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彩時〜基本色編〜  作者: ビードロくん。


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#00B16B

日が差し込む部屋で遥冴は、使者と二人きりで話をしていた。


「良いのか? 使者ともあろう人がエリーの傍から離れても」


「問題ないですよ。こんな事は言いたくないですが、あなた達の実力は認めていますから。特にかおりさんの力は制限があるとは言えあなたに迫る事が可能ですからね」


遥冴と使者は楽しそうに食事をしている、エリーとかおり、デュナと失市達の姿を少し離れたところから眺めている。

デュナと失市は後から合流していた。


「そこまで高く評価してくれてるとは思わなかったな」


「……いつかの戦いを忘れたのですか。あの光景を見て評価を誤る事はありませんよ」


「そいつはどうも」


使者と遥冴は真面目な話は一切せずに昔話のような事や何気ない世間話を人間と神の使いとして話す。

お互いの立場上、話してはいけないことが存在する為、真面目な話は一切なし。


「___そうですか。時間が迫ってまいりましたね。ひとつ頼みたいことがあるのですが」


「なんだ、急に改まって」


「エリー様をしばらく滞在させてはいただけないか?」


使者は現在の天界の様子を見た時にエリーの身辺の安全を確保するのが難しいと判断したらしく、遥冴に任せたいとの事だった。


「それは、別にいいんだが…あんたは一人でも大丈夫なのか? 一応他の奴らも危ういんだろ?」


「私の心配は問題ありません。予めエリー様からカゴを施してもらってますから」


「なるほどね。そういうことなら大丈夫だろうが、わかってるよな? あんたが居なくなればエリーが悲しむこと」


遥冴は釘を刺す用に使者に云う。


「理解してますよ。最悪、緊急でこちらに避難できる用意はできますから」


使者はそう言い残すとエリーの元へ行き、話をする。


「……ん? それって、俺達まで巻き込まれないか?」


遥冴は使者の緊急の手段に少しの疑問符を浮かべていた。



使者が天界に帰ると、エリーは肩の荷が降りたかのように脱力する。


「はぁ〜、疲れたぁ!」


「毎日お疲れ様です。エリー」


「……かおりさーん」


エリーは日々の立場による束縛から解放され、宥めてくれるかおりに抱きつく。

エリーからしてみればかおりはお母さんのような存在な為、安心出来るんだろう。


「君、お疲れ」


「おう、失市もお疲れ様。どうだった学園の方は?」


「特には。でも、怪しい人居た」


「やっぱりねぇ、そうだよねぇ」


一週間ほど前にデュナと失市には学生達や学園の身辺調査をお願いしていた。

自分の子供達の為でもあるが、それよりも酷くなっている迷惑行為の糸口になればと考えていた。


「でも、なんでこんな事するの?」


「多分だけどこの迷惑行為は集団によるものだろうと踏んでいる。しかも一般人の集団だろう」


「そうなの?」


「あぁ、恐らくだけどね。そうなると俺が動かなくても問題はないし、むしろ動く事ができない」


「たしかに」


一週間ぶりの失市との会話に花を咲かせる。

人によっては、一週間会わないだけで話に花を咲かせる事は無いだろうと思われるかもしれないが、二十四時間、三百六十五日、毎日一緒に居ると、一週間離れただけでも意外と寂しくなるものだ。


