枯れない花と、交わらない言葉
ラミーさんの小屋の前で、別れを告げる。
傷ついていた馬型モンスターの"オーガスト"も元気になったようで、見送りに来てくれた。
ユミエルは…ラミーさんに抱きついた。
ラミーさんの胸に顔を埋め…
必死に涙を堪らえようとしているのが分かる。
ラミーさんはユミエルの肩を持つと、一輪の花を差し出した。
「これはね、枯れない花なの。
水が無くても日光が無くても…」
「ただ…唯一、枯れる時がある。
それは…持ち主に呪いをかけている人物の前。
きっと役に立つ事があるわ…持っていって。」
「ありがとうございます…また来ます。」
ユミエルは深々とお辞儀をする。
ラミーさんの鳥型モンスター"エアリス"が別れを惜しむかのように、空を舞っていた。
ユミエルの実家がある街は、ずっと東。
海を渡ると早い。
そこで私達は、港町ハルバルトから乗船した。
東の町"タモサリア"からの道中、
護衛の仕事があったので、乗船代は賄えたのは幸いだった。
船に乗るのは初めての体験。
エタルナも楽しそうにしている。
ユミエルのカバンからはラミーさんから貰った花が
、ちょこんと顔を覗かしている。
「ねぇ、ユミエル…その杖を使うと、やっぱり苦しい?」
「ファイアーボールくらいなら今は何とも無いわ。」
「最初は、どっと疲れが出たけどね。」
聞くとユミエルは明るく言う。
「グラビデは…?」
恐る恐る尋ねると、うつ向き加減となる。
「それは…確かに…私の中の全てを持っていかれる感じね。」
「生命力を杖に奪われるって、大変な事だろ!?
…どうして今まで黙っていたんだ?」
「そう言うエタルナだって、バーサーカーの事を隠していたじゃないの。」
エタルナの大きな声で甲板の上に居た人々の視線が向いた。
何の話かは、さっぱり分からないだろうけど。
「とにかく…もう、グラビデは禁止だ。」
エタルナは憤慨している様子。
「他に隠している事は無い?」
下向き加減となったユミエルの顔を、のぞき込むようにして聞く。
「あとは…魔法学園でイジメられていた事くらいかな…」
「え?イジメ?」
「そりゃそうよ…いつまでたっても初球魔法しか使えないのだから…」
「そんな…」
私とエタルナは青ざめた。
「でね…この杖のおかげでウチは見返す事が出来たの。」
「夏休み明けにウチが強烈な魔法を放った時の、あの子たちの顔。
今でも思い出すと笑っちゃうわ。」
楽しそうに笑うユミエルの顔は、どこか淋しげに映った。
学生時代のユミエルの孤独を感じると、胸が締め付けられる。
「私たちは違う!」
「たとえユミエルが魔法を使えないとしても…ずっと友達だから…」
エタルナと私は思いを伝えた。
「ありがと…
この船旅を終えたら実家ね。」
ユミエルは広がる湖を眺める。
「そういえば…アンジュちゃんがいつも言ってる球体ちゃんってのも…もしかしたら呪いの宝具の類かもよ?」
「分からないわ…でも、確かに不気味な存在ね。色んな声が聞こえるから。」
「声…か…宝具と会話するなんて凄いね。」
「会話って感じとは違うわ…いつも一方通行よ。」
この球体が宝具?
それにも違和感を感じる。
「ユミエルはその杖と話は出来ないの?」
「この杖と?面白い事を言うわね…言葉を交わすなんて無いわ。」
言葉を交わす…か。
その表現も何か違う気がする。
そう考えながら右肩を見つめる。
――と、球体は否定するかのようにブルブルと震えた。
「あたしは…バーサーカー化すると会話しているような気がするんだ。」
突然、エタルナの告白。
「え?どういう事?」
「何ていうか…もう一人の自分と話すというか…」
「でも…さっきアンジュが言っていたように…一方通行な感じがする。」
エタルナも…治って貰わないとね。
そう考えが浮かんだ時だった…
右肩の球体が熱を帯びる。
「クラーケンだ!」
船員の叫び声と同時に船が大きく揺れた。
突然のクラーケンの出現。
何本もの白い足が船体へと伸びる。
「ファイアーアロー!」
即座にユミエルが対応。
私も船体へと届いた白い足に剣を向けた、
乗り合わせた他のトレジャーハンター達も弓や魔法で攻撃を始めた。
何分かの戦闘の末…
クラーケンは、逃げて行った。
ゆっくりと、海面を進んでいく。
船員達がハンターの各パーティーへとお礼に回っていた。
「いやー、凄かったです。あなたの魔法。」
船員の一人がユミエルに伝える。
ユミエルは照れくさそうに笑った。
「お疲れ様…」
私もねぎらいの言葉を伝える。
すると…ユミエルは向き直す。
「今のウチ…家族に認めて貰えるかな?」
「そんなの当たり前だ!」
エタルナが強く言う。
「でも…すべてこの杖のおかげなのよ。」
淋しげに杖を見つめるユミエルに対し、伝える。
「それでも…ユミエルは必死にその杖を使いこなす努力をした。
その結果が今のユミエル。
だから……自信を持って良いんだよ。」
「だけど…グラビデは禁止ね。」
そう言うと、ユミエルはクスリと笑った。
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