悪役令嬢の姉ですが、平凡な侯爵令嬢なのでボードゲームします。
12歳の春、2歳違いの妹が『悪役令嬢』であったことを思い出した。
「そ、そんなー!!??」
私は自分の部屋で絶叫したけれど、誰も私には構わなかった。
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……………………気を取り直して。
私はカトリーナ・フラガリア・アナナッサ。
侯爵令嬢で、アナナッサ侯爵家の嫡女だ。
侯爵家令嬢としては、溶けるような金髪にエメラルドみたいな瞳をしてはいるものの、容姿も頭の良さも平凡だ、と思っている。
でも、跡継ぎとしてはとくに問題ない。
現当主の父上もそう言っている。
何故なら、アナナッサ侯爵家はアイステリア王国建国当初からある非常に古い家であり、優秀な取り巻き貴族や家令や使用人やメイドたち人材がはるか昔から確保できているのだ。
勝てる駒が私以外にいっぱい揃っている。
だから、私はアナナッサ侯爵家を繋げさえすればいい。
当主の私が優秀でなくても問題ない……………………、というのはいいわけだ。
「黒46。私の勝ちだ」
「もう一回もう一回! お姉さま、もう一回勝負よ」
「いいよ、でも私の分の書類を手伝ってくれるかな」
「もちろん。だからもう一回勝負よ」
妹は私にリバーシで負けて悔しがっている。
跡継ぎとして私に割り振られた書類を手伝ってもらう事を条件に、もう一回勝負を了承した。
私は前世の記憶を思い出す前から、悪役令嬢である妹にゲームの勝負で勝って、書類を妹に手伝ってもらっていた。
容姿も貴族として平凡なら、将来の侯爵家当主としての能力も平凡な私だが、唯一勝てるものがある。
なんと、悪役令嬢である優秀な妹にありとあらゆるボードゲームで勝っていた。
前世では様々なインドアゲームが好きだった私だ。
悪役令嬢である妹が出てくる乙女ゲームもプレイしていた。
ずばり乙女ゲームの題名は「ラブゲーム必勝法〜盤上の恋は譲れない〜」という。
意外と普通の題名だ。
乙女ゲームの内容としては、ゲームが得意なヒロインがボードゲームが流行っている学院に入って、攻略対象者たちとボードゲームをして、勝つと好感度が上がる、というものだ。
また、ボードゲームに順調に勝って、攻略対象者の好感度をめきめき上げようとすると、それぞれの婚約者が立ちはだかる。
特に強敵だったのが、この国の王太子と婚約している我が妹だ。
ビオレッタ・フラガリア・アナナッサ。
そう、私の妹。
結構ボードゲームが強くて対戦のしがいがある。
私は、前世を思い出す前から、ボードゲームが得意な事を武器に、悪役令嬢なだけあって優秀な妹に当主として勉強し処理する書類を手伝ってもらっていた。
私はとにかくゲームが好きで、跡継ぎの勉強として必要な書類を細かいことを妹にやってもらって(決断を出すための書類集めの指示や細かい計算等)、私はほとんどチェックしてハンコを押すだけにして終わらせていた。
さすがに最終的な方針決めやアイデア出しは私がやっていたけれど。
前世を思い出す前の外道な私は、この先何年分もの妹の手伝いをゲームに勝って確保していた。
いや、さすがに私だって、妹は私と同じで将来は結婚して、私とは違ってこの侯爵家を出ていくわけだし、10年分以上の手伝いを確保した時点で、
「もうこれ以上はゲームで勝負してもしょうがない。やめよう。ビオレッタも結婚して私の書類を手伝いにくくなるだろうし」
って言った。当然だ。
嫁ぎ先に書類を送るわけにもまいらない。
そしたら、ビオレッタが、
「あら、お姉さま、勝ち逃げするんですの?」
って言ったから、私もそれを言われては…………………!!! という感じでゲームでの勝負は続いている。
もちろん同じゲームでの勝負はフェアじゃないから、前世を思い出す前からゲームを思い出していた私が提案したゲームでの勝負をやった。
