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トレジャーハンター三人娘の内緒事~強化魔法?そんなの知らないんだけどっ  作者: あんそに
第一章 ~ トレジャーハンターの日々 ~

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エタルナの秘密と、これから

「出血、止まった?」


「うん、でも…一応、包帯は巻いたままにしておくわ。」


エタルナがおかしくなってから、しばらくが経過した。


遠くで、モンスターの鳴き声が反響する。


心臓のドキドキは、まだ収まらない。

それでも……怪我の具合は確認しなきゃ。


バーニングウルフから受けたユミエルの傷も塞がった様子。


一体、何が起こったのかしら?


突然、エタルナが狼のような形相になって…狂ったようにモンスターを倒したかと思ったら、私にまで攻撃を加えて来た。


それも凄い力で…もし"球体"の強化魔法?が無かったら私もヤラれていたかも知れないわ。


「う…うぅ…」


離れた位置で倒れていたエタルナからうめき声が聞えた。


「ユミエル…一応、下がって。」


座っていた岩から立ち上がり、ゆっくりとエタルナに近づく。


すると、エタルナは上体を起こして、私の方を見た。


うん…いつもの表情だ。


「2人共…ごめん。」


小さな声で謝罪の言葉を口にするエタルナ。


すぐにあやまった事から察すると、狼のような状態を、どうやらエタルナ自身も分かっていたって事ね。


「エタルナちゃん、大丈夫?」


後ろから恐る恐る近づいたユミエルが声をかけた。


「うん…もう、大丈夫。」


私達からは目をそらしながら、エタルナはそう答える。


そして小刻みに震えている…置かれている状況に怯えているのか。


すぐ近くにいるエタルナが、まるで知らない人かのように感じる。


「えっと…さっきのは一体…」

「何があったのか説明できる?」

少し迷ってから、私はエタルナに問いかけた。


「うん…でも、詳しくは分からないんだ。」


そう言うと、エタルナはゆっくりと私達の方を見た。


「分かる範囲で良いよ。」


ユミエルが優しく声をかけると、エタルナは言葉を選ぶかのように少し考えた後、口を開いた。


「バーサーカー。」


「…え?バーサーカー?」


思わず聞き返した馴染みのない言葉。


「簡単に言うと……自我を抑えられない戦士になる。」

「え? 自分をコントロールできないってこと?」


ユミエルの顔を見てみたが、同じく…よく分からないといった反応をしている。


「狂った戦士っていう職業みたい。」


え?職業??


まるで狼が暴れていたかのような姿だったエタルナ。


あれが職業だって言うのか?


「職業って言うと…剣士や魔法使いみたいな?」


私が何も口に出せずにいると、ユミエルが代わりに質問する。


「うん…長老がそう言っていたんだ。」


長老?エタルナが産まれた村の長老の事かな?


