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彩時〜基本色編〜  作者: ビードロくん。


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#ec6800

朝の開店準備をしていると、テレビから気になるニュースが聞こえてくる。


「……夜桜学園で人だかりですか、最近こう言うのが増えてきてますね」


ニュースを聴きながら軽い仕込みや店内の掃除をしているかおり。

エリーや失市も手伝ってくれている。


「あっ! 見てみてあれ、マスターじゃない?」


エリーがテレビを指さしながら云う。

テレビに映るのは、校門前の人集りの様子。その中で先に進めず足を止めている遥冴の姿が確認出来た。


「あっ、本当だ。でもそうなりますよね、遥冴君の他に困ってる生徒さん達も伺えますし」


準備を終え、いざ開店しようとしたタイミングでまたもや気になるニュースが聞こえてきた。


「学生が校庭に避難? 大丈夫でしょうか…」


かおりはテレビの前に移動する。


「かおり、今日はお店お休みにしようよ。なんか寒気がするし…」


エリーが腕をさすりながらかおりに云う。


「寒気ですか……そうですね、今日はお休みにしましょう。何があっても良いように」


女神のエリーが寒気を感じるという事は必ず何かが起きる事を予知している。

エリーがいつも元気で幸せそうなのはそういった理由がある。


「それにしても、色々立て続けに起こりすぎて目が回ってしまいます」


「大丈夫?」


「大丈夫だよ、エリー」


かおりは薄々気づいていた、これが偶然ではなくどこかで、誰かしらが予め計画し、行われていると言う事を。


フェスティバルを皮切りに次々と起こる事件。

地下室やロボット兵、天界の件全てが意図的に行われていると考えるのが妥当だ。


「遥冴君達も最近疲れが溜まってきているようですし……心配ですね」


「うん、そうだね。ところでさ、妃乃ちゃん達はどこにいるの? ずっと見てないような気がして」


妃乃達が過去へタイムスリップしたのは、エリーが訪問してくる前夜の出来事。

そこから遥冴とかおりの家にずっといるのに、妃乃達を見てない事を気にしていた様だ。


「あー……それはですね………えっとぉ…」


かおりはなんて答えればいいか頭を悩ませていた。

その理由はエリーが女神だと言うことが関係している。時間移動は天界では大罪とされている、過去に時間移動をしたことにより、現在にも過去にも多大なる影響を及ぼしてしまった事があり、以降誰であっても時間を移動することは禁止された。


