第66話 裁き
朝の陽が差し込む王宮の大広間。
磨き抜かれた大理石の床に映る光が、緊張に満ちた空気を際立たせていた。
王と高位の議員たち、王族、民の代表が集まり、
第一王子パウルの裁判が始まろうとしていた。
クラリスは王の隣に座し、レオンと共に見守っていた。
セドはクラリスの足元に静かに座っている。
「これより、第一王子パウル・ヴァルゼンに対する審問を開始する」
王の低く重々しい声が、場内を揺らした。
パウルは堂々とした態度で壇上に立つ。
その深緑の瞳は落ち着いていた。
「私の行動はすべて、この国の秩序と未来のため。
混乱をもたらしたのは、むしろ無責任な改革者たちです」
だが王の命を受け、記録係が証拠の束を次々に読み上げた。
傭兵を雇ってクラリスを襲撃させた契約書
癒しの家に仕掛けた妨害工作の指示書
貴族たちへの秘密裏の金銭授受の記録
証人として登壇した元騎士たちは、
「第一王子の命令で……」と声を震わせながら証言した。
「証拠は十分に揃っている。お前の行動は、国家に対する裏切りだ」
王の声が厳しく響くと、貴族席からざわめきが起きた。
「第一王子パウル・ヴァルゼン」
王はゆっくりと立ち上がり、パウルを見下ろした。
「貴様の行動は、国家の根幹を揺るがす重大な背信である。
この国と王家を危機に陥れ、改革を妨げた罪は重い」
一瞬の静寂の後――
「ゆえに、本日をもって王族としての身分を剥奪し、全ての役職と権限を失わせる。
宮廷への立ち入りも禁ずる」
その言葉が告げられた瞬間、広間はどよめきと溜息に包まれた。
パウルは無言で壇を降りた。
その背中には、かつての誇りと野望の全てが失われていた。
出口に向かうその姿を、誰も呼び止めることはなかった。
黒猫のセドが静かに呟いた。
「ようやく、王国が前を向けるな」
クラリスは静かに頷き、深く息をついた。
「でも、まだ終わっていないわ。これからが本当の始まり」
広間に漂う緊張は、次なる未来への幕開けを告げていた。




