表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超能奇譚  作者: さしすせその化身
第1部 謎の組織編 第1章 覚醒の11月
12/13

第12話 道

 20…21…22…これは良い…とても良い…体が喜んでる。


「何してんの? ラギー」


 カヤノに負けてから、毎日欠かさずしている筋トレ。


 その途中、誰かが話しかけてきた。


 筋トレを中断し、声の主を見る。


 目の前に立っていたのは、高身長でハイブランドを着こなす。アデノフだ。


「なんの用だ。俺は今マッチョになろうとしてる」


 そういうと、アデノフは大笑いした。


「筋トレ? その歳じゃ「健康維持」でしょ」

 

 いますぐにぶん殴ってやりたくなったが、我慢して要件を尋ねた。


「で、何をしに来た」


「化石を入手したんだ、それ以外であんたと関わる理由なんてないよ」


 つくづく、一言一言がムカつくガキだ。


 俺はアデノフが差し出した化石を受け取り、金を渡した。


「ほら、2000ユーロ」


 アデノフと俺は手を組んでいる。アデノフは俺に化石と組織の情報を売り、俺は組織で化石を納品したときに得られる金額の2倍で買う。そういう契約だ。


 俺がなぜそんな金を持ってるのかって? そんなの簡単だ、殺して奪えばいい。


「いぇーい、大金ゲットォ」


 アデノフは金持ちなクセに、金を掲げて喜んだ。


 喜んでいるところ悪いが、アデノフに尋ねた。

 

「情報はないのか? ないならさっさと帰れ」


「あるよ、あるある…」


 どんな情報か…できれば組織の目的や保有している化石の数などを聞きたい。


 アデノフは得意げに話しだした。


「実は僕、この3日間で5回殺人してるんだ。ああ、もちろん捕まることはないよ? 「ジュラ」のおかげでね。それでね、その殺人、全部同じ人に目撃されてるんだ。いや、止められたの方が正しいか…まあ全て記憶消してるから問題ないけど…」


 俺は苛立って、結晶化した指拳銃を突きつけた。

 