「……はぁ、妃乃達は時間を飛んで過去に行ってしまわれました」


「ん? ……過去に飛んだ…えー!」


エリーはまるでアニメかのように驚く。


かおりは怒られる事を覚悟していた。


「そっかぁ…タイムスリップってやつをしちゃったのか……まぁいいっか。マスターの子供なんだからそれくらい普通か」


エリーは怒るどころかどこか嬉しそうに呟く。


「怒らないんですか?」


「ん? 怒らないよ。だってかおりは悪くないしー、それにさっきも言ったけどマスターの子供なんだから大丈夫でしょ」


「そうですか、たしかにそうですね。遥冴君の子供ですからね、全くの問題を起こさない事は多分無理でしょうからね」


エリーとかおりが楽しそうに話していると、急に失市が姿を現し、話し出した。


「おかえりなさい、失市。どうでした?」


かおりは失市に学園まで様子を見てくるようお願いをしていた。


「大変」


「大変? 何があったんですか?」


失市は自身の目で見てきた事を伝えた。


「校舎に爆弾が……やっぱり何かおかしいですね。デュナ、少し調べてくれない?」


「はい、わかりました。何か分かり次第報告します。また、何かあったら連絡をして頂ければすぐに対応しますので」


デュナはそう言い残し裏に戻っていった。


「詳しくは分からない。でも必死に爆弾、どうにかしてた」


「そうですか、ありがとうね失市。もしかしたら私たちも何か手伝う事があるかもしれませんからじっとしておきましょう」


「うん、わかった」


かおり達はパレットの店内で待機し続けた。

しばらく経つと、街の警報が鳴り響いた。


「警報! 一体何が、デュナ!」


「ただいま、状況を調べます…………ヒットしました」


デュナは調べて分かったことをかおりに伝えた。


「ミサイル!? なんで?」


あまりの衝撃に困惑していると無線に連絡が入る。


〈かおりさん、聞こえますか? かおりさん〉


〈磁馬さん、どうしましたか?〉


〈今、かおりさん達が居る街に___〉


磁馬がかおりに伝えた内容は、先にデュナが報告していた事だった。

というか、デュナがガウラのデータベースにアクセスしてかおりに伝えているので、全く同じ内容を二回報告されることになった。


〈わかりました、そしたらこちらの方から遥冴君に話を聞いてみますね〉


〈お願いします、もし避難するように指示を受けたらガウラの本拠地まで来て下さると、エリーさんの件も含め異常事態に対応できると思いますので〉


〈ありがとうございます。今後の予定が分かり次第、再度連絡しますので失礼します〉


かおりは磁馬との無線を終えるとすぐに遥冴と連絡を取ろうとするが、繋がらなかった。


「繋がりません。誰かと通話でもしてるのでしょうか」


かおりが首を傾げていると、カウンター席から話しかけられる。


「通話なんてしてねぇよ。学園全体に特殊な結界が張られてるんだ」


「___! オウガさん。どういう事ですか?」


かおりに声をかけていたのはオウガだった。


「どういう事も何も、そのままなんだがな。いくらガウラの技術が優れているとは言え、そんな事を気にしないパーソナビリティの力には抗う事が出来ない……つまりはそういう事だ」


