信じる心と、不気味な目
ギンガムと共に山を目指す。
「あの山には、どんなモンスターが居るのですか?」
「言ってなかったか?バジリスクだ。」
ギンガムの言葉に背筋が凍った。
強敵のモンスターの名前は"バジリスク"
私は、そいつを知っている。
バジリスクは…邪眼を使い、人間の行動を鈍らせる事が出来る。
お父さんも、苦労したと言う話を思い出す。
この情報は…言わないと。
でも…二人共尻込みしてしまうかも?
そう考えた時…ギンガムが話始めた。
「バジリスクには、何度も挑んだのだがな…」
「あいつの邪眼に苦しめられた。」
「邪眼って何ですか?」
「アイツの目だ…目を合わせると行動が鈍くなる。」
問いかけたユミエルの顔が青ざめた。
「そんな相手…怖い。」
「怖いと思うから怖いんだ…トカゲだと思え。」
震えるエタルナにギンガムは睨みつけながら言った。
その声は、少し強めになる。
「あとな…バジリスクの巣には伝説級の宝具があるって話だ!」
「それを楽しみに戦うって算段だ。」
え?それって、もしかして…お父さんが探していた宝具かも?
「ギンガムさんは、エターナルインテンションというパーティーを知っていますか?」
突然の質問に、ギンガムは不思議そうな顔をした。
「なんじゃそりゃ?ワシは知らんな。」
ギンガムは、お父さんの事は知らない様子。
バジリスクの宝具が何かも分からないとの事だった。
「とにかく…自覚を持て!」
「でも…ダンジョンとか怖くて。」
「それじゃぁ…いつまで経っても自我を保てないままだ。」
「えっと…それはどういう意味?」
エタルナは食い入るように質問した。
「今まで歩いてきて、モンスターが出ないだろ?」
「そう言えば…そうですね。」
「バジリスクが怖いんだよ…だから恐れを抱いている下級モンスターはこの山に近づけない。」
「あの…それとバーサーカー化は、どういう関係が?」
「分からないか?」
「お前さんが恐れを抱いている下級モンスター。」
「バーサーカー職がバジリスクって事だ。」
ギンガムの答えに頭が混乱する。
と…その時、右肩に浮かぶ球体が強い熱を帯びた。
「バジリスクだ!いいか、ヤツの目を見るな!」
巨大なトカゲのような姿。
長い舌が高速で動いている。
目は、ギョロリとして…
「しまった…」
バジリスクの目を見てしまった。
――感覚が鈍くなる。
――剣を持つ手が重くなる。
「うぅ…」
膝を崩しそうになったその時…
球体が強く光った。
《感覚二倍…筋力二倍》
助かった…
おかげで元に戻る。
バジリスクの邪眼で…能力が削がれたのか…
ふたたび剣を前へと構える。
と…ギンガムが、バーサーカー化した。
髪と牙が伸び。
目が血走る。
「よく見ておけ。」
エタルナに告げる。
ギンガムの戦闘。
その身体能力は凄まじく、
ジャンプして、バジリスクの背に飛び乗り、
攻撃を加える。
ドンッドンッ!
両手を組み、激しく振り下ろす。
単調だが、力強い…
エタルナは…その戦闘を見ている。
が…その体は震えていた。
ギンガムさんの連続攻撃。
――するも、バジリスクは尻尾を振り回し、
背に乗るギンガムさんを弾いた。
――転げ落ちる。
私は慌てて駆け寄り、ギンガムさんの体を受け止めた。
が…
バンッ!
目の前にバジリスクの右腕が見えたと思った瞬間、
弾き飛ばされる。
「っいったぁ…」
どこから…出血したのだろうか…
分からない。
けど、目の前に血が垂れ落ちた。
「ガルルル…」
エタルナがバーサーカー化した時の声。
コントロールの仕方、
まだ、ギンガムさんに教えて貰ってない…
エタルナは、鋭くなった爪を振り上げ、バジリスクへと突っ込んでいった。
ギンガムさんも立ち上がる。
「いい面構えだ。」
ニヤリと笑ったのが見えた。
ドーン!