「さて、久しぶりに全員揃った事だし……パレット開けるか!」


「えっ! 今からですか?」


「あぁ、久しぶりに皆でやりたいだろ」


「相変わらず、急ですね……わかりました。デュナ、開店の告知をお願いします。私はお店を開ける準備をしてきますから」


遥冴の突然の提案にみんな焦りだしだが、その顔は険しいものではなく笑顔で楽しそうにしていた。


「やったぁ! 久しぶりにマスターとお店に立てる〜」


るんるんで制服に着替えるエリー。


「一週間ぶり……みんなでは数年ぶり……楽しそう」


控えめに微笑みながらエリーと並んで着替える失市。


「懐かしいねぇ……デュナ、写真撮っちゃえ」


「……着替えてる途中ですが?」


「馬鹿か、着替え終わったらに決まってるだろ。誰が思い出で着替えてる所を納めろって言ったよ、とんだ変態野郎じゃねぇか」


「今日は、元気ですね」


「………いつもが元気じゃないみたいに言いやがって」


既に制服に着替えている遥冴とデュナは二人を見ながら話している。

少しすると、お店の開店準備を終えたかおりが戻ってくると何やら焦っている様子だった。


「遥冴君!」


「どうした、かおり」


「既にすごい量の人が並んでいるんです。下手したらいつも以上の人数が」


「……デュナなにかした?」


開店の告知を担当したデュナに尋ねると、一週間に失市、数年ぶりのエリーの出勤について記載したらしく、二人の人気の影響で通常よりも人が集まっているのだろう。


「……二人が人気なのはすごく嬉しいしありがたいけど…この人数は普通に無理だけど」


遥冴はデュナに頼み監視カメラを覗くとまるでアイドルの握手会並の量の人が店の前で並んでいた。


「これ、仕込み足りる?」


「恐らく足りないかと思いますし、それ以前に捌き切れるかどうかも怪しいと思います」


「接客を二人に任せたとしても調理が間に合うかどうか……デュナには二人を見守ってもらいたいから…仕方ない。気合い入れるか、かおり」


「はい、少し頑張る必要がありますね」


皆で気を引き締めて、パレットを開店する。

すると、列を成していた人達が、続々と店内に流れ込んでくる。


ものの数分で店内はいっぱいになる。

次々と注文されるメニューを必死に作って提供する。


しばらくすると、お店の前で何やら騒ぎが起こりだした。

店内にいる人達、接客をしていたエリーと失市もお店前の騒ぎな気になっていた。二人と共に接客をしているデュナは微塵も気にする素振りを見せずに遥冴と連絡をとる。


遥冴は首につけている機器のボタンを一回押す。


〈マスター、報告があります〉


〈どうした〉


〈パレット前で揉め事が起こっているようです。詳細についてはただいま監視カメラを確認します〉


〈わかった〉


数回ラリーをして遥冴はかおりにも共有し続けて指示を出す。


「かおり、どうやら店の前で揉め事が起こってるらしい」


「本当ですか? まぁあれだけの人が並んでいたら揉め事のひとつやふたつ起こっても不思議じゃありませんが」


「今、デュナがカメラを確認するらしいから、その間エリー達を見てくれないか?」


「了解しました」


かおりは返事をすると厨房から出ていきエリーと失市を集める。

店内を見渡すと幸いな事に、みんな外が気になり注文が一切入ってこないことぐらい。

とりあえず遥冴はまだ作れてなかった注文の品を作りながらデュナからの通信を待つ。


二分ほど待つとデュナから答えが返ってきた。


〈マスター、原因が分かりした〉


〈なんだったんだ?〉


〈割り込みが原因のようです。長蛇の列がある反対側から来たお客様が、列に気付かずに店内に入ろうとしたのが原因です〉


〈たかが、それだけで取っ組み合いになるのか?〉


〈それが、ひとつ問題がございまして。どうやら戦闘で並んで居たお客様の瞳を確認した所、通常と異なっていることがわかりました〉


〈そうか、わかった。とりあえず詳しい話は後で聞く、その瞳の件が本当なら放置できない〉


遥冴はデュナとの通信し、何が起こってるのか理解した様子でパレット前の揉め事に向かった。


「お客様、どうしましたか?」


遥冴が揉めているお客様とその他の並んでいる人達に声をかける。


