始まりの場所と、盗まれた杖
船を降りた先。
そこはユミエルが生まれ街だった。
なるほど、ユミエルに乗船経験があったのも納得。
そしてここは、とても発展した大きな街だった。
珍しい品々が並ぶのを横目に見ながら歩く。
「この街にはお父さん、お母さん、そして妹の四人と暮らしていたわ。
特に妹のシャルルは賢くて、優しいのよ。」
久しぶりの故郷に嬉しそうに話す。
ただ…手に持つ魔法の杖には袋が被せられていた。
しばらく歩き、とても大きな商会へと入った。
広い空間には様々な商品が並べられていて、
エタルナと共に圧倒される。
「お母さん…」
ユミエルが飛びついた女性。
気品のある女性は、優しい笑みでユミエルを抱きしめた。
その目からは涙が溢れ出している。
「あ、紹介するね…ウチの友達。」
「アンジュと言います。」
「エタルナです。」
「ユミエルがお世話になっているのね。よろしくね。」
ユミエルのお母さんに差し出された手を握った。
優しさの中にも強さがある。
――そう感じた。
そして、この商会がユミエルが生まれた家。
始まりの場所…って事か。
はっと思い出し、ユミエルのカバンから顔を出している花を見つめた。
――何も変化は無い。
「2階の事務所にお父さんが居るわ。行きましょう。」
ユミエルのお母さんは店の人達に指示を出し、2階へと続く階段を登った。
階段を登った後、最初の扉を開いた。
「ユミエル!!」
そう叫んだ男性は、勢いよく椅子から立ち上がると、
ゆっくりと前へと進み出た。
「お父さん…」
抱きしめ合う二人をユミエルのお母さんと一緒に見つめていた。
「ごめんなさい…」
「ん?どうしたんだ?」
突然、謝罪の言葉を述べたユミエルにお父さんは不思議そうな顔を浮かべた。
「――実はこの杖…宝物庫から盗んだ物なの。」
そう言いながら、ユミエルは杖の袋を外した。
ユミエルの両親は顔を見合わせる。
「それは…」
お父さんが、慌てて帳簿を取り出した。
宝物庫の記録だ。
静まり返った書斎で、
ページをめくる音だけが部屋で響く。
「それは…ダメだ!」
手を止めたユミエルのお父さんは叫んだ。
「その杖は、呪いの宝具なんだ!使ってはならない!」
大きな声を発する。
が、冷静にユミエルは伝えた。
「知っているわ…もう何回か危険な目にあったから。」
――絶句する両親。
そして…
力ずくで取り返そうとする。
「嫌!」
ユミエルは杖を抱きしめた。
「私はこの杖で苦難を乗り越えて来たの!
この杖が無いと…私は私じゃなくなる!」
「お前は自分の命が大事じゃないのか!」
父親の悲痛な叫び声。
「分かってる!命が大事なのは、もう学んだ!」
ユミエルは半歩、後ろへと下がった。
「ダメ…」
エタルナがユミエルの前に出て盾を構えた。
私も前へと出て手を広げる。
「ユミエルの事は私達が守ります。
モンスターからも…その杖からも!」
トントン…
その時…階段を、降りる音が聞こえた。
「どうしたの?」
3階から、女の子が降りてきた。
「あ、お姉ちゃん…おかえりなさい。」
妹さんがユミエルの前に立った瞬間…
――カバンから顔を出していた花の色が茶色く変わり…
ボロボロと崩れ落ちた。
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