第67話 聖獣の誓いと民の前にて
パウルの裁きから一夜が明けた王都には、静けさと希望が同時に流れていた。
王宮前広場には民が集まり、今日の式典を今か今かと待ちわびている。
王宮のバルコニー。
そこにクラリスとレオンが並んで立った。
「……本当に、ここまで来たのね」
小さく息を吐いたクラリスに、レオンが微笑む。
「これからが始まりだよ。民に、僕たちの覚悟を見せよう」
王が一歩前に出て、宣言する。
「ここに宣言する。
我がヴァルゼン王国は、聖獣の加護を受け、新たな道を歩み始める。
クラリス・エインハルト嬢を、レオン第二王子の婚約者として認め、
共にこの国を導く者とする!」
民衆から歓声が上がり、拍手が響き渡る。
その中でクラリスが一歩前に出た。
「皆様、私は聖獣の生まれ変わりとして、ヴァルゼンに加護を与えました。
ですが、それだけではこの国は救えません。
民が力を合わせ、学び、思いやりを育むことで――
本当の豊かさは育まれるのだと私は信じています」
その瞳は、まっすぐ民を見ていた。
「どうか、私とレオン殿下を信じてください。
この国の未来を、皆と共につくっていきたいのです」
静まり返っていた広場が、今度は熱を帯びた歓声に包まれた。
ーーー
その夜――
王宮のテラスには、柔らかな月の光が差し込んでいた。
クラリスとレオンは、式典の余韻が残る中で静かに寄り添っていた。
「今日は本当に……夢みたいだったわ」
「夢じゃないよ、クラリス。君が努力して、信じてきたから。
だから、みんなの前で、こうして並んで立てたんだ」
クラリスがレオンの肩にそっと頭を預ける。
その足元に現れた黒猫――セドがしっぽをふわりと揺らしながら言った。
「ずいぶん甘い空気だな。……でも、悪くない」
クラリスがくすっと笑い、レオンが微笑む。
セドは小さく伸びをしながら言った。
「猫神様が導いた縁だからな。
俺も、君たちの未来を見届けるのが楽しみだよ」
クラリスはその言葉に、静かに頷いた。
「……これからも、たくさんの壁があると思う。
でも、私はこの国を、そしてあなたと生きていくこの人生を、大切にしたい」
レオンは優しくクラリスの手を取り、そっと唇を寄せた。
「僕も。君と一緒なら、どんな未来も歩いていける」
そして、二人の間には――
黒猫セドがにやけ顔でちょこんと座っていた。
「ほら、そろそろ寝ろ。明日からまた忙しくなるぞ」
クラリスはレオンと顔を見合わせ、笑い合った。