「ってことはやっぱり全て仕組まれていたんですね」


オウガの発言により強く不安を感じるかおり。


「そういう事だな。まぁ、あいつが居るんだから大惨事になる事は無いだろうがな」


「そうですね」


かおりとオウガが話していると、エリーが突然大きな声を出した。


「あっ! 繋がった」


そう大きな声で言うとエリーは無線をかおりに手渡しした。


数ラリー遥冴と会話した、かおりはみんなに指示を出す。


「デュナ、失市。ふたりはパレットに残ってここを守ってもらっていい?」


「うん、みんなの帰る場所。守る」


「かしこまりました」


かおりは身体の向きを変えてオウガの方を向く。


「オウガさん、あなたは私とエリーと一緒にガウラまで避難してくれませんか……と言うか、なんでここに居るんですか?」


「なんだ? 俺はここに居ちゃいけねぇって言うのか?」


かおりの発言にオウガは語気を強くして言い返す。


「いえ、そういう訳では無いのですが…先程の遥冴君もの無線で、後でオウガさんをこちらに向かわせると指示を受けたので……ここに居るのはなんでかなと思いまして」


遥冴との無線で感じた疑問符をオウガに伝える。


「は? 何言って…………そう言えば、あいつの中に俺の半身置きっぱなしだった。遥冴の野郎もしかしたらそれの事言ってんかも」


オウガは思い出した様子で訳を話す。


「なるほど、そういう事なら納得です。それで着いてきてくれますか?」


「着いて行くも何もあいつからの指示なら俺は逆らえねぇよ」


かおりは皆にそれぞれの役割を伝えて解散する。


「少し飛ばしますから、オウガさん、エリー。ちゃんと掴まっててくださいね」


車に乗り込んだ三人はかおりの運転でガウラ本拠地に向かう。

かおりはアクセルを思いっきり踏み、アクセル全開で車を走らせる。緊急時につき法律を破る事を許可されているのを最大限活用し、街の中を走り抜ける。


「どこが、少しだ。ガン飛ばしじゃねぇかよ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、速ーい!」


オウガはかおりの発言にツッコミを入れ、エリーは非日常感を非常に楽しんでいた。



かおり達が居なくなったパレット内では、沈黙が流れていた。

元々口数が少ないデュナと失市は二人きりになっても話すことはしなかった。

だが決して、仲が悪いとかお互いが嫌いとかではなく、長く時を共にした故にやってくる静寂だった。


「…………もうすぐで着弾するね」


「そうですね。マスター達も既に準備が完了しているようですし問題ないですね」


失市とデュナはカメラの映像を見ながら外と遥冴達の状況を確認する。


「もし、ここが狙われたらどうしよう」


「可能性は十分にありますね。ここはマスターの自宅でありながら、地下にはまだ世に出てないマスターの秘密がありますからね」


「……ひとつ、思う事がある」


失市はデュナの目を見て話す。


「デュナの力で……運べないの?」


「……………………それは、盲点でしたね。流石でございます。失市さん」


失市の着眼点はデュナも気づいてなかった。

デュナはある状況下のみ特別な力を使う事ができる。それは、実態化している時が条件。


デュナの力はある物に網を召喚する力なのだか、その真髄は召喚した網の力にあった。


召喚した網はどんなものでも捉えることができるのだ、それは物であっても、炎であっても、時間や感情であってもだ。

しかもその網は自由自在に大きさを変化させる事ができる。


失市の提案はその力を使ってパレットを捉えてしまえば、仮に攻められたとしても絶対に死守出来るという作戦だった。


「どうかな?」


「ありですね。通常なら目立ってしまうのでその様な事は出来ませんが、今は街に誰も居ませんし。玄德さんが報道に関する制限を掛けたので誰の目にも着きません……失市さんの作戦は非常に有効であり実行する事が可能です」