ゲームが流行っているこの世界には、もちろん、前世と似たようなゲームはある。
主にチェスや将棋やトランプに似たゲームが盛んだった。
そのほかに、私は「花札」や「リバーシ」、「すごろく」や覚えている限りのゲームで勝ち続けた。
妹に勝ち続ける私は、ボードゲームの流行りに乗っかって、ボードゲームの貴族サロンにも子供ながらに参加した。
「はっはっは、アナナッサ侯爵令嬢は強いな。全然勝てない」
とは、貴族サロンのボスであるディアマンテ公爵様の言葉だ。
それでも、例えばリバーシでディアマンテ公爵様は、私に10回に1回位は勝っている。
まあ、私もずるいと思う。
ボードゲームの経験は前世も含めて長いし、その長い経験が若い頭脳に載ってるのだ。
後、もちろん前世では散々いろいろな攻略法を見て研究している。
本やネットやゲーム、前世は膨大な情報で溢れていたっけ。
前世で見た攻略法を思い出してはメモに書きだしている。
いつか、本にまとめて出版しようかな。もちろん、ぼったくり価格で。
「これだけ勝っているんだ。何かアナナッサ侯爵令嬢は欲しいものはないのかな」
とのディアマンテ公爵様の言葉を聞いて、私はある事を閃いた。
欲しいものと言っても、嫡女としての政務は妹にも、屋敷の者たちにも最大限手伝ってもらっている。
お金も侯爵令嬢としてのお小遣いと、周辺の鉱山や商会への投資で潤沢にあった。
後は、自分の平凡な能力を補ってもらうために……………………、
「欲しいものはありません。ですが、お願いがあります。私は将来侯爵に、妹は王太子妃になるわけですが、何かあった時には、この勝負に勝った回数分味方をしてくださいませんか?」
とのお願いをディアマンテ公爵にした。
私はにっこりと微笑んだ。何気ない子供のお願いだ。
今、私とディアマンテ公爵はこれも私の得意なチェスをしている。
私の得意なものはボードゲーム位だ。
私の社交能力は平凡。
上手い立ち回りも鋭い交渉もできない。
ゲームに勝ったら金銭の代わりに何かをしてもらう。
皆の協力を取り付け続ければ、悪役令嬢の妹がヒロインに恋愛遊戯で負けても断罪は免れる………かもしれない。
妹が断罪されたら、当然実家のアナナッサ侯爵家の凋落も免れないから……………。
だって、公爵様なら王族の親戚だもの。
公爵様に何か味方してもらえれば。
「チェックメイト、です」
「…………もちろん、かわいい君たち姉妹の味方をさせてもらうよ」
ディアマンテ公爵の渋い美貌が私の前で微笑んだ。
………ボードゲームの貴族サロンでの勝負後、ディアマンテ公爵は私に魔法契約の書状で私たち姉妹に協力する旨を約束してくれた。
味方する回数は私の勝った回数が更新されるたびに回数が更新された書状が届いた。
そして、私は前世の知識チートの力もあって、ボードゲームの貴族サロンの皆さまとの勝負に勝ちまくり、皆さまとの協力を取り付けた。
後は、おまけというわけでもないけれど、同じくボードゲームの貴族サロンにきていたディアマンテ公爵の遠い親戚のテーゼッタ伯爵の次男レオン・ミラリウス・テーゼッタを婿としてゲットした。
同じ年齢でイケメンの良さげな婿だ。
私には勝てないけれど、ボードゲームにそこそこ強い。
「君と結婚したら僕が勝てるまで勝負し続けられるだろう? 領地経営は任せてくれ。君がボードゲームに集中できるように完璧にやるから」
とは未来の旦那様レオンの言葉だ。
すごく頼もしい。
そんなこんなで、ゲーム三昧、時々は領地経営の勉強などして月日は過ぎていった。
周りが優秀すぎるので、私は特に頑張ることはなかった。
それは私が学園に入学しても変わらず………………。
そして乙女ゲームの強制力なのか、妹が学園に入学する時、ヒロインもまたそこに居た。
私もヒロインを見たいけれど遠目に廊下の向こうにチラリと見たっきりだ。
妹の話では、