「どうしたじゃないだろ! 早くこいつをどうにかしてくれよ!」


取っ組み合いをしている男性二人のうち一人が、遥冴に向かって云う。

デュナからの情報通りなら、遥冴に向かって話しかけた方が割り込みをした方になる。


遥冴は無言で男性二人を引き剥がし、暴れている方の男性の目を見つめる。


「やっぱりか……」


そう遥冴は呟くと暴れている男性が突然気を失った。


「大丈夫ですか? 大丈夫ですか? かおり、急いで救急車を読んで」


遥冴は突然の出来事で戸惑っている様な演技をしながらかおりに呼びかける。


かおりは電話をしながら店の前に出てきた。

それと入れ替わりで遥冴は男を連れながら、店内へ戻って行った。

店の外ではかおりが他のお客様への呼びかけると割り込みについての注意がされていた。


店内ではデュナの指示でエリーがお客様の困惑を納めていた。


「ふぅ……まさか、こうも影響が出るのが早いとは…恐れ入ったな」


遥冴は男を裏に連れて行って床に転がした。

時間にして十分程度だろうか、パレットの裏口からガウラが入ってくる。


なぜ救急隊ではなくガウラかここに来たかと言うと、ガウラが救急隊とかそういう訳では無い。

遥冴が揉め事を止めるために外に出た時に、ひっそりとかおりとアイコンタクトをしていた為、救急隊ではなくガウラがパレットにやってきたのだ。


「キング、この人が話にあった人ですか」


「あぁ、こいつを運んで欲しいんだ。一応何も起こらないはずだが、気をつけて運んでくれ」


「わかりました」


遥冴はガウラの隊員に男を引渡し、デュナと通信を繋ぐ。


〈デュナ、今ガウラに引渡しが終わったところだ〉


〈わかりました。こちら今かおりさん達のに協力により落ち着きを取り戻しました〉


〈わかった。とりあえず、残りの時間も頑張ろうか〉


この日のパレットはいつも以上に騒がしいものになった。

エリーの出勤、お客さんの量、一件だけ起こった揉め事、久しぶりに騒がしいパレットが帰ってきた気がして遥冴は、満足してこの日を終えた。



次の日、遥冴は華蓮が学園長を務める学園にやってきていた。


「さて、今日はなんで呼ばれたんだ?」


遥冴は定期的に学園に呼ばれて授業をする事があるが、今日は急遽華蓮から呼ばれているので授業をする為に呼んだ訳ではなさそうだ。


「迷惑行為についてと昨日の件についてだ」


「そうか、とりあえず迷惑行為についてを先に教えてくれないか?」


華蓮は、ファイルを開きながら説明する。


「まず、前提として迷惑行為をしている集団は一般の集団だと言うことが昨夜判明した。

しかしそれと同時に過去に重國の周りにいた人間達と数名、面識があった事が続けて判明……これが今わかっている事かな」


「そうか、一般の集団って所は予想通りだったが、重國まで絡んでくるのは少し予想外だったかな」


遥冴の予想通り一般人の犯行であったが、予想外な事が判明してしまった。


「重國が関わってるとなると、一筋縄じゃいかないだろうな……今は一般人でも今後どうなる事やら」


「恐ろしい事を言うんじゃないよ……」


「悪い悪い、そんで昨日の男はどうだった?」


遥冴は昨日のパレット前で暴れていた男の事を尋ねる。


「あんたの予想通り、本当に微量だか重國の影響を受けていた。けど何でだ? 重國はもう死んでるはずなのに……」


華蓮の反応を見て、遥冴は思い出したかのようにエリーと使者との話を話した。


「天界でそんな事が起こってたのか…エリーは大丈夫なの?」


「あぁ問題ない、それに今は俺のところに居るから大丈夫だ」


「あんたのところに居るなら、どの場所よりも安全だもんね」


「………今感じたけど、人の呼び方が俺に似てきたな」


遥冴は人の呼ぶ時に名前を呼び捨てにしたり、あんたという二人称をよく使う。

華蓮も意識してなかったが、遥冴と長年一緒に居る為知らず知らずのうちに二人称が寄ってきてしまったようだ。


「自分の影響力を理解してからその発言をしてもらいたいんだけど?」


「影響力なんてありゃしないよ、もう忘れられた事なんだから」


「そうだな、まぁそれが救いだな」


「おう、それで話は以上か?」


