得られた信頼と、異形との戦い
15階層。
正直に言って順調すぎる展開。
すべてはザンブルグさんの的確な指示のおかげ。
イリアさんのサポート力も大きい。
私達三人はその指示の下、守られるように戦っていた。
「よし、ここでテントを張ろう。」
ダンジョン内に居ると時間が分からない。
ザンブルグさんが言うには休憩が大切だと言う。
「まずは俺が見張りをする…
お前達は、寝ろ。」
そう伝えると、テントを背に座り込んだ。
「いつも、あんな感じなんですか?」
隣で横になったイリアさんに尋ねた。
「うーん…昔はもっと、しゃべらなかったかな。」
「えー、今よりもですか?」
「そだよ、それが……
アンジュのお父さんが何度も話しかけてね。
最初は、ザンブルグは面倒そうにしてたけど、
そのうちに笑うようになってね……
楽しかったな……エターナルインテンション。」
イリアさんは、どこか遠くを見ているかのよう。
「あの……どうして解散しちゃったのでしょうか?」
「このダンジョンの攻略失敗が原因だよ……
あれ以来、ボクは一人で森暮らししているのさ。」
日付が変わったとの事。
何体ものモンスターを倒しながら下へと進む。
20階層――それは深層部と呼ばれる層。
「この階層だったね…」
「あーそうだ…奴が居る筈だ。」
イリアさんとザンブルグさんの声に反応するかのように右肩に浮かぶイシュエスが震えた。
《――居る》
いつにも増して冷たい台詞に背筋が寒く感じた。
「あの……奴というのは?」
問いかけるとザンブルグさんは、私の目を見つめた。
「キメラだ……」
え?キメラ?
「アンジュちゃん、キメラって?」
「強いモンスターなのか?」
私はユミエルとエタルナに向き直した。
「伝説級のモンスターね……」
「二つの頭と、蛇の尻尾を持つモンスター。
アンジュちゃんのお父さんが最深部へと転落するきっかけとなった相手よ。」
お父さん……
一緒に暮らしていた時の笑った顔を思い出す。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
急に呼吸が激しくなる。
「アンジュちゃん、しっかり!」
「大丈夫!?」
ユミエルとエタルナが私の肩を支えた。
《状態異常…解除》
「イシュエス……大丈夫。状態異常じゃないから。」
そう伝えると、イシュエスは冷たくなった。
面白いわね……
なんだか気が軽くなり、少し笑う事が出来た。
「大丈夫そうだな…進もう。」
「あの日と同じなら、もうすぐね。」
「―――。」
無口になる五人。
「奴ね……」
イリアさんが指を差す方向を見る。
岩の上に居たモンスターは、異形の姿をしていた。
二つの顔……山羊と……ライオン??
しかも……翼が生えている。
「何なんだアレは…」
エタルナは焦ったように呟く。
ユミエルは、何も言わずにギュッと杖を握った。
「炎を吐くのと…尻尾は毒。あと、あの翼の風圧が凄いから気をつけて!」
イリアさんの助言。
「俺たちは、アイツを倒さなければならない。
アンジュ、ユミエル、エタルナ…頼むぞ。」
ザンブルグさんはキメラを見つめながら伝える。
――名前!?
私達は顔を見合わせた。
「はい!」
「先制攻撃だ!俺とエタルナは前に!
イリアとユミエルは攻撃!アンジュは待機!」
「おうよ!!」
「サンダーボルト!!」
私達に気づいたキメラは、ヒラリと空中を舞い、
イリアさんとユミエルの攻撃をかわした。
「うぉーーーー!!」
地上へと降りたキメラへと向いザンブルグさんが走り出す。
エタルナもそれに続いた。
ドンッ!!
激しい衝突音。
キメラはいなすようにザンブルグさんの盾を受け止めた。
私もキメラに向い走り出す。
《感覚二倍…筋力二倍》
何も伝えていない。
けど…イシュエスは支援を実行。
エタルナも盾をぶつける。
ザンブルグさんが山羊の頭を。
エタルナがライオンの頭を。
それぞれが抑える!
