内緒事の名前と、案内役
イリアがアンジュの球体を見つめる。
「何、隠れようとしているのよ、イシュエス!
ボクには見えるって事、知ってるでしょ!」
「イシュエスがここに居るのか?」
「だね…アンジュちゃんの左肩ね。」
「はははは。」
大きな声で笑うザンブルグさん。
「なるほど…娘の所に来てたか。
探していた物がまさかな。
そうか…よく考えたら…そうだな。」
一人、納得するように話すザンブルグさん。
「あの……何ですか?イシュエスって…」
「アンジュ…キミの肩に乗っている球体の名前だよ。」
「えーーー!」
驚きの声を上げてしまう。
名前があったんだ‥キミ。
ゆっくりと左肩を見る。
今まで誰にも見えなかった…
私にしか見えなかったこの球体。
「初めて見える人が現れた…」
「はっきりと見える訳じゃないんだ…
輪郭が揺らぐって感じかな。
ボクはね…目が良いんだ。」
「それで、ザンブルグさんも…この球体、
イシュエス?を探していたのですか?」
「あぁ、そうだ。ある目的の為にな…」
ザンブルグさんは少しの間、空を見上げた後、話を続けた。
「俺はイシュエスを持つ者とは戦えば分かると考え、探す旅をしていたのさ。
普段の動きと、イシュエスを使った時の動き…その違いは大きい。」
私に向き直して問いかける。
「だがアンジュ…以前、お前と訓練した時は何も感じなかったが?」
「はい……あの時は使いませんでしたから…」
「そうか……なるほどな。」
「それで…この球体、イシュエスは何なのですか?」
ザンブルグさんはイリアさんと目を合わせ……二人は頷いた。
「その球体イシュエスは、お前の父の相棒だった宝具だ。」
「えーーーーー!!」
またも驚きの声が出る。
「父の面影を感じて、お前の所に行ったのだろう。」
そうなんだ…私にお父さんの姿を重ねたのね…
肩に浮かぶ球体をジッと見つめる。
「それで……何故、ザンブルグさんはイシュエスを探していたのですか?」
私の問い掛けに答えを言うか躊躇しているようだった。
「ザンブルグは.あなたのお父さんを探そうとしているの。
その為にイシュエスに案内させようと探していた…」
イリアさんが代わりに答えを告げる。
ザンブルグさんは一瞬、制しようとしたが、そのまま続けさせていた。
え?お父さんを探す??
胸が熱くなる。
「えっと…お父さんはダンジョンの深層部で落下したと聞きましたが……」
「そうだ、その現場がこの町の南にあるダンジョン"バサラ"だ。」
「てっきり知ってここに来たのかとボクは思ったよ。
最初、会った時…知らないフリをしたのは、
君たちがダンジョンに行くべきで無いと考えたから。」
「私達じゃ…やはりダメですか?」
「やっぱり…聞くと行きたくなるわよね。
君たち三人じゃ駄目ね、まだ早い。
でも…ピースはほぼ揃ったね。」
「え?」
「君たち三人と…ザンブルグとボクって事。」
イリアさんはザンブルグさんに確認するように目を合わせた。
――そして、問いかける。
「五人でパーティーを組んで、アンジュちゃんのお父さんを探す。
案内役は…イシュエス。
どうする?」
そんなの…答えは決まっている。
私はエタルナとユミエルを見つめた。
エタルナは静かに盾を握りしめ、
ユミエルは杖をそっと抱き寄せた。
――そして
二人は何も言わずに頷いた。
左肩へと移動していた球体イシュエスは、右肩へと戻ると、
――今までで最も強い熱を帯びた。
《案内――する。》
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