「どうする? やってみる?」


失市の問にデュナは数秒考える。

数秒の沈黙の末デュナは答えを導き出す。


「とりあえず、やってみましょうか」


「わかった、なら外に出よう」


デュナと失市はパレットの外へ出る。


「それではいきます」


『絶確』


デュナは自身の武器を取り出し、一言唱える。


すると武器の先端に網が出現する。


「せーの!」


失市の掛け声と共にデュナはパレットに網を振るう。

すると網はとても大きく広がりパレットを包み込み回収する。


「できたね」


「はい、だいぶスッキリしましたね。やはりパレットの敷地はとても広いようですね」


「そうだね。思ってたよりも大きかった」


デュナは武器を肩に立てかけながら失市と話していると、失市の自衛能力が発動した。


「ありがとうございます。助かりました」


「大丈夫。でも、少し遅かったね」


「えぇ、見事に囲まれてしまいました」


失市とデュナはロボット兵に囲まれてしまったが、焦る事はせず冷静でいる。


「数は、見渡す限り六十前後でしょうか」


「それなら、大丈夫」


失市とデュナは臨戦態勢に入るのと同時にロボット兵が攻撃を仕掛ける。

六十ものロボット兵が一斉にふたり目掛けて、走り出す。


「来た、行くよ」


「合わせます」


ふたりは息を合わせて応戦しようとするが、次の瞬間ロボット兵達が粉々に粉砕した。


「……なに?」


「これは、玄德さんの……」


ふたりが困惑していると一人の男が話しかける。


「いらない手助けだったか」


「やはり玄德さんでしたか」


声の正体は和筆玄德だった。


「逃げ遅れた一般人かと思ったんだか、デュナ達なら要らなかったか」


「いえ、助かりました。所で仕事はどうしたのですか?」


「早めに切り上げたよ。遥冴が久しぶりに暴れるらしいから、それを生で見ようとね」


「なるほど、報道されないなら快く動けますからね」


デュナと玄德が会話しているのを失市は少し離れた所から眺めていた。

失市と玄德は消して仲が悪い訳では無いが、失市が玄德に対して少し苦手意識を持っているので会話は全てデュナに任せている。


「そんで……これは何を?」


後から来た玄德は、パレットがあった跡地を見てデュナに尋ねる。


「マスターからパレットを守るように指示を受けたので持ち運べまば済むのでは、と失市さんが」


「まさかの失市の案だった。はぁ……とりあえず俺も一緒に守るから、元に戻して」


「ありがとうございます。わかりました。」


デュナは玄德の指示に従いパレットを元に戻す。


「デュナってたまに頭良いのかどうなのか分からなくなるんだよな」


「私は人工知能ですよ? 頭が良い悪いの域ではないんですよ」


「なら、たまに突拍子も無いのは開発者の影響か?」


「いえ、マスターの影響ではなく。こちらの方が愛嬌があるかなと思いまして」


「……狙ってやってたのか」


「はい、ですが今回のは真面目に検討した作戦でした」


「やっぱり、どこかズレてるんだよな」


デュナに対して疑問符を浮かべる玄德はふたりと共にパレットを守るためにその場に残った。

三人は元に戻したパレットの中に入ってゆっくりお茶を楽しんだのは、内緒のはなし。



「着きましたよ。さぁふたりとも急ぎましょう」


ガウラ本拠地に到着した。かおり達は急ぎ足で中へ入る。


「かおりさん。お疲れ様です、磁馬さんなら司令室にいますよ」


「ありがとうございます」


かおりは一般隊員に案内はれ司令室にやってくる。


「磁馬さん、今の状況は?」


「かおりさん、エリーさん、オウガ。今、現地は遥冴と華蓮を前線に戦闘を始めた所です」


磁馬は状況をかおりに伝える。


「敵の数は?」


「おおよそ四百五十機___ッ!」


会話を遮るように、再度街の警報が鳴り響く。


「一体何があった!」


警報と磁馬の声で司令室にいる隊員たちは急いで情報を収集する。


「追撃です! 新たに、戦闘ポイント目掛けてミサイルが八発、発射されました」


「何! 追加で二百四十機の援軍……直ちに戦場にいる部隊に報告を! 手が空いている者はミサイルの発射ポイントの特定を急げ!」


「「はい!!」」


司令室にとてつもない緊張が張り詰める。


「かおり……マスター大丈夫だよね?」


「心配しなくても、大丈夫ですよ。だって遥冴君は最強なんですから、エリーも知ってるでしょ? こんな危機今まで何度もあったじゃないですか。だから大丈夫ですよ」


かおりは不安を感じているエリーを慰める様に言い聞かせる。


「磁馬、相手はスティーリィらしいが何か分からないのか?」


オウガは磁馬に向かって質問した。


「分かるはずがないだろ、俺が居たのは二十年も前だぞ?」


磁馬は元々はスティーリィに属して居た。

ある事件をきっかけに遥冴に気に入られ、磁馬はガウラに入隊する事になった。


「そうか。ついでにもうひとつ聞きたいんだが、スティーリィの中に死者を甦らせる力を持つ者はいるか?」


オウガの問に動きを止める磁馬。


「その様子、知ってる様だな。名をなんという」


「名前は知らんが、発動条件なら知っている」


「教えろ」


オウガは脅すように言い放つ。


「発動条件は簡単だ、ひとつ魂を呼び寄せて甦らせるならひとつ魂を差し出せばいい。一人につきひとつの魂を、年齢や性別は関係ない」


磁馬は淡々と話す。


「なるほどな」


「あぁ……そうか…重國の復活はそいつのせいか」


「みたいだな、顔は見たことあるか?」


「あぁ、顔を見れば一発で分かる」


オウガは磁馬の言葉を聞くと大人しく司令室の椅子に座った。

それを見たかおりもエリーを連れて椅子に腰掛けた。



「なんで、こんなにチルしてるんだろうな」


「仕方ないじゃないですか、これも大切な仕事なんですから」


ガウラからの映像を部屋から確認する、鶴見と森河。


「俺も戦いたいよ、ずるいじゃん。なんで総理大臣の玄德が戦地にいて、俺が部屋に居るんだよ」


鶴見は文句を言いながら、仕事をする。


「文句を言っても仕方ないでしょう。今鶴見さんが行っているのはとても重要な事なんですから。ほら私も手伝いますから早く終わらせますよ」


現在鶴見がやっているのは、CountryFestivalに参加していた日本以外の国に対しての報告書の制作だった。

責められている訳ではないが、日本で開催した際に襲撃されてしまったので筋を通す為に必要な工程だった。


「なんで、俺なんだよ。俺こういうの苦手なんだよ、それを知ってなおなんで俺に任せるんだよ。遥冴の野郎……こう言うのはガウラの隊員に任せるのがいいだろうよ。こう言うの得意な奴ひとりやふたりいるだろ、だいたい___」