「男爵家令嬢の方で、今まで見なかった方が婚約者がいる殿方にボードゲームで勝負を挑んでくるんですの」
との事だ。
この前、ディアマンテ公爵とボードゲームをしながら話したけれど、
「レモニア男爵家がメイドに産ませた子を引き取ったらしい。最近まで、平民として暮らしていたそうだ」
との事だった。
ヒロインにありがちな話だった。
……………、私は好奇心に負けて下級生のボードゲームサロンにヒロインを見にいった。
「えっ、勝てない!? こんなはずじゃ…!」
学園内の使用人に扉を開けてもらって入室すると、ちょうど乙女ゲームの攻略対象とヒロインの勝負がついたところのようだった。
女子の悲鳴が響いている。
ヒロインだ。
ヒロインと教えられなくても、貴族令嬢としてゲームで大声を上げるなどありえないからだ。
きっと最近まで平民だった方だろう。
対する勝ったらしい貴族令息は、確か騎士団長の令息だ。
覚えてる。
確かボードゲームサロンでは最初は私にボロボロに負けていたけれど、徐々に時々良い手を打つようになっていた。
あ、そうそう、乙女ゲームでは難易度が一番易しいキャラクターだった……………………。
あれ……?
あっ、やばい。
私がボードゲームの貴族サロンで何回も対戦して、鍛えてしまった。
確かに一番最初は同年代の中でゲームに弱い人だった。
筋はいいのに、少しでも勝ちが見えると自覚なく油断して甘い手を打つし、トランプとか花札とかではいい札がくると顔に出る。
『油断しない。これは罠で、ここに打たせるために一時的に相手に取らせてるんだよ』
とか、
『顔に出てるよ、引き締めて。話でもしながら何気なく』
とか散々言った。
「アタシ、平民の中でも強かったのに! 何で勝てないの? ゲームと違う!」
「ゲームと違う? 何のゲームかな?」
ヒロインの悲鳴に騎士団長令息が、次の手を打ちながら質問をしている。
盤上が後半になって、騎士団長令息が仕掛けた罠だらけになってる。
多分、ヒロインが言っているのは乙女ゲームの事だろう。
見事にテンプレなヒロインだ。
確かに打ち筋を見ているとそこそこ強い。
しかし、それは平民の中では、という事だろう。
平民はボードゲームは遊びなのかもしれないけれど、貴族の中ではゲームがうまいのは一種のステータスだから。
…………そこからヒロインは何回も騎士団長令息に勝負をしかけて失敗していた。
私も平民の打ち筋は面白いから、長時間見入ってしまって、私を探しに来たレオンに回収されてしまった。
長時間観戦で立っていたから足が痛い。
「座ってみればよかったのに」
「いや、立ってみた方がよく見えるから」
「君って人は………」
のような会話をレオンと繰り広げながら帰った。
そして、次に下級生のボードゲームサロンに行くときには、レオンが心配だからというので一緒に行くことを約束させられるのだった。
…………その後も妹の話では、ヒロインは男子にボードゲームの勝負を挑み続けて負け続けたらしい。
男子に勝てないと見るや、ヒロインは男子の婚約者の方にも勝負を挑んできたがいずれも惨敗だったようだ。
まあ、皆、私が鍛えてしまったし、本人たちも研鑽を続けていたしな。
特に、ウチの妹は、
「あまりにもレモニア男爵令嬢が拙いので指導してしまいましたわ」
と言っていた。
おおぉ、敵に塩を送っている…………。
妹の表情が若干楽しそうだ。
……………、そしてそんな事もありつつ、ヒロインのレモニア男爵令嬢を見たのは私の学園卒業のダンスパーティーの時だった。
どういう事かというと、基本的に卒業生主体のダンスパーティーだが、もちろん卒業生と親しい下級生も入れる。下級生と婚約者だったり友人だったりするものもけっこういるからだ。
私はもちろん妹とレオンと卒業パーティーを楽しみたくて、妹は呼んだ。
「皆さん! 聞いてください! 私はビオレッタに虐められました!」