エリーのことをかおり達に任せていると言え少し心配な遥冴は華蓮に尋ねる。


「そうだね、話自体は終わりだな。でも、少しだけ手伝ってもらいたいことがあるんだけどいいか?」


「まぁ良いでしょう」


遥冴は一瞬迷ったが、 華蓮の頼みを承諾する事した。

華蓮について行くと遥冴はある教室に連れてかれた。


「はい、みんな静かにしてちょうだい。華蓮さん、こちらへどうぞ」


担任の教師がクラスのざわめきを静めると華蓮が教室に入っていく。

遥冴もそれに続いて、教室に入る。


「学園長って綺麗だよね」「わかるわかる、あんな人になりたいよね」


「はぁ、流石は華蓮さんいつ見ても美しい」

「当たり前だろ、あの華蓮さんだぞ」


生徒達は華蓮が教室に入ってくるのと同時に騒ぎ出してしまった。


「相変わらず、ご人気のようで飯塚華蓮さん?」


「あんた次、さん付けで呼んだらブチ切れるからね?」


「それは、それで見てみたいけどね?」


華蓮は自分が信頼する人が自分を呼ぶ時に敬語を使う事を極度に嫌う傾向にある。

年下や立場が下の人が使うなら、特に何も感じないが、自分よりも立場が上の遥冴が敬語を使うのは絶対に許せない。


「……二度と敬語なんて使うんじゃないよ?」


「当たり前だろ。何年一緒にいると思ってる」


遥冴と華蓮のやり取りを見ていた、学生達はコソコソ話をしていた。


「誰あの男の人?」「わかんない、みたことないからお客さんじゃない?」


「おいおい、誰かも分からない男が華蓮さんと親しげに会話しているぞ」

「あぁ、これは許せない。いや家族や友達であったとしても羨ましい」


男子も女子もざわざわしている。


「はぁ、すいませんね華蓮さん。ほら! みんな静かにして!」


再び騒ぎ出した生徒達を注意する教師の姿を遥冴は懐かしいと言う感想を持ちながら眺めていた。

時々、生徒達から時々視線が向けられていたが気にしない事が吉だと遥冴は感じた。


「ふぅ、みんな。おはよう」


「「おはようございまーす」」


「本題に入る前に、遥冴。なんで連れてこられたかわかってないよね?」


生徒達に挨拶をする華蓮の声色はいつもよりもおしとやかで柔らかいように感じた。


「わかってないよ? ここが芸能科の教室だって言うのも、さっき知ったぐらいだからな」


「四年前くらいから新しく設立した学科芸能科、あんたの娘達もここに属してるな」


「妃乃達もそうなんだ」


「保護者なら知っとけよ……」


遥冴の口から妃乃という言葉が出てきた事に生徒たちは困惑していた。


「あれが妃乃さんのお父さん?」「天由さんのお父さん……お若い」


男子生徒は顔を顰めて、遥冴に鋭い眼光を飛ばす。女子生徒は少し興奮気味であった。


「それで、なんで俺は芸能科に呼ばれたんだ?」


「そこが、問題なんだよ。芸能科の学力が著しく低下していてな、そこで遥冴の手を借りようと思ってな」


「口悪く簡単に言うと、芸能科は勉強が出来ないからどうにかしてほしいと?」


「まぁ、天才達の父親だし…適任でしょ?」


「高く評価しすぎでしょ」


その後華蓮は遥冴と生徒達にこれから何をするのかについて話をした。

簡単に言えば、学力をあげようとの話だった。


「と言っても、俺自身の頭は然程なんだけど?」


「バカ言えよ、Dシステムを開発しといてよく言うよ」


「あれは、俺に必要だったからな」


「今回は不要だと?」


「俺の子たちはみんな、賢いからな……一部を覗いては」


「それは、まだ幼いからだろ」


遥冴と華蓮が話をしていると、ふたりは何かを察知したのか顔を見合せた。


「遥冴、今のって……」


「アイツだろうな、どうする? 理事長さん?」


「……気配のする方を頼んでもいいか?」


「はいよ、校舎に関しては完全に任せるぞ」


遥冴は華蓮に校舎を任せて一人校門まで向かうはずだったが、屋上に行き全体を見渡し気配の出処を探る。


「……あそこか…って学生じゃねぇかよ」


見渡すと明らかに一人異質な雰囲気を漂わせている男子生徒が、正門に向かって歩いていく様子が見て取れる。

それと同時に、校舎裏の方にも似たような気配を感じた。


「はぁ、仕方ないか」


遥冴は、華蓮から支給された学園内専用の無線を手に取り、連絡する。