鶴見の口からは留まることを知らない愚痴が次々と溢れ出してくる。


「口を動かす暇があったら、手を動かしてください。」


森河は鶴見を注意しながら黙々と作業を進める。


「だってよ、森河もそう思うだろ? 苦手な奴より得意な奴がやるほうが、完成度が全然違うだろうよ」


森河は手を止め鶴見の方を見ながら云う。


「仕方ないでしょう? 玄德さんは総理大臣で忙しい。華蓮さんは学園とモデルの仕事、ガウラの管理で忙しい。

久里田さんは学園の管理とガウラの教官、家庭で忙しい……その中で鶴見さんは金融機関の頭である以上、海外の偉い人と関わる事が多くそして気に入られている。

四英の中で一番、外交に優れているんですから」


森河は鶴見の感情を逆撫でしない様に分かりやすく、且つ鶴見を立てるように伝える。


すると鶴見は満更でもなさそうな表情をする。


「そうか? そこまで言うなら頑張るけど…でも___」


まだなにか言いたげな鶴見を遮り森河が話す。


「得意不得意の事は確かに鶴見さんの言う通りですが、多少不格好でも鶴見さんが作ることに意味があるんですよ。

それに、鶴見さんが苦手な作業だと言うことを理解しているから、得意なわたしが傍に居るように指示を受けたんですから」


森河は、言いたいことを全て言い切るとパソコンと向き合い報告書の制作を進める。


「そっかぁ……遥冴の配役は意外と理にかなってたんだなぁ…でも、遥冴が作るのが良くないか? こう言う作業も苦手な訳じゃないし、一番時間あるし」


鶴見も作業を進めるが、やはり愚痴をこぼす。


「それに関しては、本当に仕方がないでしょう?表立って活動する事が出来ないんですから、他国の方々に見せる報告書を制作する事は出来ないでしょう」


森河の言葉を最後に部屋にはキーボードを打ち込む音と映像の音だけが響いた。

と思ったが、一分も満たないうちに鶴見が声を出した。


「小腹が空いたな」


「集中してください」


「……アイスでも食べようかな」


鶴見は我慢できずに席を立ち冷凍庫へ足を運んだ。


「森河も食べるか? 何がいい? チョコミントでいいよな」


鶴見は優しさなのか分からないが、ほぼ自問自答で声を発する。


「その聞き方なら、私に聞く必要はないでしょ」


「要らないの?」


「……入ります」


森河の返事に満悦な表情を浮かべながら、チョコミントのカップアイスを二つ取り出しひとつを森河に渡す。


「ありがとうございます」


森河は器用に、アイスを開けながら作業を進める。


「おぉ……森河、少し休憩しよう。あんまり急いでもいい事ないぞ?」


鶴見は森河の肩に手を置いて、作業の手を止めさせる。


「集中することは良い事だが、休憩も大切だ。君は俺や遥冴、四英とは違うんだからしっかりと休憩を取るように」


鶴見の言葉を聞き森河は素直に返事をする。


「そうですね。私とした事が無意識に焦っていたようです………作業しながら遥冴くん達の話をしてしまったからでしょうか」


苦笑いしながら森河は言う。


「分かる。分かるよ、本当にあいつらって名前を口に出すだけで人をやる気にさせると言うか…なんというか、そういう部分を刺激してくるんだよな。俺も、何度もそれで悩まされたよ」


