謎の片鱗と、魔法使いの決意
町の南門にある櫓の上へと登る。
ダンジョン"イグニタス"の方向がよく見える位置。
この町の周囲を囲む壁は木材を組み合わせて作られている。
そしてこの南門の上に建つ櫓は、横に広く作られていた。
すでにギルドマスタードワルクと、何人ものハンターが陣取っていた。
「ドワルクさん!」
「お前らか!」
「モンスターが溢れ出てきたって本当ですか?」
「分からん……あれをモンスターと呼んで良いものなのか。」
ドワルクが見つめる方向。
そこにうごめく黒い何か……
「え?人??」
「そうだ……人に見える。
情報によると、悪い事に装備品を身に着けているようだ。
そして、ハンターの一人がヤラれてしまった。」
「ちょっ、それどう言い意味ですか??」
「悪い発想で答えると……未知なる敵の軍勢だ。」
「軍勢!?そんな……憲兵も居ないこの町に。」
「俺の予想では、王都はこの情報を察知して憲兵達を戻した……」
「それじゃ、この町は見捨てられたって事じゃないですか!?」
「俺の予想が……正しければな。」
「―――。」
両隣に立つユミエルとエタルナも声が出ない。
沈黙の中、ドワルクが大きな声を上げる。
「とにかく……町に入られたら終わりだ。
憲兵が居ない今、俺達トレジャーハンターの出番だ!
必ず、町を守る!!」
「おーーーー!」
櫓の上に集まったハンター達が応える。
「守るぞ…」「絶対に守る!」「やってやる!」
周囲からは自分自身を鼓舞するような声が聞こえてくる。
「お前達は町の人達を落ち着かせてくれ……
万が一、どうしようも無い状態になった時は、
動ける町の人達を先導して逃げろ!」
笑顔で告げるドワルク。
私達に気を遣ってくれている事が分かる。
「いえ…私達も戦います!」
ユミエルとエタルナも頷いた。
「そうか……無理はするなよ。」
私の言葉を聞き入れてくれたドワルク。
猫の手も借りたいって言ってたからね……
「まずは、櫓の上から弓矢と魔法で迎撃。
200メートルを切ったら、門を空けて突撃だ。
いいな!」
私達は、まずはユミエルの魔法ね。
「ユミエル…調子はどう?」
「絶好調よ。」
ギュッと杖を握り締める。
言葉と裏腹にその表情からは、余裕など感じられない。
「エタルナ、100メートルラインを切ったら一緒に行くわよ。」
「あぁ、出し惜しみは無しだ……最初から全力で行く。
盾を使えないのは残念だけどな。」
ニコリと笑うエタルナ……最初から、バーサーカーになるって事ね。
私も…右肩で落ち着かない様子の球体に話しかける。
「イシュエス、頼んだわよ。」
《――無茶はダメ》
「あら、優しいところもあるのね。」
《―――。》
そう言うと、イシュエスは無言になった。
敵の軍勢が近づき、その異様な姿が徐々に分かる。
黒い甲冑のような物を身に着けている様子…
あながちモンスターと言えなくもない。
100体くらいいるだろうか…
砂煙と共に、地響きのような音が聞こえてくる。
「――え?」
思わず口を手で覆う。
一体、どういう事なの??
ダンジョンから出てきた軍勢…
その右肩には……球体が浮かんでいた。
「イシュエス…あれは何?どういう事!?」
《―――。》
「黙ってちゃ分からないでしょ!」
大きな声を上げると、周りのハンター達が不思議そうに見てくる。
「アンジュちゃん、落ち着いて。」
「何があった…」
ユミエルとエタルナは、何かを察したのだろうか、
冷静に問いかけられる。
「あの軍勢の一体一体、右肩に球体が浮かんでいる。」
「ちょっ……」
ユミエルとエタルナは軍勢を見つめた。
「ウチには見えない。」
「あたしにも…だけどあるんだな。」
「うん、間違いないわ。」
《――あれは》
イシュエスの言葉が脳に響く。
《兵器》
え!?
《インテリジョンス兵装》
「兵器?
――ねぇ、あなたも…あれと同じなの?」
《ボクは》
《――失敗作》
「え?失敗作??」
《……そう》
《失敗作》
手が…震える。
心配そうに見つめていたユミエルが私の手を握った。
エタルナは、私の左から抱きしめた。
――手の震えが止まる。
「打ち方!!始め!!」
ドワルクの大声と同時に弓矢が放たれた。
何十本もの矢が放物線を描きながらダンジョンの軍勢へと届く。
軍勢の右肩……兵器インテリジェンスが光を増す。
ある者は盾で、
ある者は剣で、
また、ある者はサラリと矢を避けた
「ちっ!次は魔法師だ!」
ドワルクの指示を受け、魔法使い達が前へと出る。
――火魔法
――水魔法
――風魔法
――土魔法
何発もの魔法が放たれた!
また…光る球体。
弓矢と同じように、剣や盾で弾き飛ばされる。
「クソっ!!」
ドワルクは、苛立ちを隠せない様子。
「前みたいに倒れる事は無いと思う…
でも、しばらく動けなくなるかな。
二人共、あとよろしくね。」
ユミエルはそう言うと、前へと歩み始める。
「うん…そうね…使うしか無いわね。」
「ユミエル……頼んだ。」
「きっと…妹も……シャルルも見守っている。」
「何をする気だ?」
ドワルクに向かい笑顔を送るユミエル。
――大きく両手を広げる。
櫓の上は静まり返り…
ユミエルの呪いの杖の宝石部分が強い光を放つ。
「グラビデ…」
空気が揺れ始めると共に…
私達が立つ櫓も揺れ始めた…
草原にあった大きな岩がゆっくりと宙へと浮かぶ。
周りにある岩、小さな石までもが一斉に上った。
「な…。」
ドワルクが小さく声を発する。
――岩石達が軍勢へと突き落とされた!!
ズドドーーン!!!
轟音と砂煙が巻き起こる。
ハンター達は、微動だにせず沈黙が広がった。
「お前……何者だ!?」
驚くドワルクの声を聞き終えると…
ユミエルは座り込んだ。
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