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滅亡寸前の小国王、戦争史オタクにつき逆転を狙う  作者: 膝栗毛


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大陸会議

引き継ぎお楽しみください

第二十七章 大陸会議

ノルトガルドとの戦いから一年後。

リヒテンブルク王国は、前例のない提案を大陸諸国に発信した。

「大陸平和会議の開催」

エドヴァルトが起草した招待状は、すべての主要国に送られた。

『大陸の諸国に告ぐ。

我々は、この百年間、絶え間ない戦争を続けてきた。

だが、戦争は何をもたらしたか?

死、破壊、そして貧困。

もはや、この連鎖を断ち切るべき時だ。

ここに、大陸平和会議を提案する。

すべての国が集まり、恒久的な平和の枠組みを議論しよう。

リヒテンブルク王国国王 エドヴァルト』


王宮の会議室。

重臣たちは、困惑していた。

「陛下、これは……あまりに理想主義的では?」

ハインリヒ(六十八歳)が、心配そうに言った。

「平和会議など、実現するはずが」

「するかどうかは、わからない」

エドヴァルトは、冷静に答えた。

「だが、試す価値はある」

「しかし、諸国が本当に来るでしょうか?」

「来るだろう」

エドヴァルトは、地図を指差した。

「ハプスブルク帝国は、内戦で疲弊している。平和を望んでいる」

「グラウバルト王国は、我々の同盟国だ。必ず来る」

「ノルトガルドも、新公は現実主義者だ。戦争より貿易を選ぶだろう」

「では、他の小国は?」

「彼らこそ、平和を切望している」

エドヴァルトは、確信を込めて言った。

「大国は戦争で領土を奪える。だが、小国は一度の敗北で滅亡する」

「だから、小国こそが――この会議を支持するはずだ」


三ヶ月後。

リヒテンブルク王国の首都に、各国の代表が集まり始めた。

ハプスブルク帝国:皇帝カール五世(三十四歳)、自ら出席

グラウバルト王国:国王カール四世(五十三歳)

ノルトガルド公国:新公ゲオルク(三十一歳)

