#00a48d
青空に雲が点々と出てきた。
その雲はいつも以上に黒く見ただけで不穏な空気を感じてしまう。
まるで、これから起こることを密かに暗示している様に見えなくもない。
「大丈夫なのかな?」 「華蓮さん達、心配だね」
生徒達は校庭で座りながら、今起こっている事については話している。
「華蓮さん達が動くと言うことは相当な事が起こったってことですよね」
「そうなりますね。大丈夫……だとは思いますが、一体何が起こったんでしょう」
教師達はどこかソワソワしながら教師同士で話す。
華蓮が学園長を務めるここの学園で働く人達は全てガウラの隊員な為、世界一安全な学園として有名だか、ガウラの事は世間から消えてる事により世間からは良くない人達と繋がってるんじゃないかと噂されていたり、いなかったりする。
学園の校門にはまだ人集りが出来ているが、新しく学園全体を囲む様に記者や報道陣、一般人やインフルエンサーが数多く集まってきている。
そんな事は気にしている暇がない遥冴達は、校内に設置されている爆弾を見つけては冷却し無効化する事を繰り返している。
ガウラが到着するまで残り十分。
校内に設置されている爆弾の数残り三百二十個。
「終わるか! こんなの!」
『乱花』
いくら対処しても減ってる感覚がない事により華蓮も思わずイライラしていた。
華蓮が呟くと、華蓮の手に細剣が握られ服装が変化する。
スーツから黒を基調としたドレスを身にまとう。
「結葉伝言……雪化粧」
言葉と共に細剣を振るう華蓮、すると自身の目の前に広がる廊下を一気に凍らせる。
華蓮は、一瞬にしてひとフロアに設置されている爆弾を全て凍らせる。
「やり過ぎなきゃ良いでしょ」
華蓮が校舎全体を凍らせなかった理由は、至ってシンプル…目立ってしまうからだ。
華蓮は自身の力を駆使し爆弾の解除していく。
「はぁ…凍らせるのは楽なのに見つけるのに苦労する………」
楽になると思われたが意外と苦戦している。
強いて言うならば、爆発する事が無いことが救い手間ある。
ひとつの教室で爆弾が十二個、しかも設置されているどれもが、中規模の爆発を起こす代物で教室を破壊するにはひとつで十分なはず。
「馬鹿みたいな量設置してるじゃないかよ……はぁ次の教室」
全ての教室にひとつは爆弾が設置されている。
トイレや更衣室にも設置されている。
何より驚いたのは、生徒が登校時に使用しているカバンに爆弾がくっ付けられていた事だ。
「なんで、こんな所に爆弾があるのよ……一体いつ?」
華蓮は困惑しながらも、作業の手を緩めなかった。
九里田は一つ一つ丁寧に手作業で爆弾を処理していた。
「ふぅ……流石に骨が折れるね。まだまだ残ってるのが意味わからな___ッ!」
あまりの爆弾の量に途方に暮れていると、隣の校舎の窓から水色の光が零れるのが見えた。
「華蓮さん? ……そうか、冷却だけなら早く終わるのか。僕もそういう便利な力が欲しかったな」
「九里田! そっち終わったか?」
廊下の奥から遥冴が名前を呼ぶ。
九里田は、ライフルを召喚し発砲…教室に身を隠した。
「危な! 何すんだよ九里田!」
遥冴も教室に身を隠した。
「危ないで済むはずないでしょう……右肩撃ち抜いてるんですから」
九里田は発砲した際に二発は撃っていた。
一発目は遥冴の右肩に当たる様に、逆に二発目は遥冴の顔を掠めるように引き金を引いていた。
「遥冴君! どうしたんですか? 僕の事を九里田と呼ぶなんて、ましてや僕の攻撃が避けれないなんて……まるで人が変わったみたいですよ?」
九里田は遥冴に呼びかけるように声を出す。
「………………」
遥冴からの返答はなかった。
「…言葉を学習して、再度襲撃に来るとは思いませんでしたね」
教室から飛び出し、ライフルを構える。
九里田の動きに合わせるように遥冴も教室から出てくる。