〈華蓮、今どこにいる?〉


〈今、各班に指示を出してるところだけど〉


〈そうか、一応報告しておくと、校門前に不審な男子生徒が一人、校舎裏にそれと似たような気配がひとつ〉


〈どっちを、優先するべきだ?〉


遥冴は少し考える。

不吉な気配がより強いのは校門前の不審な生徒、ただ手遅れになると不味そうなのは校舎裏だと遥冴は踏んでいる。


〈……校門前に班と一応で遥兎も連れて行ってくれ〉


〈わかった、遥冴はもうひとつの方に行くんだな?〉


〈あぁ、それと華蓮は先生として少し気を引き締めて置くと楽かも〉


〈……わかった〉


遥冴は校舎裏に向かって移動する。

学園内には四つの校舎があり、遥冴が居るのは三年棟。怪しい気配感じたのは二年棟の方だった。


「おいおい、お前らあんまりはっちゃけるんじゃないよ」


「わかってますよ、こいつらは躾ないといけませんからね」


「うぅっ……」「…………」


遥冴は下を見下ろして校舎裏で何が起こっているのか確認した。

二人の女子生徒を四人の男子生徒が何やら不快な会話をしながらいじめている様子だった。


遥冴はこれ以上男子生徒が手を出す前に、校舎から飛び降りた。


「おい、何黙ってんだ? 睨みを利かすのがお上手なんですねぇ?」


男子生徒が一人の女子生徒に手を出そうとしていた。


「あっちは、あいつ一人でいいか。無愛想だし、な?」


「贅沢すぎるだろ、あの野郎は」


「なら、向こう行っても良いんですよ?」


「何言ってんだよ、俺はこの女がタイプなんだよ」


残りの三人の男子生徒がもうひとりの女子生徒に手を出そうとしている、瞬間上から遥冴が間に入るように落ちてくる。


「うわッ! なんだ!」


男子生徒達は声を出しながら後ろに後ずさる。


「けほっごほっ……おい! あいつらどこに行った!」


「わかんねぇよ! 俺も気づいた時には、居なくなってたんだから!」


土煙が治まると、女子生徒の姿が無くなっていたことにより男子生徒達は動揺を隠せずにいる。


「何をしてたのかは分からないけど、君達が悪い事をしてたのは見てわかるよね?」


「___! 何者だ、てめぇ!」


遥冴は自分の後ろに女子生徒を隠しながら、男子生徒に声をかける。


「てめぇか……まだ使う人いるんだね。それと、別に何者でも構わないだろ?」


「てめぇふざけてんのか? 制服じゃねぇって事はここの生徒じゃねぇな」


「はぁ、そんなに若くないのは見てわかるだろうに……まぁいい___」


遥冴は話している途中で突然男子生徒から殴りかかられた。


「うっぐぅ……」


殴りかかった男子生徒は、地面に倒れ込んで意識を手放した。


遥冴は男子生徒の攻撃を受け流し、腹部に拳を一突きしていた。

その光景を見た残りの三人が、手を出したり声を出そうとする前に踏み込み一気に詰め寄る。

遥冴から繰り出されのはただの正拳突き。


だが、その拳には勢いは無く力も籠ってない。

とてもソフトに男子生徒三人を捉える。


「___っは」


声もろくに出せずに、次々と倒れていく。


「痛くは無いと思うけど……これ怒られないよね? 大丈夫…では無いだろうけど、とりあえず何があったのか教えてくれるかい?」


遥冴は倒れた男子生徒達を一箇所に集めながら、女子生徒の話を聞く。


この男子生徒四人は日頃から目に余る行動が多い生徒らしく、それを注意した結果校舎裏に呼び出され、制服を破かれてしまった。

というのが大まかな流れらしい。


「いじめとかじゃないけど、少し行き過ぎた事をしていたと……とりあえず今華蓮をここに呼ぶから詳しい事はそっちに話してもらって良いかい?」


「わっ、わかりました」「ありがとうございます」


「良いの良いのそれが仕事みたいな節あるしね」


遥冴は、華蓮が来るまで他の生徒が来ないか見張ったり男子生徒達が目を覚まさないか眺めていた。


「遥冴! 悪い、遅れた」


少し待つと華蓮が二着のジャージを持ってやって来た。


「そうだな、遅い。って話よりはいち早くこの子達にジャージを渡して」


「言われなくてもそうするよ、一体何があったの?」


華蓮はジャージを渡しながら女子生徒から事情を聞き出す。