一緒に居る妹の名前が呼びつけにされて振り返ると、そこにはレモニア男爵令嬢つまりヒロインがいた。
本来ならこの騒ぎはレモニア男爵令嬢の学年の卒業パーティーでやるはずだ。
だって、私の学年の卒業パーティーだから、攻略対象が何人かいないし、メインヒーローの妹の婚約者つまり王太子もいない。
「散々ボードゲームが弱いことを馬鹿にされて。弱い者いじめとばかりに、教科書を破って来たり、階段から突き落とそうと押してきたり! 皆で陰口を言ってきたり! 果たしてそんな人が未来の王妃になっていいのでしょうか?!」
本来なら後2年後にいうセリフをヒロインは今言っている。
とくかく焦ったような必死の形相だ。
横にはおろおろしている男爵令息がいる。この人がパートナーとして呼んだのだろうか。
でも、3年生が多いこの場じゃ事情も分からない人がいるんじゃなんだろうか。
それとも事情が分からない人が多いこの場で、あえて訴えて同情を引こうという作戦か。
少なくともビオレッタはそんなことしてないし、絶対にしない。
そう思って横に居る妹を見ると、その表情は『無』だった。
………おぉ、無表情が怖い。
でも、それもそうだろう。
ヒロインが喧嘩腰とはいえ、一緒に同じ机を囲んでボードゲームを遊んで、なおかつ妹はヒロインのボードゲームも指導していたのだ。
「アナナッサ侯爵令嬢はそんな学園の秩序を乱すことはしていない。私がディアマンテ公爵家の名に懸けて保証しよう」
私やレオンが何かいう前に父兄参加できていたディアマンテ公爵様が発言した。
渋い美貌を引き締めて、ヒロインをきつく見つめている。
ディアマンテ公爵様の息子さんも参加している中で、この騒ぎは非常にまずいのではないか。
それはそうと、ディアマンテ公爵様が、すかさず私たち姉妹つまり妹の味方になってくれて、ボードゲームの時の約束が果たされてそういう場合じゃないけれど感動した。
まあ、そもそもディアマンテ公爵様の息子さんが通っている学園(王族の親戚)で、そんな問題を発生させるわけがない。
皆、仲がいいし、皆でボードゲームやっているし、何回も挑戦してくるレモニア男爵令嬢に感心しこそすれ、陰口なんて叩かない。
まあ、レモニア男爵令嬢はやっぱり殿方にちょっとすり寄っているかな、とは思ったけれど。
攻略対象者たちは、しっかりと自分の婚約者たちを大切にして節度を保っている。
ゲームでも思ったけれど、レモニア男爵令嬢がいくら攻略対象者達に言い寄ったとしても、攻略対象者達がしっかりと自分の婚約者たちを尊重していれば何も問題はないのだ。
やっぱりゲームじゃない現実は違う。
そもそも、新しく入ってきた男爵令嬢を皆、温かく迎える事はあっても、冷遇するなんてことはあり得ない。
貴族の仲間だ。
この国を支える仲間であって、排除するべき相手ではない。
多分、私の学年にも編入生(長年の病気がよくなり学園に編入できた)がいたが、同じように一緒にボードゲームをしたり、一緒に学園生活を送る中で仲良くなれるように皆、努力したはずだ。
「そうだ。私もそのような問題が起きているとは聞いていない。まさか私の管理不足だとは言うまいな」
攻略対象者の一人、私の学年の魔術師団長の息子で生徒会長の男子が気取った口調で発言した。
「私もこの子と同じ学年で同じクラスですけど、そんなこと起きてませんでした。この子はむしろ男子と仲良く楽しそうに学校生活を送っているように見えました。教科書もバラバラになっているのとか見た事ない。むしろ、この子、あまり教科書開かないからいつもピカピカですっ」
同じくダンスパーティーに来ていた下級生の一人が、発言した。
あまり数が多くない下級生たちが、我も我もとヒロインの言葉を否定する。
「何よ何よ、皆寄ってたかって! それこそがアタシに対するいじめだわ!」
レモニア男爵令嬢がヒステリーを起こしたように、手足をバタバタと動かす。