「真っ向勝負とは、舐められたものですね。一応これでも四英のひとりなんですけどね」
昨夜の出来事とは違い、両者は既に警戒態勢だ。
「昨夜と言い、今回と言い何が目的なんですかね? 二度も恩人の形をした者を排除するのは心が痛いんですが」
「はぁ……全く。老いているとは言え流石は、天由の下僕だな」
天由遥冴の姿をした者は、上半身の衣服を脱ぎ出した。
するとその体には、Steryと書いてあった。
「スティーリィ……ですか。まだ今は亡きボスを追ってるのですか?」
「何を知らないフリしてる。九里田、お前ももう知ってるんだろ? 重國様は復活した。今は動く事が出来ないがな」
ガウラの報告に上がっていた件を思い出し、使者がやって来て、天界の話をし危機的状況だと言うことも、重國が蘇ったことも全て知っていた。
「重國が復活したのはあなた達の仕業ですか?」
「そうだとも、俺達の仲間に死者を甦らせる能力を持つ奴が居るんだ。もちろん条件はあるぞ」
「あなたの力は重國復活の影響ですか……」
今は無き力、パーソナビリティ。
かつての戦いにより遥冴がその存在を消したはず。現在の日本で、その力を使う事が出来るのは、遥冴本人を含めて四人だけ。
この四人は遥冴が独断で判断し、最も信頼出来る人物だけ力を残した。
「そうだ、消えたはずの力……新しく作られた世界には必要がない力……だがこの世界においてのイレギュラー、重國様が蘇った今古き世界の時間が動き出したのだ」
両手を広げて、堂々と宣言する。
「幻吉……幻吉なのか!」
九里田は男の行動を見て、ある人物を思い浮かべる。
幻吉、九里田の古き友人。三十年前に無くなったはずの友人。
顔は違うが、背丈、体格、動き、顔以外の全てが友人とそっくりだった。
「そうだよ? 君の永遠のライバルは幻吉だよ」
体調と名前を掛けたセリフを云う。
だが、その様子も友人と全く同じだった。
「なんで、スティーリィなんかに?」
九里田の素朴な疑問だった。
「単純に俺を甦らせてくれたからだよ。別にお前やガウラ、天由遥冴に恨みがあるとか、この世界が憎いとかそんなんじゃない……お前が恩人と慕い、天由遥冴に着いてくのと同じ理由だ」
スティーリィに助けられたその恩を返す為に……幻吉は重國の下に着いた。
「そうか、なら止めたり引き戻したりするは違うな」
「ありがとう。やっぱりお前は良い奴だな、ここであったのもなにかの縁だ。ここは、撤退する事にするよ、さっきも言った通り恨みなんてないからな、学生達に迷惑かけることはしたくない」
「そうか、ありがたい話だが既に爆弾の件で迷惑してるんだが?」
九里田は嫌味のように云う。
「なに? 爆弾だと?」
「そうだ、お前らが仕掛けたんだろ?」
幻吉は腕を組んで考える体勢をとるがすぐに、無線を取り出し連絡を取り出した。
「知らないのか? いや、昨日の幻吉の行いが爆弾の設置だと考えるのが妥当だと思うんだが……」
九里田はライフルを下げ肩に掛ける。
幻吉の連絡が終わるまで、しばらく待機する。
待機している間、近くの爆弾の処理していると幻吉の声が校舎に響いた。
「んだと! 何言ってんだよ。そんな事聞いてねぇぞ!」
九里田は爆弾処理の手を止め、幻吉の前に立つ。
すると、幻吉は通話を辞め焦りながら話す。
「おい、九里田。不味いことになったぞ」
「なにか、あったのか」
「どうやら、この爆弾はブラフらしい………本命は___」
学園に警報が鳴り響く。
「クソっ! 話は後だ、今すぐ学園にいる人間を……いや、この街に住む人間を避難させろ!」
「わかった、幻吉! これ持ってけ」
「これって…………なんだ?」
「無線だ、なにか今のお前なら信頼できる。それに、それを持ってるなら華蓮さん達も話を聞いてくれるはずだ。二人に話をしてきてくれ」
「…良いんだな。わかった」
「あっ、それと肩…止血だけでもしておいた方がいいぞ。これから忙しくなるだろうからね」
