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「真田由理子の冒険」 (セーラー服と雪女 第14巻)  作者: サナダムシオ


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② 接近遭遇

 あれは確か、中学校1年生のころね。

 5月に写生会が有って、名護屋市の東山動植物園に行ったの。

 私は小動物が好きだから、❝小鳥とリスの森❞という施設に入っていたのよ。

 そこはまるで、大きな鳥かごの中のような場所で、ベンチに座って待っていると、自由に駆け回るリスや、飛び回る小鳥と触れ合えるの。

 小さな子どものころから、私の大好きな場所だったわ。


 私が小鳥を見ながら絵の下書きをしていると、リスたちがどんどん集まって来て、あっという間に囲まれてしまったのよ。

 私の肩に乗ったっり、膝に乗ったり、興味津々に絵と私を見比べたり、「これは楽しいことなの?」って訊かれたりしたわ。

 だから私も、「そうでもないけど、皆と触れ合えるから、イヤでもないかな。」って答えたりしたの。


 しばらくの間そんな事をしていたら、そっと私に近づいて来た、ある人物に話しかけられたの。

「素敵なチカラをお持ちですねえ。」


 私はその時、とてもびっくりしたことを、今でもよく覚えているわ。

 なぜって私は昔から、誰にどんなにコッソリ忍び寄られても、必ず気づく才能があったからなの。

 なのに彼は全く気配を感じさせなかった。それは私にとって、ちょっとした恐怖だったわ。


「動物遣いの能力ですか。珍しい…まるでドクタードリトルか、白雪姫のようですねえ。」

 返事をしない私にかまわず、彼は話し続けたわ。

 いったい何者なのかしら?…それより見るからにガイジンなのに、どうして日本語ペラペラなの?…あれか、あのハーフの❝岡田真澄❞的な?

 とっさに私は、そんなことを色々考えたわ。


 そして勇気を振り絞って彼に訊いたの。

「貴方は誰なんですか?どうしてそう思うのですか?」

 そしたら彼はこう言ったのよ。

「私はサン・ジェルマンです。御存じでしょう?」


「ああ、あのケーキが美味しい…?」

「それは、サン・モリッツ。」

「じゃあ、焼き立てパンの…?」

「それは、サン・マルク。わざと言ってますね?」


「⋯まさか、伝説の⋯タイムトラベラー?」

「そうです。私がその、サン・ジェルマンです。」 

 彼はまるで、志村けんの❝変なオジサン❞みたいな口調で答えたわ。


「貴女は、動物と心を通わせることができるのですね?」

「⋯だから、どうしてそう思うんですか?」

「実は後ろから、貴女のことを、しばらく観察していたのですよ。」

 残念ながら、この時代にはまだ、ストーカーという概念も罪も存在しなかったのよねぇ。

「…その結果、そういう結論に至りました。」

「…。」


 私は何も言わずに、彼の様子をうかがったわ。

 髪の色は銀色。背は…175㎝くらいかしら?年齢は私よりずっと年上ね…35、6歳ってところかしら?

 そして、高価そうな、三つ揃えのグレイのスーツを着こなしていたわ。


「その能力の発現には、無我の境地が必要です。世の中の宗教家たちは、その境地に至るために、厳しい修行を積んだり、深い瞑想に入ったりして、色々と苦労をしているのですよ。それをあなたは、何気なく、すんなりやっている。素晴らしいことです。」


「…私はただ…ぼうっとしているだけなんですけどね?」

「それが中々難しいのです。素晴らしいスキルだ。是非とも私のコレクションに加えたい。」

 そのガイジンは、とうとう危ないことを言い出したのよね。


挿絵(By みてみん)

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