南方諸都市同盟:代表十二名

その他、大小二十の国家と自治都市

大陸史上、最大規模の国際会議だった。


会議初日。

特別に建設された大会議場に、各国代表が集まった。

エドヴァルトが、議長として立ち上がった。

「大陸の皆様。ようこそ、リヒテンブルクへ」

「本日、我々は歴史的な一歩を踏み出します」

エドヴァルトは、会場を見渡した。

「この会議の目的は、一つ。恒久的な平和の実現です」

「具体的には――」

彼は、事前に配布された文書を示した。

「大陸平和条約の締結を提案します」

会場が、ざわめいた。

「条約の内容は、以下の通りです」

エドヴァルトは、読み上げた。

「第一条:締約国は、相互の領土を尊重し、侵略戦争を放棄する」

「第二条:紛争が生じた場合、まず外交交渉、次に仲裁、最後に本会議での調停を経る」

「第三条:条約違反国には、全締約国が経済制裁を課す」

「第四条:自由貿易を促進し、関税を段階的に引き下げる」

「第五条:定期的に会議を開き、条約の履行を確認する」

読み上げが終わると――

ハプスブルク皇帝カール五世が、立ち上がった。

「エドヴァルト王。素晴らしい提案だ」

「我が帝国は、この条約を支持する」

次に、グラウバルト王カール四世も立った。

「我が国も支持する」

だが――

ノルトガルド新公ゲオルクが、異議を唱えた。

「待て。第一条の『侵略戦争の放棄』だが――」

「自衛戦争は、どうなる?」

エドヴァルトは、予想していた質問だった。

「自衛戦争は、当然認められます。ただし――」

「それが本当に自衛かどうか、本会議で判断します」

「つまり、自衛と称した侵略を防ぐ、と」

「その通りです」

会場が、再びざわめいた。


会議は、三日間続いた。

各条項について、激しい議論が交わされた。

特に問題となったのは――

「第三条の経済制裁は、強すぎる」

「いや、罰則がなければ条約は無意味だ」

「第四条の関税引き下げは、我が国の産業を破壊する」

「保護主義では、大陸全体が貧しくなる」

エドヴァルトは、議長として――

冷静に、公平に、議論を進めた。

対立する意見を整理し、妥協点を探す。

時には休憩を挟み、個別に説得する。

そして――

三日目の夕刻。

ついに、合意に達した。

「大陸平和条約、採択!」

会場に、拍手が響いた。

二十三の国家と都市が、この条約に署名した。


調印式。

各国代表が、次々と条約文書に署名していく。

最後に、エドヴァルトが署名した。

その瞬間――

会場が、総立ちになった。

拍手、拍手、拍手。

「平和だ!」

「ついに、平和が!」

エドヴァルトは、その光景を見て――

涙が溢れそうになった。

だが、堪えた。

(まだだ。これは、始まりに過ぎない)

(条約を作るのは簡単だ)

(難しいのは、守らせることだ)


その夜、祝賀会。

各国代表が、友好的に交流していた。

カール五世が、エドヴァルトに近づいてきた。

「エドヴァルト王。貴殿は、歴史を変えた」

「いえ、まだわかりません」

「謙虚だな」カール五世は笑った。「だが、これは間違いなく偉業だ」

「今日署名した国々が、本当に条約を守るか――それが問題です」

「その通りだ」

カール五世は、真剣な顔になった。

「だからこそ、我々大国が率先して守らなければならない」

「ありがとうございます」

二人は、グラスを合わせた。


だが、その祝賀会の片隅で――

不穏な会話が交わされていた。

ある小国の代表が、別の代表に囁いた。

「この条約……本当に機能すると思うか?」

「わからん。だが、署名しなければ孤立する」

「そうだな。とりあえず署名して、様子を見るか」

「破っても、バレなければいい」

この会話を――

エドヴァルトは、遠くから見ていた。

聞こえてはいないが、雰囲気でわかる。

(やはり……)

(楽観はできない)