「…お節介は相変わらずだな。わかった、向かう途中、適当な布で止血しておくよ」
幻吉はそう言い残し華蓮達の方へ走り出して行った。
「ふぅ…先に、避難警告だな」
九里田は警備室に向かって走り出した。
「いやぁ……改めてめんどくせぇ」
淡々と爆弾を解除する遥冴は、思わず零してしまう。
「さっき怒られなかったら、彩時使ってチャチャッと終わらせたのに……」
遥冴は愚痴を呟きながら爆弾を処理していると、隣の校舎から華蓮の乱花の力を感じ取る。
「人に使うなって言ったのに、自分だけ使うのはズルくない? ………………いや、立場が違うから仕方ないか」
遥冴は一瞬華蓮に対して文句を感じたが、すぐに取り消す。
「にしても、ずるいものはずるいか。あっ、彩時使えないなら、人手を増やせばいいんだ」
遥冴は手をぽんと叩いて、唱える。
「桜、鉛。おいで」
すると、二人の女の子が遥冴の周りに姿を表す。
「二人ともこれと同じのを見つけて持ってきてくれない?」
遥冴は既に処理した爆弾を桜と鉛に見せてお願いする。
桜と鉛は頭を縦に降って、元気よく教室へ入っていく。
「なんか……素直な子達を利用するのは心が痛い…………まぁ、俺から生まれてるんだけど」
遥冴も爆弾の処理に戻る。
二人のお陰で遥冴の周りは爆弾だらけになっていく、最初は良かったもののだんだん冷却する手が足りなくなっていった。
「……やべぇ、間に合わねぇ。今爆発したら流石に耐えられないかも……桜、鉛。ちょっとだけ休憩してていよ」
次々と爆弾を持ってきてくれる、二人に休憩する様に指示を出す。
二人はその言葉を聞いたらすぐに廊下や教室を使ってかけっこを始めた。
「楽しそうだなぁ」
遥冴はその光景を見ながら爆弾を処理する。
数分かけて九十個くらいの量の爆弾を無効化した。
「三校舎で、爆弾数が三百ちょっと……今九十位で既に俺が解除してたのが二十個ちょいだから……一回スキャンしてみた方がいいか」
遥冴は自分が担当している校舎全体をスキャンする。すると検知した爆弾は、遥冴の周りにしか無かった。
「よし。この校舎は全部終わったか……つか、なんで遥兎はなんで力使ってるの? 成長かなんかして爆弾を無効化出来るようになったのか?」
桜と鉛が回収してきてくれた爆弾を無力化している間に、二つ横の校舎…九里田遥兎が担当している校舎から遥兎の力の使用が感じられていた。
「まぁいいか、とりあえず爆弾の処理は終わったけどこれどうするか……あっ、いいこと思いついた」
遥冴は再度手をポンと叩き何かを思いついた様子だった。
「鉛、ちょっ…___ん!」
突然鳴り響く警報に、遥冴は声を出して驚く。
「警報? って事は防衛システムが反応したのか」
遥冴は冷静に様子を確認する。窓を見ると騒いでいる人達が目に入る。
「いっぱいだな。そりゃそうか、こんな事滅多に起こらないからな」
何故か関心している遥冴。
「あっ、そうそう。鉛、ちょっと来てくれるか?」
遥冴は鉛の名前を呼ぶと、桜も一緒にやって来た。
「あのね、あの爆弾。爆発しないようにしたんだけど、怖いじゃん? だからさ鉛、力貸してくれない?」
遥冴の話に頭を縦に振る桜と鉛。
「ありがとう。じゃあ早速……って言いたいんだけど、君は一体誰かな?」
左通路から自分に近づいてくる人影に向かって遥冴は尋ねる。
「話を聞いてくれ、大変なんだ」
「ふっ、そんなに警戒しなくてもいいさ。その無線、遥兎の物だろ? あいつが君に託したのなら争うつもりは毛頭ないよ」
「こんな事を言うのはなんだが、俺が無理やり奪った可能性もあるだろ?」
男の問に遥冴は、考えずとも答える。
「あいつがそんな下手な事する訳無いだろ? 落としたり、負けるなんてことは無い。それに、俺達に手を出すって事は、負けた人間を生かすことはしないだろう? 遥兎の生命反応は途絶えてい、むしろ元気なくらいだ」