「遥冴、どうすればいいと思うこの子達」


目を覚ました男子生徒達を正座させながら、遥冴に尋ねる。


「退学でいいんじゃ無いか? 前例は今までないが良い機会だろう」


「そうだな……今までがうまく上手くいき過ぎてた、だけだもんな。いじめやこう言ったふざけた行為が絶対に起こらない、という理由は無いもんな」


「こいつらの件で、教師陣や生徒達の考えが改められたら良いんだがな」


その後、華蓮は六人の生徒とその親御さん、担任の教師を交えて話し合いをしていた。

遥冴はその間、同じ部屋でそれを眺めていた。


「今日は大変だったな?」


「あぁ、久しぶりに疲れたよ」


「んじゃ、俺は帰るぞ。これ以上の外出はエリーが不貞腐れるからな」


「わかった。また何かあったら呼ぶから、それと学力向上の件よく考えといてくれよ」


「はいはい、わかったよ」


帰り道、遥冴は疑問を感じていた。


「昨日、今日…その前の襲撃。いやぁ、立て続けに起こりすぎて困っちゃうね」


CountryFestivalの襲撃の件を境に遥冴やその周りで迷惑行為や色々な事が立て続けに起こっていた。


遥冴や華蓮、全員の頭に浮かぶのは原因であろう根本の存在……重國。


「ここまでがシナリオ通りってのも全然あるんだよなぁ……むしろヤツならその可能性の方が高いか」


自宅に帰っても遥冴は色々考えながら、寝ずに研究室にこもった。

もちろん、エリー達が眠り静かになったタイミングで___。



「うー! 起きてぇえええええ!」


次の日エリーという目覚まし時計で遥冴は目を覚ました。どうやら、疲れていつの間にか寝てしまっていた様子。


「エリー……今日も元気ね。どしたの?」


「今日さ、今日さ! 今日はね、一緒に水族館に行こう!」


エリーの突然の発言に懐かしさを感じながら微笑む遥冴。


「わかった、かおりからも許可はもらってるんだろ?」


「うん! みんなで水族館だー!」


エリーは騒ぎながら研究室を出ていく。


「相変わらず、元気だなぁ。仕方ない準備するか」


遥冴も後に研究室を出て自室に向かう。


「みんなおはようー」


「おはようございます、遥冴君」


「水族館少女は寝てるのね」


「昨日、寝る前に水族館に行くことを考えたら眠れなかったと」


「行けると決まってる訳じゃないのにな、まだまだ子供か」


「年齢で言えば、もう成人はしてるはずですけどね」


「天使の年齢の数え方はわからん」


自室に向かう途中遥冴、ソファーで華蓮に膝枕されながら眠っているエリーを横目に朝の水分を摂る。


「……そいえば、失市はどこに?」


「遥冴君の後ろにいますよ」


「あれ?……いつの間に引っ付いてたのかな?」


遥冴の背中にピッタリと引っ付いた失市は、遥冴の左肩から顔を覗かせる。


「おはようから」


「おやすみまで? …ライオンじゃないんだから」


「…………今日は水族館」


「…そう、エリーの要望でね」


ワンラリー無かったことになったが、遥冴は失市の質問に答える。


「水?」


「うん、水族館だからね。水槽に水張って魚を展示してる所」


「あそこ、暗いから嫌」


「失市は二度目かな? まぁ我慢してくれよ、エリーの頼みたんだから」


「仕方ない、エリーの為」


「ありがとう、着替えてくるからかおりの所行ってきな」


「分かった」


失市はかおりの横に座ってエリーの頭を撫でる。

その様子を確認してから遥冴は、自室にやっと入る。


「…………お前らはなんでここにいるだ? 和柚音、葉瀬」


自分の部屋にいる二人の友人に戸惑う。


「かおりさんが入れてくれたよ?」


「うんうん、そしたら部屋で待ってるといいって」


このふたり、和柚音と葉瀬は遥冴の学生時代からの友人。昨日、訪れた華蓮が学園長を務める学園の卒業生なのだ。


「また、勝手な……まぁいい。今日ここに居るってことは、水族館に付き合ってもらうからな?」


「「水族館?」」


遥冴は二人の友人を巻き込んで水族館に共に向かう事になるのだった___。


カラーコード:緑色

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