ズドドーーン!
ギンガムさんとエタルナの
バーサーカーコンビが攻撃しまくる。
息をするのを忘れてしまう。
それほど、力強い攻撃が何度も繰り返された。
が…二人は吹き飛ばされた。
あの尻尾…長くて厄介。
近くに落下するエタルナ。
「グルルル…」
エタルナはゆっくりと起きあがると…
こちらを見た。
「エタルナ!私!」
完全に暴走している。
目が…視点が合わない。
荒い息づかいが、私の顔へとかかる。
「信じろ!お互いに信じ合え!」
ギンガムが叫んだ!
「心だ!」
「バーサーカー化をコントロールするには強い心が必要だ!」
その声は…エタルナには届いていない。
「聞いて!お願い!」
私は…思いっ切りエタルナを殴った。
それが仲間として出来る、唯一の行為だと思ったから。
「私達は仲間!かけがえのない仲間!」
そう叫ぶも…
エタルナの目は…まだ血走っている。
が…一瞬、目が泳いだかと思った時、
エタルナの目はバジリスクへと戻した。
空気が静まる。
この雰囲気…
「ユミエル!」
大きな岩の上に立ち、アーティファクトである魔法の杖を天高く上げるユミエルの姿があった。
ユミエルは唇を噛みしめ、杖を強く握りしめていた。
「グラビデ!」
…ユミエルの魔法…グラビデ。
それは魔法使い最上位クラスの魔法。
一帯の岩石が浮遊。
大きな岩が…バジリスクの方へと一斉に飛んだ。
バーン!バーン!
激しくぶつかる音。
バジリスクも抵抗する。
も…数多くの岩石がバジリスクを固み…身動きを止めた。
「お嬢ちゃん…すげぇな。」
ギンガムはそう言うと、バジリスクに向かって走り出す。
「背の高い姉ちゃん、行くぞ!」
聞こえているのか?
理解したのか?
分からないけど…バーサーカー化しているエタルナも、走り出す。
バーサーカー化している二人が…
まるで時間が止まっているかのように、何発も攻撃を加える。
グラビデの岩石によってバジリスクは、身動きが取れずにいる。
すると…バジリスクの目が奇妙な動きをした。
まるで、円を描くようにクルクルと…
すると…
ギンガムさんとエタルナ、二人の動きが急にぎこちなくなった。
「目を見てしまったのね…」
このままだと…負ける。
「お願い…球体。」
「感覚四倍、筋力四倍を…かけて!」
熱かった球体が、急に冷たくなる。
《駄目…》
バジリスクの尻尾攻撃によって、バーサーカー二人が吹き飛ばされた。
「お願い!仲間を助けたいの!」
《危険…》
バタリ…ユミエルが、岩の上で倒れた。
グラビデの魔法が崩れ…
バジリスクの行動制限が解かれる。
「クソっ、惜しかったが、撤退だ!」
ギンガムが叫んだ時…
球体の熱さが戻った。
《感覚四倍…筋力四倍…》
体がきしむ…
骨が…筋肉が…痛い!
苦しい!
息が…出来ない…
それでも…私が動かないと…
ユミエルは倒れたまま…
エタルナは…ふたたびバジリスクへと走り出している。
ギンガムさんは…何か言葉を発しようとしている。
エタルナを止めようとしているのか…
すべてが…ゆっくり…
時間がゆっくり…
景色は鮮明に映り、
色の強弱がハッキリと映し出される。
風が私の頬を撫でる。
大きく空へと舞い上がり…
目の前にあるのはバジリスクの頭部…
その不気味な目を見ても…もう、関係ない。
「ザンッ!!!」
迷いも恐怖も断ち切る…一刀両断!
バジリスクの頭部は真っ二つに別れ…
そして…私は力なく崩れ落ちた。
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