危険であることを知って尚、遥冴達と戦う。
と言うことは、生きるか死ぬかの二択。負けに明日は無い。
それが、一般人によるものなら別だが遥冴は男がスティーリィの人間だと言う事を理解していた。
「少なくとも俺の知ってるスティーリィなら、そんな甘い人間は居ないからな」
「あいつのことを、そんなに信頼してるんですね」
「信頼もそうだが、一番は歴だよ」
遥冴の言葉に疑問符を浮かべる男。
「歴? どういう事だ」
「おいおい、そんな事は今は重要じゃないだろ? 何があったんだ」
遥冴は話を中断し本題に入るように促す。
「そうだった。えっと……流れは省くが、今ここの街全体にミサイルが打ち込まれようとしてるんだ」
「……また、規模がでかいな。簡単に詳しく」
幻吉は己の中で文章を構築する。
「学園に仕掛けられてる爆弾は全部ブラフで、天由達の一掃の為にミサイルを使うのが本来の流れ……だが、ミサイルは着弾し爆発するのもではなく、ロボット兵の移動手段として使われるらしい」
淡々と説明する。
黙って静かに説明を聞く。
「ミサイルを使い、全滅と占拠を狙った作戦。そんで君とこの爆弾は、その計画の為の囮……華蓮には話したか?」
「まだだ、彼女より天由に話をするのが先だと判断した」
「良い判断だ。おそらく遥兎は避難指示とガウラへの応援要請をしているはず……君名前は」
「幻吉だ」
「そうか、幻吉。華蓮に事情を話に行ってくれ、ただし華蓮とあったらまず自己紹介をする事な? 今軽くこっちで話通しておくから」
「わかった、かたじけない」
幻吉は遥冴の指示に従って華蓮の元へ走り出した。
「念には念をってね……」
遥冴は華蓮へ無線を入れ、幻吉と言う人物が会いに行く旨を伝える。
なぜ、こんな事をしたのかそれは華蓮が乱花を使用してるからだ、すぐに戦闘可能な人間の元に仲間の装備を持った敵組織の人間が来たら辿る未来はひとつだけだ。
九里田遥兎が信じた人物を守るために出来る事はしてあげたという事だ。
「よし、鉛、桜。来い!」
連絡を入れた遥冴は左手で桜と、右手で鉛と手を繋ぐ。
すると、遥冴を中心にピンクと白のグラデショーンの雪が降り出した。
遥冴の体に雪が触れると、少しづつ見た目が変化していく。髪は雪と同じ色になり、服装は民族衣装に見える格好に変わる。
「さで、爆弾を無効化しようかな」
遥冴は、右腰に掛けてある二本の刀から一本を鞘から抜く。
その短刀の刀身は鉛白色の輝きを放っていた。
遥冴は大量の無力化した爆弾をその短刀で切った。
だが、何も起こらなかった。爆発する訳でも、バラバラになる訳でもない。
「これで良いな。華蓮と合流しよう」
遥冴は隣の校舎に移動した。
「あんたが幻吉だな?」
「あぁ、突然すまないが話をきいてもらきたいんだ」
「もちろんだ、あいつから話があったからね」
華蓮は幻吉から話を聞く。
遥冴とは違い華蓮は最初から事細かく聞き出した。どういう目的でここに来て、何をして、何が起こったのかを全て聞いた。
「なるほどな、だがいいのか? その恩があるスティーリィを裏切る行為をしてるが」
華蓮は鋭い目つきで幻吉の瞳を見つめる。
幻吉は目を逸らさずに覚悟を決めた瞳で華蓮の瞳を見つめながら言い放った。
「確かに、恩はある。だが、無関係の人を巻き込むのは俺には出来ない。それに、最初から俺にはその計画を話すつもりはなかったらしい」
淡々と己の心情を話す幻吉。
「なら、その計画に従う理由はない。知らない、分からない計画を潰そうが関係ない」
既に覚悟を決めていた幻吉の言葉に華蓮は感心する。
「覚悟は決まってるようだな。よし分かった、幻吉、あんたの事を信じよう。もちろん一時的にだがな」
「わかってる。今、九里田が避難指示やガウラに連絡をとってる。天由は…何してるか分からない」
幻吉は遥冴が居た校舎を見ながら云う。
「そんなのは、いつも通りだ。長年一緒にいる私達でも分からないんだから、誰にも分からないよ」