「もしかして、エタルナの出身の村の人達は全員、バーサーカーっていう職業なの?」


言いたくない事かも知れないけど、聞かないと何も分からない。


「いや…あたしだけ。」


そうなんだ…村に一人だけって、辛い話かも。


そう思いながら、じっとエタルナの顔を見つめた。


「その…さっきの状態だと、記憶は無い訳?」


ユミエルの問いかけにエタルナは小さく頷いた。


「何ていうか…少し離れた頭の上から自分の行動を見ている感じ。」

「止められないんだ。」

「さっきはごめん、アンジュ。」

そこまで言うとエタルナは泣き出してしまった。


「すんごい強かったね、エタルナちゃん!」

あわてた様子でユミエルが、そう伝える。


確かに強かったけど…あの様子じゃとても戦闘には使えない。


ユミエルが気を遣って言っているのは間違いない。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


エタルナは泣きながら、謝罪の言葉を繰り返す。


謝り続けるエタルナを見て、思う。

訳の分からない力を持っているのは、私だけじゃなかったんだ。

私が彼女を守らなきゃ…

この球体の力は、そのためにあるのかも知れない。


「大丈夫よ!私は全然、何ともないわ!」

「エタルナの攻撃なんて、へっちゃらよ。」


本当はギリギリで受け止めたエタルナの攻撃。


そう伝えると、エタルナは泣き止んで、ゆっくりと顔を上げた。


バーサーカーになっていた時の狼のような顔とは全く違う。

くちゃくちゃになって何とも弱そうな表情…いつものエタルナだ。


「急にだったよね。バーサーカー化するには、条件でもあるの?」


「仲間の血…」


「え?ウチが出血したから?」


「多分…だけど。前もそうだったから。」


仲間が出血すると、エタルナはバーサーカーとなり自我を失って暴れ出すって事か…


「前もって…よくある事なの?」


「前は…村で。」


私の質問に答える形でエタルナはゆっくりと話し始めた。


「以前、あたしの村はモンスターの集団に襲われた事があるんだ。

「その時、お父さんも襲われて血を流して…。」


「それを見た時、初めての感覚だった。」

「自分の血が沸き立つような感じになって。」

「モンスターがとても憎くって…睨んで…」


「その時、あたしは初めてバーサーカー化した。」

「狂ったようにモンスター達を倒しまくった。」

「何匹も…何匹も。」


「でも、止まんなくて…」

「モンスターだけじゃなく村人まで、傷つけてしまった。」


ここまで言うと、エタルナは肩を震わせ始めた。


ユミエルが隣に座り、そっとエタルナの肩に手を回した。


「落ち着いて、ゆっくりで良いのよ。」


私がそう言うと、エタルナはふたたび話し始める。


「あたしのおかげで村は助かったって話になった。」

「だけど…村人みんなのあたしを見る目が変わって…」

「凄く怯えているのが分かるんだ。」

「家族からでさえも…」


「だから…あたしは村を出た。」

「目的も無く彷徨い歩いてこの町にたどり着いた…」


「今まで内緒にしていてゴメンナサイ。」


あぁ…エタルナ、辛い経験をして来たんだな。


「う…うぅ…」


って、ユミエルが泣き始めちゃったわ。


そして、エタルナもふたたび涙を浮かべ始める。


私も泣きそうになったけど、必死でこらえた。


ダンジョン"イグニタス"の第2層の階段付近で泣く3人娘。


他のトレジャーハンターのパーティーがヒソヒソと話をしながら通り過ぎて行くのが分かる。


「エタルナ…あやまらなくて良いからね。私は大丈夫だから。」


「エタルナちゃん、話してくれて有難うね。辛かったね!」


私とユミエルが、そう伝えるとエタルナはやっと泣き止んだ。


「うぅ…2人共、ありがとう…」


「でも、バーサーカー化する事は内緒にしておいた方が良いかもね。」


「そうね、あのギルドマスターに知られちゃったら追放されちゃうかも。」


「アンジュとユミエルは、あたしの事…怖くない?」


そう言われて、一瞬ハッとなった。

けど…そんな事でエタルナと離れ離れになるのは嫌!

その気持ちの方が強くなった。


「大丈夫!アンジュちゃんが頑張ってエタルナちゃんを抑えるから!」


「おーい、他力本願かーい!」


「ふふふ、相変わらず、漫才みたいだな…2人は。」


エタルナが笑うと、今度は3人で笑い合った。


ダンジョン"イグニタス"の第2層の階段付近で笑う3人娘。


他のトレジャーハンターのパーティーがヒソヒソと話をしながら通り過ぎて行くのが分かる。


「とにかく、怪我をしないように気をつけないとね!」

ユミエルが言うように私達が血を流さなければ問題ない筈。


今回の出来事から、エタルナが単純な怖がりでは無いような気がした。


エタルナが一番怖いのは…自分自身。


それでも、前に進もうとする。

その強さを、私はちゃんと見ていた。

~~~~~~~


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