暴走する盾と、知らなかった真実
「2回戦!次の登場は…ラビットイヤー!」
「対するは…デストラン!」
司会の方の大きな声が会場内に響くと、歓声が巻き起こった。
ラビットイヤーってパーティー名、
…やっぱり、ちょっと恥ずかしいんだけどっ!
今日は武闘大会の団体戦に出場している。
ミランダさんからの提案だ。
「良かった…相手も三人ね。」
「剣士二人と、盾役一人…魔法使いは居ないな。」
「一回戦と同じように、着実に一人づつ倒そう。」
そう告げ…
私達は、まず小柄な剣士をターゲットに置いた。
「じゃぁ…まずはウチの魔法!」
「ファイアボール!」
魔法使いは、下級魔法のみ使用を許される。
とは、言ってもユミエルの杖から放たれる魔法はとても強烈だ。
おかげで、
一回戦も相手チームを翻弄した。
「うらぁー!」
魔法を交わした相手チーム。
剣士二人がいきなり、ユミエルに襲いかかる。
バンッ!
エタルナが盾で二人の攻撃を防ぐ。
私は、小柄の剣士に向けて木刀を振り下ろした。
ドンッ
防いだのは、相手の盾役。
両チームの狙いが分かり…
そして盾役の存在価値が際立つ。
観客席からは、大きな歓声が湧く。
「エタルナは、ユミエルの防衛に専念して!」
「ユミエルは、小柄な方を狙い続けて!」
私は…もう一人の剣士を足止めする。
じわりと…相対する剣士へと足を動かす。
相手も察したようで…私の方に木刀を向けた。
「一人で来る気か?非力そうだか…」
「球体…発動しないでね…」
「何を訳の分からない事を…」
「こっちの話よ。」
「簡単に倒しちゃったら、盛り上がらないからね。」
相手の盾役は、小柄な剣士の防衛に専念。
こちらは…
私を倒せると思っているのでしょうね。
一対一
正々堂々と勝負よ!
カン!カン!カン!
木刀がぶつかり合う音が続く。
『お前の剣は、まだまだ無駄が多い。』
この前の食堂で…
ダグラスさんに言われた言葉を思い出す。
えっと…不必要に大振りはせず…
必要な時は…力を爆発させる…
「今っ!」
ドンッ!
のけぞった相手は後方へと、飛ばされたが、
何とか持ちこたえた。
くー、筋力二倍だったらなぁ。
と、その時…会場から割れんばかりの歓声が響いた。
「アンジュちゃん、一人倒した!』
ユミエルがVサインを送る。
エタルナは私に向かって微笑んだ。
「クソっ!」
対峙していた剣士がこちらを睨見つける。
二対三
圧倒的にこちらが有利となった。
「おい、次の作戦に移るぞ。」
「おぅ…仕方ないな。」
対戦相手は、一旦…後方へと退いた。
「やったわね、ユミエル!」
「ラストの水魔法をね…ちょっと工夫したのよ。」
「あれは、良いアイデアだったな!」
エタルナがそう言った時、
右肩の球体が急に熱くなった。
「ダメ…発動しないで。」
そう呟いた時…
相手の盾役が突っ込んで来た。
「エタルナ!お願い!」
これは…
相手の次の標的は…私だ。
咄嗟に動いたエタルナの盾と、相手の盾がぶつかり合う。
と…相手の盾役の背後から私に近づく影。
対峙していた剣士だ。
サイドステップで、突き出された木刀をかわす。
「痛っ!」
嘘?なんで…右腕に切傷が…??