華蓮がそう言うと、幻吉の背後から話しかけられる。
「酷いなぁ、少しくらい分かってくれても良くない? もう三十年くらいの付き合いだぞ」
声の正体は遥冴本人だった。
「逆に言うが、三十年一緒に居るなら少しくらいはこちらの身にもなって考えてくれるかな?」
「はいはい…………って考えすぎてるくらいだと思うけど」
「否定出来ないのが腹立つな」
華蓮、遥冴、幻吉の三人が揃った。
「遥兎から連絡があって、ガウラの到着はもう少し掛かるけど避難は既に完了したらしい」
「って事は、あとはミサイルを待つだけか」
遥冴と幻吉が話している様子を見ながら華蓮は、疑問符を浮かべていた。
「……なんで、遥冴は既に臨戦態勢なわけ?」
遥冴の容姿は未だ変化した状態のままだった。
「そりゃ、さっきまで爆弾の処理してたからな」
「あー、なるほど。理解理解」
納得してる様子の華蓮だか、今度は幻吉の頭に疑問符が浮かんでいた。
「爆弾処理ってさっき俺と話した時は普通だったじゃないか」
「幻吉が居なくなった後に、少しだけ爆弾処理をしたからだよ……って今はそんな事言ってる場合じゃないだろ」
華蓮、幻吉は校庭に向かっていった。
遥冴は人前で目立てない事を考慮し校舎で待機する事になった。
その間、華蓮と九里田が担当していた校舎の爆弾の処理をしていた。
〈大野さん、今の状況は〉
〈ミサイルの軌道を確認した結果、着弾までもう十分を切ってる。おそらくだがガウラの到着と同時に着弾する事が予想される〉
〈そうですか、分かりました。街全体の避難は完了しました〉
〈了解、後は……政府の方にはこちらから連絡しておきます〉
〈お願いします〉
大野との通信を終えると、すぐに遥冴から連絡が入る。
〈遥兎、今大丈夫か?〉
〈遥冴君。大丈夫です〉
〈そうか、連絡が終わり次第校庭に向かってくれ、今華蓮と幻吉が待機してるはずだから〉
〈わかりました〉
通話を終え、九里田は華蓮達と合流する。
「遥兎! こっちだ」
「すいません、遅れました。幻吉も悪いな」
「大丈夫だ、必要な事をしてたんだから遅れても問題ない。だが、アレを見てくれ」
華蓮が指さす方向を確認すると遥兎は目を見開いて驚愕する。
華蓮、幻吉、遥兎の視線の先には横一列になって飛んできてるミサイルの群れが確認できる。
「実際に見ると、やっぱりすごい数だな」
「遥兎、報告に上がってるのは何発?」
「全部で十五発で、ミサイル一発におよそ三十体のロボット兵が確認できました」
一気に緊張感が走る。
幻吉は初めての経験で額から汗が吹き出る、無意識に足も震えていた。
「全部で四百五十体……か、こりゃ骨が折れるぞ? 一体一体が弱くても数集まれば厄介な事に変わりは無いからな」
華蓮は焦りを感じてはいるが冷静に状況を確認する。
「なんで……なんで、お前らはそんなに冷静なんだよ…普通に考えて、無茶な量だろ?」
幻吉は声を震わしながら、二人に訴えかける。
「幻吉、お前は今の世界しか知らないだろ? お前が死んでからの三十年間で世界は様々な事を経験したんだ。そして、その中心にはいつも僕達ガウラがいた」
九里田は友人として幻吉と話す。
「幾つもの修羅場を経験してきた、そしてその度に絶望を味わった。だから、今さら変に慌てることは無いんだよ」
「今、以上の事をずっと経験してきたのか……」
「そうだ、だから僕達は自信満々なんだ」
九里田は胸を張って、微笑みながら云う。
「二人とも、いい感じのところ悪いけどもうすぐで始まるよ。幻吉! 覚悟決めなよ。裏切るってのはそう言う事なんだから」
近づいてくるミサイルに備えて、華蓮達は戦闘準備をする。
幻吉も引き返せない事を理解し震える足を止め、深呼吸をする。
「終わったぁ……ん? 遥兎もちょうど終わったか、ふぅ…連絡入れるか」
遥兎と連絡をした後、かおりから電話が掛かる。
