設内部の構造を調べるので忙しいんだ」


「その施設についてなんだがな、お前この建物に見覚えはないのか?」


オウガは磁馬からパソコンを奪い取り、勝手に画面を弄りだす。


「おい、ちょっと! 何してんだよ」


「…………」


「おい! 聞いてんのか!」


「遥冴の指示だ。黙って見とけ」


オウガは一言で磁馬の態度を改めさせる。

実際、遥冴からの頼み事なので嘘は付いていないがやり方はもう少しあったのかもしれない。


「ここが、ガウラの見つけたミサイルの発射ポイントだ」


オウガは一枚の画像をパソコンに映し出し磁馬に見せる。


「ここからミサイルが……この部分から発射されるのか」


磁馬は画像を見て解析しだす。


「チッ、はぁ……そんな事は今はいいんだよ。この建物に見覚えがあるのか、ないのか、早く教えろ」


オウガは急かすように磁馬に云う。


「なんだよ、そんなに起こることか? ……見たことねぇよ。こんな特徴的な建物を一度見たら忘れるはずないだろ。それに俺の能力知ってるだろ?」


「本当に……無いんだな? 隠してる訳じゃないんだな?」


オウガはしつこく磁馬に問う。


「本当だよ。それに隠す意味ないだろ、こんな事」


「そうか、わかった。突然悪かったな」


オウガはパソコンの画面を元に戻し磁馬に返す。

すぐに元いた場所に戻ってしまった為、なにやら後ろから聞こえてくる磁馬の話し声は耳に入らなかった。


「……知らないか…一体何が起こってるんだ」


遥冴に伝える前に、情報を整理した。


「…かおり。ここに見覚えはあるか?」


オウガはパソコンを取り出し、磁馬に見せた物と同じ画像をかおりとエリーに見せる。


「はい、確か遥冴君が生まれた場所ですよね」


「へぇー、そうなんだ。ちなみに私はこの画像に写ってる、川で溺れてるのをマスターに助けられたの」


オウガの問にふたりはそれぞれの回答をする。


「そうか、ありがとう。いい事を聞けた」


「そうですか? 良かったです」


正面を向き、磁馬を見つめる。


「……まぁ、良い。遥冴に伝えるか」


オウガは瞳を閉じて遥冴と繋がる。



遥冴は発射ポイントの前木陰に座り待機していた。


「まだかな? オウガも磁馬も遅いな」


一人寂しく大人しく、待機している。


(遥冴、磁馬に聞いてみたんだが…全く知らないと言ってたぞ)


急にオウガの声が聞こえ、一瞬体をビクッとさせる。


「全く知らないか、他になにか言ってたか?」


(自身の能力の話をされた、だから忘れるはずが無いと断言してるし、言い切ってるぞ)


「ますます分からん……どういう事だ」


遥冴とオウガは共に頭を悩ませる。

今までこんな事は一度もなかったが二人の頭にひとつの可能性が浮かび上がる。


「……今考えたくない事が浮かんだんだが?」


(奇遇だな、俺もだ)


二人の頭に浮かんだのはひとつスティーリィーだ。

元々スティーリィーに属していた事が今ある事によって影響してるのだろう。


(重國の復活……がアイツに何らかの影響をもたらしている)


「あぁ、納得だ。もし仮に過去、重國によって何か施されていたら……奴の復活と同時にそれが再び目覚める事は大いにあるかもな」


重國が死んでいたから、影響が出なかった。

重國が蘇ったから、影響が出始めた。


二人の中でこの流れが一番、納得出来る見解だった。


「それと、もうひとつ可能性としてあるのが…時間移動だ」


(時間? あぁお前の子供らがやったアレか)


「そう。時間に干渉したことで周りに良くない影響を及ぼしている……という可能性もある」


(まぁ、どちらにせよ。近いうちに重國と接敵する事にはなりそうだな)


オウガの発言に肩を落とす遥冴。


「出来れば考えたくないけど、それにアレ見てくれたら分かると思うけど……」


遥冴の左目を再度オウガはジャックする。


(見るからに誘ってるな、見て見えの罠だな。だがそれと同時に、絶対に何か分かる事があるだろうな)


「だよねぇ、俺もそう思う。んで、磁馬はいつまで調べてんだよ……もう行くか」


(そうしろ、俺の方から話は通しておく)


「助かる」


遥冴の中からオウガの反応が消える。


「さて、もうひと仕事頑張りま____」


気合いを入れ直し、施設に向かい始めようとした途端、タイミン良くミサイルが十二発程度、発射された。


「………三百六十か…アイツらも大変だな。そんな事考えてる暇じゃないか」


遥冴は飛んでいくミサイルが視界から無くなるまで眺める。


〈遥冴!〉


急に大声で無線が入る。


〈うるさいなぁ……玄德? どうした、そんなに慌てて〉


玄德の態度に戸惑っていると、玄德の口から予想外の事を言われた。


〈妃乃達が戻ってきたんだよ! 今さっき、部屋の方から物音が聞こえたからデュナ達を向かわせたら、妃乃達を連れて戻ってきやがったんだ〉


〈おぉ……思ったより早かったから、驚いちゃったよ。でもそうか、帰ってきたか…一安心だな〉


〈何を呑気にしてんだよ、今の状況を知られるかもしれないんだぞ〉


玄德は遥冴に訴えかけるように云う。


〈いつかはバレる事だろ。それに……もう俺がいなくても何とか出来る奴らだろ? お前らもいるし〉


遥冴は意味深な発言を残し無線を切る。

真剣な顔で施設の中へ足を進め出した___。


カラーコード:赤色

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