護衛の旅と、向けられた視線
荷馬車に揺られ町から離れる。
ユミエルとエタルナと出会った町。
また戻ってくる筈の場所。
それでも…町の姿が小さくなるにつれて、何故だか寂しくなり、
胸がギュッと締め付けられた。
「…。」
理由は分からない。
けど、あの町が私達の居場所だった事を改めて気づいただけ。
商人のおじさんの隣に座る。
慣れた手つきで、馬のたずなを操っていた。
馬も安心しているように思える。
プノンニッタに到着後は、しばらく街に留まる予定だ。
おじさんの仕事が終わった後、ふたたび帰宅時の護衛をする。
「お嬢さん達は偉いね、ちゃんと自立して。」
思いもよらない言葉をかけられる。
「いえいえ…ただのトレジャーハンターですよ。」
私も、ユミエルも…エタルナも…
事情があって家を出て…ギルドからの依頼で生きている。
その日暮らしの日々。
自立している?
そう言われて胸を張って良いのか、少し疑問に抱いた。
「プノンニッタの街は、どういった所ですか?」
あえて話題を変える。
「あぁ、とても賑やかな街だよ。」
「貴族様が治める街でね、名物は武闘大会さ。」
おじさんは優しく教えてくれた。
「武闘大会!?」
荷台に乗るユミエルが口を挟む。
「賞金は高いのですか?」
「貴族様の懐から出るからね、そりゃ高いさ。」
「アンジュ…出ればいい。」
エタルナの言葉。
それに反応するように、右肩に浮かぶ球体がじわりと熱を帯びた。
「いいじゃん!アンジュちゃんなら強いから行けるよ!」
ユミエルは嬉しそうに言う。
けれど…
私の強さは球体の支援があっての事。
それを使って勝ったとしても…
…ズルじゃないかな。
そんな考えが、頭をよぎる。
球体はブルリと震えるように動いた。
「無理でしょ、いくら何でも…」
武道大会か…ちょっと見てみたいな。
という気持ちも芽生えた。
その時…
前方から砂煙が上がっているのが見えた。
「ん?あれは…?」
球体が、はっきりと反応する。
「おじさん、止めて!!」
「ユミエル!エタルナ!戦闘準備!」
「分かった!」
「おぅ!」
荷馬車が止まると、二人は飛び降りる。
「お嬢さん達、大丈夫かい?」
「心配ないわ。おじさんは、このまま待機で。」
砂煙が近づく…
姿が見えた…
「ジオオストリッチ!」
二本足で走る、飛べない鳥型のモンスター。
めちゃくちゃ、足が速いのが特徴。
地面が震える。
「もう来た!」
「ユミエル…行きます!」
「ファイアーアロー!」
ひょいっと素早い動きでかわす。
炎の矢は、地面を焦がした。
ユミエルがもう一度、魔法を放つ!
「サンダーボルト!」
惜しい!
羽根をかすめるが止まらない。
「エタルナ!出番!」
バンッ!
盾でいなすように、受け流す。
ひるんだジオオストリッチに向けて、剣を振り下ろす。
が…届かない。
そのまま走り去るジオオストリッチ。
「…あれ?」
「走ってった?」
「行っちゃたわね。」
顔を見合わせる三人。
次の瞬間、笑いが込み上げて来た。
「お嬢さん達、大丈夫かい?」
おじさんが駆け寄る。
「はいー、無事です。」
「良かった、おかげで馬車は無事だよ。」
モンスターには逃げられてしまったけど、
今回の依頼は、護衛だから…問題ないわね。
「街に向けて、出発しましょ。」
ふたたび、荷馬車に乗り込む。
今度は、ユミエルがおじさんの隣へと座る。
私とエタルナは荷台で、心地よい風を感じる。
「お嬢さん…その杖、凄く良い代物だね。」
「えぇ…」
「その杖、良かったら高く買うけど…どうかな?」
おじさんの言葉に、ユミエルが固まった。
「ダメ…」
「あぁ…どうしても、ダメかい?」
「この杖は、私の大切な相棒です。」
「絶対に手放しません!」
「そうか…」
「そう簡単に手放す代物ではない…か。」
「…無理を言ってすまなかったね。」
「いえ…」
それでも、おじさんの視線は一瞬、杖へと戻った気がした。
何となく、気まずい雰囲気となったので、
次の休憩後はエタルナがおじさんの隣に座った。
しばらくして…
「街が近づいて来た。」
「おぉぉ…大きい。」
幾重にも重なる塔の影。
街を取り囲む壁はとても高く、壮大。
圧倒的な存在感。
まるで、強者だけを迎え入れる街のようだった。
プノンニッタ。
この街での私たち冒険。
これから向けられる視線は、どういった意味を持つのだろう。
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