〈もしもし、どうした?〉
〈遥冴君、今ガウラからの連絡で事情はわかりましたが、パレットはどうしましょう〉
〈うーん、防衛システムを起動すれば良いんだけど……かおり達はもう避難してるか?〉
〈いえ、全員まだパレット内に居ます〉
〈なら、パレットの防衛に失市とデュナをあててもらっていいか?〉
〈わかりました、でしたら私とエリーはガウラ本部に避難しておきますね〉
〈頼む、あと一応でオウガを向かわせる〉
〈了解しました。気をつけてくださいね、遥冴君〉
〈わかってるよ〉
電話を切ると、窓からミサイルが飛んでくるのが確認できる。
「多くない? そんなに撃ち込まれんのか。こりゃ苦労するな……ん? 遥兎なら着弾前にワンチャン撃ち落とせ…被害がデカイか」
空気中で撃ち落とせば、ロボット兵諸共破壊する事ができるが、そうなると破片や残骸が街全体に降り注ぐことになる。
そうなれば後から対応する事が増えてしまう。
「やめよう。めんどくさい、目立つしな」
どうしようかと考えていると幻德から連絡が入る。
〈どうした、幻德〉
〈今、テレビ関係者に制限掛けといたから遥冴……久しぶりに暴れて来い〉
〈さっすが、総理。気が利くね〉
〈うるさい、早く行け〉
〈サンキュ、げんちゃん〉
〈ったく……あっ、待て〉
〈どうした?〉
〈俺も手が空いたら、合流する〉
〈……手が空くことがあったらな?〉
〈そうだな、行ってこい〉
和筆 玄德。
ガウラ設立からの初期メンバーであり、現総理大臣。
華蓮と同じ年数、遥冴と共に時を過ごしている。
「いやぁ、やっぱり国が味方だと色々楽だね」
遥冴は、校庭に移動し華蓮達と合流する。
「ん? 遥冴! どうしたんだよ」
校舎の方から走ってくる遥冴に困惑する華蓮と九里田。
「ふっふっふ、今さっき幻德から連絡があってガッツリ暴れる事を許可されんだよ」
「あっはは、そうか! なら今回はそんなに気負わなくても良さそうだな。適当に楽しむくらいでちょうどいいかな」
さっきの緊張感が嘘のように一気に空気が緩くなる。
「久しぶりだから、あんまり期待しない方がいいかもよ?」
「「……何言ってんの?」」
華蓮と九里田は思わず声を揃えてツッコんでしまう。
「なにをバカ言ってんだよ。あんたに鈍るなんて、天地が返ってもある訳ないだろ」
「本当ですよ。ふざけるのも大概にしてください、撃ち抜いて蜂蜜を詰めますよ?」
遥冴に向かって辛辣な言葉を投げかける二人。
「……言い過ぎじゃない? 後、蜂蜜は何?」
呑気に話していると幻吉が声をあげる。
「何してんだよ、もう着弾まですぐだぞ!」
その声に遥冴と華蓮は微笑み、九里田は顔を叩き気合いを入れ直す。
「さぁ、遥冴。久しぶりに見せてくれよ」
「そこまで期待されちゃ、一肌脱ぐしかないか…………それと、この星なら普通に天地が返る事はざらだと思うが」
「はぁ……台無しだよ。この馬鹿!」
遥冴の頭をひっ叩く。
「なぁ、この人達っていつもこんな緊張感ないのか?」
「三十年一緒にいるけど、真面目な所なんて片手で数えれるくらいしかないよ」
「それ、本当に正義の組織なの?」
「ガウラは正義の組織じゃないよ? ガウラは、彼の組織だから」
ガウラとスティーリィ…敵対する二つの組織。
九里田と幻吉は立場を忘れ目の前に迫ってる危機に立ち向かう。
そんなに九里田と幻吉の前に立つ遥冴と華蓮は、いつかの自分達の様でどこか懐かしく感じた。
ミサイル着弾まで、三十秒を切った。
ガウラの部隊も次々と到着し、展開していく。
「着弾まで、五…四…三…二…一!」
カウントダウンが終わるのと同時にミサイルが着弾、ロボット兵が次々と解放されて行く。
その中には水族館で接敵したベータ型やゼータ型。多くの種類のロボット兵が街中に広がっていく。
「てめぇら! ………行くぞ!」
遥冴の掛け声で全員が動き出す。
カラーコード:青緑色