「俺はてめえの日記を読めとか言ってねえぞ…俺が知りたいのは組織のことだ」


 アデノフは不満気に口を尖らせ、仕方なさそうに言った。


「しょーがないなぁ〜、組織の目的はズバリ、化石の封印! 化石を全て集めてどこか誰も知らない場所に閉じ込めておくことが目的さ」


 俺は心で組織を見下した。


 どうやら謎の組織のボスも化石の真の力を知らないらしい。


 化石の封印など、不可能だ。


 するとアデノフが「そういえば」と付け足した。


「これは噂程度の話なんだけど…」


「噂?」


「謎の組織以外にも化石を密かに集めてる組織があるんだ」


 別に以外でもなく、俺は鼻で笑った。

「そりゃあるだろうよ、俺だってそういう組織は山ほど潰して化石を手に入れてきた」


「そうじゃなくて、あまりにも「巨大」なんだよ、その組織が…聞けばあんたもピンとくる」


 珍しく真面目な表情だ。


「へえ、どこ? 目的は?」


 アデノフははっきりと言った。

「「国際連合」、そして目的は「世界平和」」


 名前を聞き、確かにピンときた。


 しかし目的を聞き再び鼻で笑った。

「そんなあまっちょい考え、敵じゃないな」


――


 アフリカ大陸某国、国連の職員たちは、環境保護だとか、ユニセフだとか井戸とか、そんな感じのやつのため、この地に赴いた。


 しかし、その集まりから外れた奇妙な男が1人。


「ここにはない…化石が反応していない…」


 地面に化石の欠片をかざしながら、とある男が呟いた。


 イザム・バラグ41歳。国連の職員である。


 41歳ながら、なかなか鍛え上げられた肉体をしている。


 そんな彼は化石を集めるため、国連職員になった。


 化石同士は互いに反応し引き合う性質を持つ。


 それを利用し近くに化石がないかを探っていたのだ。


 すると、化石がピクピクと動きだした。


「ん? 少し反応している? 北か…」


 北に行けば、他の職員から離れてしまう。


 それをわかっていながらもイザムは化石の導きの通り歩を進めた。


 仕事たびにどこかへ消えるイザムは、元々同僚から好かれていない。だから今更なにをしたところで変わらないのだ。


「地面の下か? そうなると厄介だ…」


 イザムは目を瞑って「道」を見た。


 「道」というのはイザムの能力である。


 簡単に言えば、過去、現在、未来全ての人間が通過した道が線として見える能力だ。


 説明だけでは凄い能力に聞こえるかもしれないが、イザムはそうは思わない。

 見える線がいつ時代のものか判別できないからだ。


「地面の下に線が見える…下水道か?」


 もし地下にあるならば、化石を回収することは非情に困難を極める。


 化石がさらに強く反応した。

 この反応だと下方向に1mくらいだろう。


 設営テントにスコップがあるが取りに行けば怪しまれるだろう。


 悩んでいると小さな女の子がやってきた。

「なにしてるの?」


 現地住民に怪しまれたようだ。独り言が大きすぎただろうか。

 

「や、やあはじめまして…どうかしたかい?」


 ぎこちなく尋ねると、女の子は呆然とした。会話は難しいみたいだ。


 その時、女の子の手に、小さなスコップが握られていることに気づいた。


「その〜…お嬢ちゃん? その可愛らしいスコップ、ちょっとだけおじさんに借してくれないかい?」


 少女はイザムを不思議そうに見つめて尋ねた。


「なんで? おじさんも土弄るの好きなの?」


「そう、そんな感じ…だからそのスコップを…」


 その時、化石が強く反応した。


 化石はイザムの手から離れ、回転しながら地面を掘りはじめた。

 

「こ、これはぁ! 近いぞ…お願いだ!スコップをくれ!」


 鼻息荒くして要求するイザムに、少女は仕方なくスコップを手渡した。

「ありがとう、よし、この先に化石ッ…」


 その時! 地盤沈下のように地面が抜け落ちた。


 化石が掘り進めるあまり、下水道の配管を突き破ってしまったようだ。


 落ちながら目を瞑り、「道」をみた。


 少女の道は配管にぶつかって途切れていた。線が途切れる、すなわち「死」である。


 イザムは目を見開いた。このままでは少女は配管と衝突して死ぬ!


 イザムの頭はぐちゃぐちゃになった。

 もう終わりだ。自分のせいであの少女は死ぬ。


 過呼吸になり、冷静さを欠いている。


 イザムは子供のころからたびたびパニック症状を起こす。過去のトラウマが起因しているのだ。


 しかし、イザムは、落ちる少女の当惑した表情を見て、落ち着きを取り戻した。


「馬鹿が! 焦っている時間はないぞ!」

 大声でイザムは自らを律した。


 イザムは「道」の能力を通して世界のルールを1つ理解している。


 基本的に、世界の運命は決まっていて変えられない。

 

 しかし行動次第で運命変えられるものが存在する。


 それが、「未来を知るもの」である。未来人だったり、未来予知の能力者、未来を観測または体験したものの行動によって未来は変化する。


 そして、「道」によって未来を知るイザムもまた、他者の死の運命を捻じ曲げることができる。


 少女は位置的に、イザムよりも少し早く地面に衝突する


 ならば、イザム自身が加速すれば良い!


 イザムは落下する化石を掴み、加速した。

 落下する化石と配管の下の化石の間にある引力を利用したのだ。


 勢いよく着地、そしてジャンプッ!


 鍛えてきた脚力を活かし、高く垂直に跳んだ。


 落ちる少女を優しくキャッチした。

「ここからだ…お嬢ちゃん、絶対に動くんじゃないぞ?」


 イザムは少女を抱き上げ、目を瞑りながら壁を掴んだ。


 そのまま壁をボルダリングのようによじ登り、少女の道を逆走した。


 登りきったころには、少女の道は変化していた。


「お嬢ちゃん、家へお帰り、怖い思いさせて悪かった」


 少女は涙ぐんでいたが「道」の通りに帰っていった。


 沈下した地面を除くと、割れた配管の中に、先程の化石たちが転がっている。

 

「捨て置きはできないな」

 

 イザムは壁のでこぼこを利用し、安全に着地した。


「よし…ん? これら全て右足の部位か…」


 合わせてみたら、見事に右足の一部が完成した。


「これで……やっと5分の2…くらいか…」


――謎の組織

  目的   化石の永遠なる封印。

  保有化石 全世界にある聖化石のうち、約40%

  ボス   イザム・バラグ     

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