王の杖と、命の宝具
水の流れに逆らうように上る。
緊迫感は薄れ、
どこか懐かしい気持ちが芽生える。
前へ…前へと進むと…
庭園のような場所に出た。
「ここは…ピラミッドの中だよな?」
エタルナは驚きのあまり足を止めた。
「緑が溢れているわ…」
ユミエルは両手を広げ、大きく深呼吸。
私は…鳥がさえずる声を聞いた。
どうして…
ピラミッドの中に青空が…
そして太陽があるのかしら…
「とても…落ち着く、素敵な庭園ね。」
私はゆっくりと…
その草木の中、歩みを進めた。
肩に鳥が止まる。
そっと指を差し出すと…翼を広げて飛び立った。
「アンジュ…これ!」
エタルナの声に、庭園の鳥達が一斉に飛び立つ。
「しーっ、声が大きい…」
口に人指し指を当て、注意を呼びかける。
「エタルナちゃん、どうしたの?」
ユミエルも近づき…三人でエタルナが指差す岩を見つめた。
人工的に作られたであろう岩。
これは…石碑ね。
文字が書かれている。
「これは…古代文字かな?」
「うん…そうね。」
ユミエルの質問に私は答えた。
指で…石碑をなぞる。
所々、かすれている。
「アンジュ…読めるのか?」
「うん…読みにくいけど…」
「おじいちゃんの屋敷で、執事の方に教わった事があるわ。」
エタルナは驚いたような顔をしている。
石碑――
『私はこの地に眠る事になるだろう。』
『魔法を極めて…』
『民の為に最後にこの宝具を残す。』
『永遠に水を湧き出させる。』
これは…王の遺言。
「王様は魔法使いだったって事かな?」
ユミエルは自身の持つ杖を石碑へと向けた。
――特に変化は起きない。
「そうか…だからトラップ扉では杖を選ぶべきだったのね。」
「なるほど、王様の事を知っていたら、簡単な答えだった。」
滅びた王族…
この魔法使いの王様の伝承も失われてしまったのね。
「この宝具…というのは何かしら?」
私がそう言うと、エタルナが声を出す。
「上流に何かある。」
水が流れる方向を見ると、光る何かがあった。
「行ってみよう。」
水が流れ出す始めの場所。
そこには、青く輝く球体があった。
とめどなく溢れる水…その水は清く澄んでいた。
「この球体が…水を生み出しているのね。」
私の右肩で浮かぶ球体とは、また違った雰囲気。
目の前にある青い球体からは、どことなく優しさが垣間見れた。
右肩の球体は、穏やかに微振動している。
「この宝具、どうする?」
ユミエルの言葉に私は首を横に振った。
「取るなんて出来ない。」
「もし取ったら…あの池は干からび、この砂漠の町は滅んでしまう。」
「でも…アンジュ…いいのか?」
エタルナが…不安そうに尋ねる。
「うん、この宝具はお父さんが話していた宝具とは、違うわ。」
だって、お父さんが、この宝具を奪うなんて、考える筈もないから…
居心地の良い庭園。
しばらくとどまった後、私達三人は…この地を離れる事にした。
庭園からは、さらに伸びる道があった。
奥へと進む…
「あれ?」
「この扉…」
何故か最初の方にあった扉の後ろ側に立っていた。
扉には杖の模様が描かれている。
ピラミッドの出入り口。
テントで店を構える商売人が声をかけてきた。
「やはり…失敗したか。」
「だが、生きて帰れた事に感謝すべきだ。」
三人で顔を見合わせる。
「ふふふ…」
何だか…おかしくなって笑った。
だって…宝具の元へは辿り着いたんだから。
でも…それは三人だけの"内緒事"
そう決めた。
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