父の杖と、助けすぎた父
プノンニッタの街に到着した。
私達は、護衛対象だった商人のおじさんと別れを告げる。
次に落ち合うのは一週間後。
町への帰宅時の護衛だ。
「さて、街を探索しよう!」
「おー!」
「うっす!」
私の提案にユミエルとエタルナは大きく手を上げた。
「この魔力が上がる腕輪、可愛くない?」
「うん、ユミエルに似合うよ。」
いつもの町には無い、
めずらしい品が沢山ある。
それなりの金額の為、
なかなか購入する事は出来ない。
ただ…
商品を見るだけでも楽しかった。
「あれだ!あの饅頭からだ!」
「とても良い匂いがする!」
エタルナが大きな声で叫んだ。
「ホントだ、行ってみよう。」
「昼食になりそうね、いただきましょ。」
暖かな饅頭…中には肉が入っていた。
「熱っ!」
「アンジュちゃん、慌てないのっ!」
「火傷するなよ。」
美味しそうな匂いに、つい…急いで口に運んじゃったわ。
二人の忠告は、少し遅かった。
「うわぁ〜、凄く美味しい。」
「あったかくって…落ち着く味だ。」
二人は心底、嬉しそうに頬を緩めていた。
突然…
「ちょっと…その杖!」
「何なの、その異常な魔力は?」
通りすがりの魔法使いの女性に声をかけられた。
「え…はい?」
ユミエルが不安そうに答える。
「何か…不思議な力を感じるわ…」
その言葉を聞いたユミエルがハッとした顔をする。
「ふ、普通の杖です!」
声色が一段、高くなっている。
サッと杖を背中に隠す。
「あ、ごめんなさい…」
「私の名前はミランダ。」
「こう見えても、私は昔、Sランクパーティーのメンバーだったの。」
「今は魔法の杖の研究をしててね…」
「ちょっとだけ見せてくれないかな?」
優しく説明するミランダと名乗った魔法使い。
「すみません…」
「お見せ出来ないです…」
ユミエルは、下向き加減に答えた。
「やっぱり…そうよね…」
「残念だわ。」
後退りするユミエル。
「そのSランクパーティーの名前って、もしかしてエターナルインテンションですか?」
残念そうにするミランダさんに、私は思い切って声をかけた。
「え?何で分かったの!?」
「私の父がエターナルインテンションで剣士をしてて…」
「もしかして…あなたがアンジュちゃん?」
「はい!アンジュです!」
「…父の事を知りたいです!」
「聞かせて貰えませんか!?」
「なるほど…どこか面影があるわ。」
「うん…良いわよ。」
「でも…ここは人が多いし落ち着かないわね。」
「私、今、貴族の屋敷で魔法の家庭教師をしているの。」
「良かったら、今夜、遊びに来ない?」
「ありがとうございます!」
深々とお辞儀をする。
「良かったな、アンシュ。」
「お父さんの話が聞けそうね。」
「こめん、勝手に予定を決めちゃった…」
「ユミエルは、宿に残る?」
"魔法の杖"を詮索してくるミランダさん。
夜も、探りを入れられるかも知れない。
「一緒に行くわ…ウチらは三人で一つよ。」
「ユミエル…ありがとう。」
夜になり、貴族の屋敷を訪れた。
緊張しつつ、門番に名前を伝えると、
話を聞いていたようで、中へと通される。
庭には噴水があり、とても立派だ。
「いらっしゃい…こっちよ。」
正面にそびえ立つ大きな建物では無く、
隣りにある小さな建物へと招待された。
ユミエルの杖は、念の為…袋に入れてある。
「まぁ、座って。」
丸い机を中心に四人で座る。
この建物には、他に誰も居ないようだ。
「この紅茶、美味しいのよ。」
勧められた紅茶は、芳醇な香りがして確かにとても美味しい。
三人で顔を見合わせ、微笑みあった。
ミランダさんは、ここで貴族の息子さん二人に魔法の指導をしているそうだ。
二人共、結構、才能があるらしい。
「この前、ザンブルグさんに会ったのですけど…話をしてくれなくて。」
「彼ね…ただでさえ無口な人だからねぇ。」
「そうね…何から話そうかしら。」
ミランダさんは、紅茶で喉を潤した後、本題を話始めた。
「お父さんは立派な剣士だったわ。」
「とても勇敢で、強かった。」
「仲間を何度も助けた。」
「けど…助けすぎていたわ。」
その言葉が、胸の奥に静かに沈んだ。
誇らしいはずなのに…なぜか怖かった。
「盾役でもないのに前に出てしまうの。」
「時には盾役だったザンブルグさんまで助ける場面まであった。」
「自分よりも仲間を大切にする人。」
「リーダーとしての責任感が強すぎたのかも。」
…それ…私も?
「無謀な…時もあったわ。」
ミランダさんの話はそこまでだった。
家の事情でパーティーから離脱してしまったとの事。
お父さんが最後、どうなったかは知らず、
パーティーもいつの間にか解散していた。
「あと、お父さんが探していたという宝具の事は知りませんか?」
「ん?宝具??…分からないわね。」
バンッ!
突然、大きな音と共にドアが開いた。
「ミランダ!何してるの!?」
「お客さん??」
「コラー!ちゃんとノックしなさいって言ってるでしょ!?」
どうやら、貴族の子供達らしい。
ミランダに言われて丁寧に挨拶をした。
「あ、分かった!」
「明後日からの武道大会に出る選手だろ!?」
え?そんなの出る気無いけど?
「違うよ…」
「あ、そう言えば…ダグラスも出るらしいわね。」
「ダグラス…さん?」
「エターナルインテンションの元剣士。」
「あなたのお父さんと並ぶアタッカーだった人よ。」
「彼なら私より、もっと詳しい話を聞けるんじゃないかな?」
詳しい話を聞ける…その言葉に私の胸が高鳴る。
右肩に浮かぶ球体が、いつも以上に激しく動いた。
焦り…?警告…?
武道大会…
これは…出ない訳にはいかなくなった。
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