会議終了から一週間後。

各国代表は帰国した。

エドヴァルトは、執務室でフランツと話していた。

「陛下、本当に――この条約は機能するでしょうか?」

「わからない」

エドヴァルトは、正直に答えた。

「だが、何もしないよりはマシだ」

「条約があれば、少なくとも――戦争を始めるハードルは上がる」

「それだけでも、価値がある」

フランツは、頷いた。

「では、次は?」

「条約の履行を監視する機関を作る」

エドヴァルトは、新しい文書を示した。

「大陸平和委員会、だ」

「平和委員会?」

「各国から代表を出し、常設の組織にする」

「紛争が起きたら、即座に調査し、調停する」

「なるほど……」

「そして」エドヴァルトは続けた。

「我が国が、その本部を提供する」

「リヒテンブルクに、ですか?」

「ああ。我々は小国だ。大国に比べて、中立的だと見なされやすい」

エドヴァルトは、窓の外を見た。

「この国を、大陸の平和の中心地にする」

「それが、俺の次の目標だ」


その頃、ハプスブルク帝国。

カール五世は、側近と話していた。

「陛下、リヒテンブルク王の提案――平和委員会ですが」

「支持する。すぐに、我が国の代表を派遣しろ」

「しかし、これは帝国の主権を制限することに――」

「構わん」

カール五世は、きっぱりと言った。

「エドヴァルト王は、本気で平和を実現しようとしている」

「ならば、我々も協力すべきだ」

「それに――」

カール五世は、地図を見た。

「平和になれば、帝国も豊かになる。戦争は金がかかる」


一方、ノルトガルド公国。

ゲオルク新公は、苦々しい顔をしていた。

「平和条約など……我が公国の拡張を妨げるものだ」

「しかし、署名してしまった以上……」

側近が言うと、ゲオルクは冷笑した。

「条約など、破ればいい」

「ですが、経済制裁が――」

「バレなければいい。それに――」

ゲオルクは、別の地図を見た。

「東方には、条約に参加していない国がある」

「そこを攻めれば、条約違反にはならない」


半年後。

大陸平和委員会が、リヒテンブルクに設立された。

各国から派遣された代表、二十三名が常駐する。

初代委員長には――

引退したオズヴァルト・フォン・ブライテンベルク(六十九歳)が任命された。

「オズヴァルト卿、体は大丈夫か?」

エドヴァルトが心配すると、老騎士は笑った。

「まだまだ、働けますよ」

「剣を振るうのは引退しましたが、頭はまだ使える」

「頼む」

エドヴァルトは、老友の肩を叩いた。

「この委員会が、本当に平和を守れるかどうか――それは、貴殿の手腕にかかっている」

「わかっております」


そして、最初の試練が――

すぐに訪れた。

東方の小国、シルヴァニア公国が――

隣国のトランシルヴァニア伯領に侵攻したのだ。

両国とも、平和条約の締約国だった。

「緊急会議を招集する!」

オズヴァルトの声が、委員会に響いた。

各国代表が、緊急招集された。

「シルヴァニア公国は、条約第一条に違反した」

「即座に、撤退を求める。応じなければ――」

オズヴァルトは、厳しい目で言った。

「経済制裁だ」

委員会は、全会一致でシルヴァニアへの経済制裁を決議した。

すべての締約国が、シルヴァニアとの貿易を停止する。

一ヶ月後――

シルヴァニア公国は、撤退した。

そして、公式に謝罪した。

「平和条約を尊重する」と。


この結果を受けて――

大陸中に、衝撃が走った。

「条約は、本当に機能する!」

「平和委員会には、力がある!」

リヒテンブルク王国の国際的地位は、飛躍的に向上した。

もはや、小国ではない。

大陸の平和を守る、重要な国として認識されるようになった。


その夜、エドヴァルトは家族と夕食を取っていた。

マリア王妃、息子フリードリヒ(七歳)、そして――

二年前に生まれた娘、ソフィア(二歳)。

「父上、今日学校で習ったよ!」

フリードリヒが、興奮して言った。

「大陸平和条約のこと! 父上が作ったんだって!」

「ああ、みんなで作ったんだよ」

「すごい! 僕の父上は、英雄だ!」

エドヴァルトは、苦笑した。

「英雄じゃない。ただ――」

彼は、息子の目を見た。

「平和を守りたかっただけだ」

「平和……」

フリードリヒは、真剣な顔で言った。

「僕も、大きくなったら、平和を守る!」

「そうか」

エドヴァルトは、息子の頭を撫でた。

「ならば、勉強だ。平和を守るには、知恵が必要だ」


その夜、執務室。

エドヴァルトは、一人で考えていた。

(平和条約は、機能した)

(だが、これで終わりじゃない)

(まだ、条約に参加していない国がある)

(東方の諸国、北方の遊牧民族、南方の島国――)

彼は、世界地図を広げた。

この大陸の外にも、世界はある。

そして、いずれ――

その世界とも、関わることになるだろう。

(だが、今は――)

エドヴァルトは、地図を畳んだ。

(今できることを、一つずつやるしかない)

窓の外では、月が輝いていた。

リヒテンブルク王国は――

もはや、滅亡寸前の小国ではなかった。

大陸の平和を支える、重要な国になっていた。

だが、エドヴァルトは忘れない。

この国が、どこから始まったかを。

三千の軍で、一万の敵と戦った日を。

民と共に、生き残りを賭けた日々を。

(だから――)

(慢心してはいけない)

(平和は、守り続けなければならない)

彼は、次の計画を書き始めた。

「教育の国際化」

「技術の平和利用」

「文化交流の促進」

平和を、戦争で守るのではなく――

教育、技術、文化で守る。

それが、エドヴァルトの新しい戦いだった。

羽根ペンが、音もなく走る。

リヒテンブルク王国の、新しい歴史を書くために。

次回もお楽しみに

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