重なる心と、克服の手前
リュウリーンの町から南にあるダンジョン"バサラ"
ここがお父さんが亡くなった場所…
胸が締め付けられるように苦しくなると、
球体"イシュエス"も熱を帯びた。
《――大丈夫》
「はは…キミに励まされる時が来るなんてね、」
お父さんも、このイシュエスに励まされながら戦ったのかな。
お父さんが眠るダンジョンの前で思いを馳せる。
"バサラ"一階層、
その内部は熱気を帯びていた。
「熱いわね。ユミエル…水魔法、お願い。」
「太陽光が無いんだから、無駄遣いさせないでよ。」
「光を動力源にする杖なんて珍しいね。」
イリアさんが不思議そうにする。
「ミランダさんにも言われました、珍しいって。」
「へー、あの魔法杖ヲタクでも珍しいんだ。」
「じゃぁ、ボクもその杖を使ったら魔法を放てるのかな?」
「えーっと…魔力が少しでも無いと難しいかと思います。
魔力が足りない分をこの杖が補う感じです。」
「へー、なんだか難しい話だね。」
「ちょっと待て…」
突然、ザンブルグさんが口を挟んだ。
「足りない分を杖が補う?何の代償も無しにか?」
「………。」
ユミエルは困ったような顔をしている。
「何故、黙る?」
流石、ザンブルグさん……何かを悟ったように詰め寄った。
「生命力を吸い取るって話……です……」
「なっ!」
イリアさんが大きな声を上げる。
……驚くのも無理は無い事かも知れない。
「なんて怖い杖を使っているの!!」
続けて言うイリアさんの声は叫び声となっていた。
ザンブルグさんは額に手を当てて怪訝の顔をしている。
「キミ達も!どうして、こんな杖を使わせているの!」
イリアさんが私に向かって投げかける。
もう、それは怒鳴り声に等しい。
「えっと…その杖は、ユミエルの大事な相棒だから。」
説得力が無い台詞だとは分かっている。
でも、今まで一緒に旅をして来た私には、ユミエルが杖を思う気持ちが分かる。
エタルナも声を出す。
「強い魔法は、使わせない…あたしが守る。」
悲痛のような叫び声。
「まぁ、落ち着け。」
ザンブルグさんが割って入った。
「今は、このバサラの攻略が最優先だ。
ここを出た後に議論を交わそう。」
イリアは少しふくれっ面となったが、ブツブツと何かを言いながら前を向いた。
まだ不満がありそうにしている。
「強い魔法を゙使うと生命力の減少が激しいのか?」
「はい……」
「そうか、分かった。極力使うな。」
ザンブルグさんの言葉に、ユミエルはゆっくりと頷いた。
ユミエルに強い魔法を使わせない。
そう願って戦っているのに、結局またユミエルの力に頼っている。
ごめんね。と言えないまま、私は前を向いた。
三階層……少し厄介なモンスターが出現。
硬い鱗を持つモンスター"タートリアス"
その背中には亀のような甲羅も持っている。
「コイツ……私の弓が効きにくいんだよねー。」
「魔法も効力が低い。魔法使いは下がれ。」
そう言うと、ザンブルグさんが前へと出た。
「俺が引きつける。
うぉーーーー!!」
咆哮すると、モンスター"タートリアス"の目が、
ザンブルグさんを捉える。
ガンッ!!
盾と鱗が激突!
洞窟内に激しい音が鳴り響いた。
「今だ!行け!」
私が剣を、エタルナが槍を振るう。
「ダメ!槍…効かない!」
エタルナの攻撃はタートリアスの硬い鱗に阻まれた。
「イシュエス…力を貸して!」
《――筋力三倍》
え?三倍?
……力がみなぎる。
えっと……感覚二倍は??
《――無し》
いつも以上に力がみなぎるのが分かる。
剣を持つ腕が軽くなる。
動体視力は……変わらず。
ザンッザンッザンッ!
タートリアスの鱗に剣が通る。
三倍だけど…感覚は今までと変わらず…
なるほど、筋力三倍だけど、前の時より楽だわ。
エタルナも防御へと回る。
−−−−畳みかける!
