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超能奇譚 〜オーロラを見に行こう〜  作者: さしすせその化身
第1部 謎の組織編 第1章 覚醒の11月
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第15話 八◼️宗◼️◼️その◼️

 張り込み初めて30分、未だに八木は現れない。


「もしや、逃げられたのか?」

 おっさん警察がそう呟くと、今まで何もしなかった黄のヒトが、手で大きなバツを作った。


 口こそ開かなかったが、必死になにかを伝えようとしている。


「なにをしてるんだこいつ?」

 伝わらなかったショックで、彼はしょんぼりして座り込んだ。


 すると、モラが言った。


「もしかして……「まだ中にいる」っていいたいんじゃないですか?」


 その瞬間、彼は勢いよく立ち上がり。指でグットマークを作った。


「うーむ、教えてくれたのはありがたいが……何者なんだ? お前は」


 ふとモラが腕時計を見ると、怪訝な表情になり言った。

 

「あれ? もう1時間経っている」


 警察も叫んだ。

「なにぃ!? いつのまにか午後の8時!?」


 おっさんは空を見上げたが、空はさっきと変わらない、午後4時半の雪空だ。


 なにかがおかしいと思い、モラとおっさんは顔を見合わせた。


「突入するぞ」

「はい!」


 黄のヒトも笑顔で頷いた。


――


 店内へ入ったが、八木の姿はどこにも見当たらない。


「一体どこに……」


 すると、黄のヒトがトイレを指さした。

 

 トイレの前で、豪華な服を着た男が待っている。彼はこちらをちらちら見ると、トイレのドアを叩いた。


「あそこにいるのか?」

 おっさんが尋ねると、黄のヒトはコクコクと頷いた。


 おっさんは彼に小声で「OK」と言い、トイレへ走った。男を押し退けると、彼はドンドンと扉を叩いた。


「おい八木! 出てこい、警察だ!」

 しかし個室の中からは音1つ聞こえない。


 不審に思ったのか、細マッチョの店員が彼の腕を掴んだ。


「なんすか? 警察さん。捜査をするなら1度店員に断るのが常識ですよね?」


「ああ、すまない、だが今は許してくれ……」


「いや、事情を……」

 その時、ドアが少し開き、八木が垢まみれの顔を覗かせた。


 そして、彼高速で回転する、ほぼ針だけの時計を投げた。


「刑事さん!」

 モラが叫ぶ。


「刑事ではない交番勤務…って、ぐううあわぁ!」


 時計の針は竹とんぼのように空中を舞い、おっさんと細マッチョを攻撃した!


 2人が怯んだ隙に、八木と豪華な服の男は逃げた。


「逃げた! 八木宗一郎逃げた!」

 思わずモラは実況風に叫んだ。


 そして追いかけるために、モラは能力を発動した。

 「ラブヘブン」それが彼女の能力の名である。


 モラがパッと消える瞬間を目撃したおっさんと細マッチョは声を合わせて驚いた。


「「き、消えたぁ!?」」


―― 


 八木はズカズカと雪の上を走りながら、高らかに笑った。


「フハハハハ! クソ店員と、ついでに警察の野郎に吠え面かかせてやったぜ!」

 

「はぁ? 僕いなきゃ捕まってたでしょ。調子乗らないでくださいよ」


 アデノフはイライラしながら言った。


 その時、突然目の前で爆発音がした。


 粉塵の中から出てきたのは、モラだ。


 後ろから、警察官と鬼の形相の細マッチョ、そして黄のヒトが追いついた。


「さあ、大人しくしろ!」


 おっさんが拳銃を突きつけた。


 彼らは完全に囲まれた。


 その時、路上で誰かが叫んだ。

「大学の試験! いつのまにか2時間も遅刻してるじゃないか! 最悪だぁ!」


 次は主婦たちが話す。

「あら、今日月曜日?」

「あら本当? ……いや、水曜よ? スマホに書いてる」

「え? 私のは日曜日って書いてるけれど……」

「大変! じゃあ今日のゴミ出し、間違ったのを出してたってことじゃない!」


 また、カップルが話す。

「あと1分、あなたとこうしていたいわ」

「そう言って、もう4時間もこのままだよ?」

「なに言ってるのよ! 時計はまだ20秒も経ってないわよ!」


 老人が言う。

「8月に雪なんて、珍しいのお……」


 若者たちがはしゃぐ。

「「「「ハッピーニューイヤー! 2145!」」」」


 そして、テレビが言う。

「アメリカが建国1000年を迎えました。朝のニュースを……いえ、昼、え? 夜?」


 皆、この奇妙な光景に唖然とした。


「ねえ、八木さん、これって……」

 アデノフが尋ねると、彼は心底楽しそうなゲスの笑顔で言った。


「トイレにこもってる間に、世界中のいろんな写真を……そして走りながら能力を使ったぜ! 今世界は馬鹿になってる、俺よりも馬鹿な世界になってんだよぉ!」


 アデノフは深くため息を吐き呟いた。

「ああ、そう」


「ん? そう? 敬語使えよてめえ…」

 

 状況に理解が追いつかないまま、おっさん警察官が言った。

「大人しく投降しろ!」


 彼は中指を立てた。

「うるせえ! 政府の犬野郎がよお!」


 細マッチョが殴りかかろうとしたが、黄のヒトが止めた。

「あぁ!? 止めてんじゃ…………え? なに? なんだこいつ!?」


 八木の態度と逆にアデノフはおとなしく従った。


「あ? アデノフてめえなにしてんだよ! 速くこいつらを殺せ! 俺を逃がせぇ!」


「やだよ、あんたには失望した」


 彼はおっさんを高速の回し蹴りで倒した。


 そしておっさんから銃を奪い取りそれを八木に突きつけた。


 八木もモラたちもみんな、一重に困惑した。


「な、なにしてるの? 仲間じゃ…ないの!?」


「そうだ! なぜ仲間割れをしだすんだ! おとなしく投降しろ!」


「おいやめろ! 殺しちゃだめだ!」


 アデノフは冷たい声で八木に言った。

「あなたは……せっかく僕が助けたのに、また問題を起こした……もう、あなたはいいです」


 彼は恐怖した。体中の細胞が震えた。

「や、やめろぉ! なぜ俺なんだ! こいつらでも良いだろ! 本当に………いいのか? お、俺は強いぞ…?」


 アデノフは何も答えることなく、トリガーに指で触れた。

「やめろ! ……やめろぉ! さっきみたいに、攻撃だって…………やめてくれぇ! 死にたくない! 死にたくない!」


 黒色の銃声が鳴り響く、八木は雪の上に倒れ、即死した。


 そして、彼の遺体は、雪に溶けた。


「あれ? 私なんでこんなとこにいるんだろ…」


「なにか……とんでもないことが起こったような…」


「あれ? なんで俺、店の外に…?」


 皆口々に言い、黄のヒト含むその場の全員は首を傾げながらそれぞれ別の方向に帰っていった。


 アデノフも、また同じように、歩きだした。

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