貴族令嬢として見苦しいものだった。
きっと、ヒロインも私と同じで前世の記憶を持っているのだろう。
そこで、私は、ヒロインがゲームの世界に生きていると思うのなら、場をおさめられそうな方法を思いついた。
幸い必要な道具は、卒業パーティー用のドレスであっても隠しポケットに持っている。
「私の妹はやっていない。しかし、そこまで言うならリバーシで勝負だ。このゲームに勝ったら君のいう事を認めよう。私が勝ったら妹に疑いをかけたことを謝罪して金輪際、妹に近寄らないでくれ」
「お姉さま、そんな勝負受けるわけが!」
私の言葉に無表情だった妹が、あまりにもヒロインに勝ち目のない勝負だと声を上げる。
貴族なのに妨害してくるものに情けをかけてどうするのだろう。
「あなた悪役令嬢の姉なんてモブね。いいわ、受ける。私が勝ったら認めてくれるのね」
「ああ、私はこの子の姉だ。私の力で何とかしよう」
「えっ、受けるの?」
私の挑戦を受けてしまったヒロインに対して、妹が貴族令嬢としてはやや素っ頓狂な声を上げる。
「それでは、あっちの隅でやろう。ゲームに集中できないから」
ドレスの隠しからリバーシセットを取り出して、ヒロインを皆の邪魔にならないように隅に誘導する。
……………………そして。
「黒64。私の勝ちだな」
「嘘っ!! うそうそっ!」
ヒロインが大声をあげる。
いや、一年間他の貴族たちと対戦してたはずなのに、ヒロインはなんというか……………………弱かった。
「お姉さま、残念そうな顔をしているけれど、レモニア男爵令嬢が私たちを鍛えたお姉さまに勝つなんて無理よ」
勝負を見守っていた妹が、ヒロインに気の毒そうな顔を向ける。
「じゃあ、これにサインを」
「ありがとう、レオン」
私とヒロインが勝負している間に、できる婚約者のレオンが、ヒロインの私の妹に対する接見禁止令の魔法の書状を作っておいてくれた。
「うううう! サインすればいいんでしょ、サインすれば。これでいいでしょ、行きましょ」
ヒロインは、この世界はゲームという概念が強いのかゲームで負けたとみると、従順に書状にサインしてくれた。
パートナーである気弱そうな男爵令息の手を引っ張って、会場の外に向かっていく。
会場の貴族たちは、あんな啖呵をきっておいて盛大に私に負けたヒロインに、やや同情的な視線を向けていた。
まあ、将来の王太子妃に接見禁止となったのだから、今後ヒロインは大人しく領地にこもって暮らすほかないだろう。
パートナーの男爵令息も同様だ。パートナーが王太子妃が居る場所には出られなくなったのだから。
「お姉さまの処置は甘いけれど、実害はなかったのだし、これでいいのかもね」
妹が小さくそう呟く。
まあ、そうだろう。
派手に断罪返しをして、苛烈な王太子妃となってもそれはそれで私が妹が怖い。
特に今回、ヒロインのせいで婚約者との仲が壊れた貴族令息はいなかった。
皆、ボードゲームが強く、ヒロインを返り討ちにしたし、自分の婚約者とも仲良くボードゲームをプレイして仲を深めていたらしい。
「私も頭に血が上って、こんな一方的なゲーム展開をしてしまうとは未熟だな。そろそろボードゲームは引退…………」
「あら、お姉さま。勝ち逃げは許しませんって私、前に言いましたよね?」
「ははっ、そうだったな」
何気なく呟いた言葉に、妹がすかさずビシッと言ってきて、私は笑った。
「ボードゲームもいいですが、騒動も片付いたことだし、僕とダンスを」
私の婚約者のレオンがそう言って微笑んで手を差し出す。
「よし、踊ろう」
私はそう言って、レオンの手を取った。
ーおわりー
読んで下さってありがとうございました。
もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。
また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。