強く足を踏み込み、タートリアスの鱗に連撃を積み重ねた。
「はぁ、はぁ…はぁ。」
「頑張ったね!アンジュちゃん!」
イリアさんに褒めて貰ったのは嬉しい。
けど……疲れたわー。
「このパーティー、
ちょうど五人組だし、エターナルインテンションを思い出すわ。」
え?お父さんが所属していたSランクパーティーに似ているって事??
「エターナルインテンションのパーティー構成は、
アタッカーである剣使いが二人、
そして、盾使い、魔法使い、弓使い。」
「このパーティーは、
アタッカー一人、盾使い二人、魔法使い、弓使い。」
確かに構成が似ている。
そうか…私がお父さんと同じ位置なんだ。
お父さんも、こうしてザンブルグさんの背中を見て、イリアさんの弓に助けられて、冒険していたのかな。
−−−−そう考えると感慨深い。
「でも…前衛は二人のが良いかなー、
そうだ、ザンブルグも前衛にってのはどうかな?」
「うーん。」
イリアさんの提案にザンブルグさんは唸りながら、チラリとエタルナの方を見た。
確かに……ザンブルグさんが私の横で戦ってくれると助かる。
だけど……さっきのタートリアス戦。
もし、盾役がザンブルグさんじゃなく、エタルナだったら…
エタルナも同じ事を考えたのだろう…
困惑した表情を浮かべている。
その時……地面が揺れた。
「地震だ!!」
天井から落ちてくる石を防ぐため、ザンブルグさんと、エタルナが盾を構える。
何個もの石が頭上にある盾にぶつかる音が続いた。
「結構、大きかったわね。
−−−−ありがとう、助かった。」
守ってくれた盾役二人にお礼を伝える。
「怪我は無いな……」
ザンブルグさんの背中はとても大きく見えた。
パーティーは、すでに十階層まで来ていた。
階層を進むにつれ、モンスターが強くなっていく。
「キラーファング!気をつけて!」
イリアさんの弓が動きの速いこのモンスターの足を止める。
ユミエルは待機。
杖の緑色は薄くなってきたから温存。
ドンッ!
ザンブルグさんが片手斧を振り下ろし、キラーファングを倒した。
「右!もう一体!」
イリアさんが叫ぶ声と同時に、エタルナが動き盾を構えた。
が、すり抜けるキラーファング。
「くっ」
しまった……
右腕にキラーファングの大きな牙がかすめた。
ポタポタと…血が垂れ落ちる。
「グルルルル……」
エタルナの表情が変わり、爪が伸びる。
姿勢を低くした次の瞬間……槍と盾を投げ捨てた。
「何だと!」
「−−−−バーサーカー!?」
ザンブルグさんと、イリアさんが驚きの声を上げる。
牙を伸ばしたエタルナ。
だが…今までとは目が違った。
「倒す!」
「え?」
バーサーカー化中に言葉を発した……
「アンジュ!左からだ!」
「あ、はい!」
エタルナは、右から襲いかかる。
その速さについて行けない。
キラーファングのスピードを上回るエタルナ。
ドンッ!!
モンスターの腹部に力のこもった一撃が入るとその体は宙に浮かんだ。
動きの止まったファングにトドメを刺すのは簡単な事だった。
バーサーカー化を解いていつものエタルナに戻る。
「エタルナ…やったね!」
ユミエルが喜びの声をあげる。
私も…嬉しい。
ずっと苦しんでいたエタルナ……ついにバーサーカー化のコントロールに成功したのね。
「なんだ…ピースは揃ってたじゃない。」
イリアさんが言うと、ザンブルグさんが尋ねた。
「バーサーカーなら、圧倒的な戦力だな…何故、今まで黙っていた?」
「ふっ!ふっ!」
変な声を出しながら、肩を揺らすエタルナ。
「ん?どうしたの?」
「エタルナちゃん?」
私とユミエルが問いかける。
「ごめん…バーサーカーのコントロールは出来るようになったけど、どうやってバーサーカーになるのか分からない…」
私…いちいち血を流さないとダメなのかしら…
読んでいただきありがとうございます!
ブックマーク、いいね、⭐︎評価お願いします!
誤字・脱字等、ありましたら、是非ご指摘くださいませ。