ポトリ…
真っ白な床の上に私の血が落ちた。
「エタルナ!」
咄嗟に名前を叫ぶ。
「だ…大丈夫だ…」
そう返事をするエタルナの息づかいは荒い。
「フー。フー。」
深呼吸して自分を落ち着かせようとしているのが分かる。
「ウォーターボール!」
ユミエルが後方から魔法を放った。
おかげで、一拍の時間が生まれる。
「とにかく…落ち着いて!」
魔法をかわした相手チームの盾役が再び、突進。
その後ろには剣士。
「アンジュを…守る!」
大きな声が響く。
盾と盾がぶつかり合った瞬間。
剣士の手がキラリと光る。
あれは…刃物。
寸前の所で、木刀と…その刃物を避けた。
つもりだった…
今度は左足から出血している。
「痛っ!」
気づいた瞬間、痛みが伝わり…言葉に出た。
「エタルナ…?」
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ――
彼女の目に、迷いが宿った。
「ガルルルル…」
しまった…
「エタルナちゃん!」
ユミエルの叫び声も虚しく…
エタルナはバーサーカー化した。
槍と盾を放り投げ…
牙を向く。
「う、うわぁ〜!」
相手選手が逃げ出す。
「待て!待て!!」
審判が叫ぶが…意味は無い。
「エタルナ!落ち着いて!ヤメて!」
私の静止の声も届かず…
エタルナは…
盾役を拳で殴り倒した。
そして…剣士に噛みつく。
その、鋭くなった牙で…
「ギャーーー!」
剣士の声が響き渡った次の瞬間…
観客席は悲鳴に包まれた。
慌てふためいて逃げ出す観客が見える。
と…その時、舞台上へと飛び出す男の姿が見えた。
「…ダグラスさん!」
舞台へと上がったダグラスさんは、
エタルナの腹を拳で殴った。
「ぐぉっ!」
エタルナが膝から崩れ落ちる。
相手の剣士は気を失ったようで…倒れた。
「反則!反則負け!」
審判が私達を指差し、そう叫んだ。
が…今は勝ち負けなんてどうでもいい。
「エタルナ…」
「審判!相手も反則だ…短剣を忍ばしていた。」
「へ?」
ダグラスの言葉を聞いた審判の男は、
倒れている剣士の懐を探った。
その顔から何かを見つけた事が分かる。
「両チーム…失格!」
その声を聞いた観客達の声は悲鳴から、
ざわめきへと変わった。
「あの…ダグラスさん、ありがとうございました。」
倒れているエタルナをユミエルが抱き起こす。
「どうなっているんだ!コレは!」
ダグラスさんが大きな声を出す。
「エタルナ…仲間の血を見るとバーサーカー化しちゃって…」
「バーサーカー化したのは見れば分かる!」
「何故、コントロールしないのかを聞いている。」
「え?」
「コントロール?」
私とユミエルは、ダグラスさんを不思議そうに見つめた。
「知らないのか?…バーサーカーは自我をコントロール出来る筈だ。」
その言葉に、私達は固まった。
「…それは、本当ですか?」
いつから意識が戻ったのか分からない…
が、エタルナが静かに声を発した。
血で汚れた自分の拳を見て震えている…
「そうだ…バーサーカーは本来、自我を保てる。」
戦闘不能となった相手選手達が担架に乗せられて会場の外へと運ばれた。
反則負けとなった私達も控室へと誘導される。
「バーサーカーの事を詳しく教えて欲しい。」
エタルナがダグラスさんに懇願する。
「すまんが…自我を保つ方法までは分からない。」
「が、俺にはバーサーカーの友人が居た。」
「その男は、確かに自我を保ち、バーサーカーの戦士として戦っていた。」
「そんな…自我を保てるだなんて…」
エタルナの驚きの声は少し声高く聞こえる。
「あたし…コントロール出来るようになりたい。」
「その為には、どんな努力でもする!」
「バーサーカーを職業とする、その男の名は、ギンガムだ…アイツなら詳しい話を聞けるだろう。」
「ありがとうございます!」
私達は声を揃えて礼を伝えた。
「それで…その方はどこに居ますか?」
エタルナがすがるように尋ねる。
「最後に会ったのは…西の森だった。」
「だが…今は、何処に居るのかは分からない。」
ダグラスの返答にエタルナが深々とお辞儀をした。
「あたし…頑張るね。」
エタルナの、
バーサーカー化の秘密を探る旅が始まった。
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