「そうなんですか?」


意外だったのか森河は、ついつい鶴見の方を見て尋ねてしまう。


「そうだよ。もう三十年一緒に居るんだから、 そういう経験も何度もしてる」


鶴見は影響に映る遥冴達の姿を見ながら云う。


「……よくそんなに近くにいて三十年も一緒に居られますね。私なら親友だとしても、もう少し距離をとりたいです」


頭を悩ませる鶴見はコーヒーを飲み話す。


「何年も一緒に居る。家族よりも長い時間、家族とほぼ変わらない距離で三十年……確かに良くこんなにも長い間一緒にいられたもんだな」


まるで他人事かのように話す。


「でも、だからこそだろうな。この世に居る誰よりも知ってる相手で、この世にいる誰よりも自分を知ってくれている相手だ。

嫌いな所も苦手な所も、次第に気にいってくる。まぁ……好きになる事はないんだけどな」


鶴見は笑いながら話す。


「私にはよく分かりません。」


「いや、わかるはずだよ」


鶴見は森河の言葉を真っ向から否定する。


「分からないなら、なんで遥冴に着いていくんだ? 我儘で無鉄砲で、無責任で自由で、話は聞かないし気づいたら厄介事に巻き込まれてるし、かと思えば動けませんって言い出したり。

最悪な野郎だろ。でもその中でなんで着いて行くんだ?」


鶴見の質問に森河は気づいたら答えていた。


「確かに、遥冴くんはめちゃくちゃです。でもそのめちゃくちゃがいつの間にか日課になってて、命を救われた経験も相まって、いつの間にか楽しくなっていました……それがきっと鶴見さんの言う気に入るという事なんですよね」


森河の口から出る答えを聞き満足した鶴見は気分が良くなり、


「よし! 森河、休憩おしまい。早くこの仕事終わらせてお昼ご飯食べに行こう、奢ってやるから何が食べたいか考えておいてくれよ」


鶴見は森河の返事を聞かずに進める。


「はぁ………相変わらず自由ですねぇ」


鶴見の言動に呆れ果てながら、つい本音を零してしまうが森河の顔は微笑んでいた。


森河は気づいてないが、鶴見はチラッと森河の方を見て満足そうに微笑んでいた。



「チルいな」


「チルいですね」


「チル」


パレットのカウンター席に座りながら、玄德、デュナ、失市は飲み物を飲みながらゆっくりしていた。


すると、突然遥冴の自宅から大きな物音が聞こえた。


「ん? 今、なにか聞こえたか?」


「はい、バッチリと物音が聞こえましたね。ね、失市さん」


「うん、重い音が聞こえた」


三人は物音が気になったが、全員で見に行ってしまうと、襲撃された際にパレットを守る行動が遅れてしまう……というのを考慮してじゃんけんで負けたひとりが残る事になった。


「「「最初はグー、じゃんけん…ポンッ」」」


玄德はパー、デュナはチョキ、失市もチョキ。

じゃんけんの勝敗は見事に女性陣が勝ち、玄德がパレットに残る事に決まった。


「負けた。それじゃ、ちょっと見てきてくれ」


「わかりました。もしなにかあったら連絡の方お願いします」


「わかった、逆に何かあったら連絡してくれよ」


「はい、わかりました。では失市さん行きましょう」


デュナと失市はふたりで遥冴の自宅に向かう。


「ただいま」


「はい、ただいま。さて、物音の正体は一体___」


家に入ると、デュナは物音の正体を探るべく家の中をスキャンする。

すると、ひとつの部屋に複数の生命反応が確認された。

その数は、九個


「どうしたの?」


「失市さん、緒牙くんの部屋から九つの生命反応を確認しました」


「えっ? それって」


「とりあえず、向かいましょう」


ふたりが部屋の前まで来ると、話し声が聞こえてくる。


「帰ってこれた……?」


「大丈夫? 本当に大丈夫?」


「緒牙、大丈夫なんだよね」


「………あぁもちろんだ。俺達はちゃんと家に帰ってこれたんだよ」


「「やったぁ!」」


歓喜の声が大きく部屋の外に響く。

デュナと失市は部屋を開ける。


「みんな何してたの?」


「長旅お疲れ様でした、どうでしたか? 初めて時間を移動した感想は?」


デュナと失市は、妃乃達に質問する。


妃乃達は突然ドアが開いて、ふたりが入って来た事に驚いてしまうが、すぐにデュナ達に身体の向きを合わせて、全員が声を揃えて言う。


「「あっ! デュナさん、失市さん。ただいま戻りました」」


息を揃えて発される言葉にふたりさ圧倒されてしまう。


カラーコード:黄赤色

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