「危ない!!」
尻尾がエタルナの肩へと伸びる!
それを私は剣で薙ぎ払った!
「アンジュ!そのまま蛇を倒せ!」
ザンブルグさんの指示!
「はい!」
剣を左右に動かす!
感覚二倍によって、研ぎ澄まされる……
が、蛇の尻尾は自在に動き、捉えられない。
バンッ!!
盾役二人の体が吹き飛ばされた!
ザンブルグさんの巨体が地面へと落ちる。
が……すぐに声を出した。
「イリア、ユミエル!攻撃!」
「ユミエルちゃん、私の弓に氷魔法を加えて!」
「え?はい!」
イリアさんが放った弓が固い氷結となりキメラを襲う。
ボゥーーーー!!
ライオンの口から炎が吐かれた!
弓はボロボロと崩れ落ちる。
「ダメか!」
「いや!それで良い!隙を作れ!」
ザンブルグさんはイリアさんに攻撃を続けるように指示。
体を起こすと、ふたたびキメラへと突進した。
エタルナも続く!
が……キメラは背中の翼を広げた。
その翼は、大きな風を巻き起こす!!
エタルナが抵抗するも……足元をすくわれた。
後ろへと吹き飛ばされる。
ザンブルグさんは何とか耐える。
「イシュエス……感覚を三倍に。」
《――分かった》
《感覚三倍…筋力二倍》
キメラがザンブルグさんに気を取られている今!
私は横から回り込み……
「やーーー!」
キメラの胴体に向けて剣を振るった!
キメラの頭……山羊の目が私を見た。
一瞬の出来事。
「何?体が……動かない。」
《――呪縛された》
え?呪縛??
お願い……動いて!!
心の中で念じるも、言う事を聞かない体。
《感覚…筋力…支援解除》
《状態異常……解除》
咄嗟のイシュエスの判断。
「――動く!!」
その時、
尻尾の蛇が……私に向かって伸びる!
「アンジュ!」
目の前に迫った蛇の首元に弓矢がかすめた!
イリアさん!!
急いで、後退。
危ない……もう少し、遅かったら……
「イシュエス……ナイス。」
《――集中、そのまま》
「うん!」
キメラは、翼を広げると……飛び立った。
そのまま空中にてとどまる。
「ウチの出番ね!ファイアーアロー!!」
ユミエルの炎の矢が飛ぶ。
イリアさんも魔法に合わせるように弓を放つ。
が……山羊の目が光った瞬間。
炎の矢と、イリアさんの矢が消えた……
「くっ!あんなの……あったっけ?」
イリアさんが言った時、山羊の顔がニヤリと笑ったような気がした。
キメラは……翼を動かすと……急降下。
その先には……イリアさん!!
ライオンの口が開く……
ヴォォォォォーーー!!
放たれる炎!!
バンッ!!
ザンブルグさんがイリアさんの前に立った!
その炎の攻撃を防ぐ!
キメラは……方向を変えた。
ふたたび口を開くライオン。
あの方向は……ユミエル!!
ヴォォォォォーーー!!
吐かれた炎を防ぐ盾は、エタルナ!!
山羊は怪訝な顔をすると…私を見た。
キメラの翼がふたたび大きく波打つ。
「くっ!!」
凄まじい風圧が私を襲う…
「ダメ……」
足を踏ん張る……
《――筋力二倍》
ぐっと力を込めて岩に足をかける。
が……岩が崩れ、
吹き飛ばされた……
ダンジョンの天井が流れるように目の前を過ぎる。
しまった……崖から落ちるかも……
そう思った瞬間……腕を掴まれた。
「エタルナ!」
《――今回は…保持》
――ここで、お父さんが。
《――優先対象:アンジュ》
腕を掴むエタルナの手に力がこもる。
崖下は吸い込まれるような暗闇……
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