第63話 暴力と誤解
青空の下、今日も「癒しの家」は静かに開かれていた。
ふわふわの猫たちが日向ぼっこをし、ハーブの香る空間で、訪れた人々が心を癒されていく。
そんな穏やかな空気が、突然の怒声によって裂けた。
「こんな偽善、やめろ!!」
振り返ると、怒りに満ちた5人の男たちが門を乱暴に開けて入ってきた。
「魔法ばかりで民を操るな!」「お前のせいで税が上がった!」
言葉と共に、1人の男がクラリスに向けて石を投げつけた。
その瞬間、クラリスの背筋がぞくりと震える。
クラリスは反射的に手を掲げた。
「《ディフェンシア・リバウンド》!」
シールド魔法が展開され、投げつけられた石を跳ね返す。
しかし、他の男たちはそれを合図に一斉にクラリスに襲いかかってきた。
拳、棍棒、そして刃物すらあった。
クラリスは防御結界を張りながら、なるべく相手を傷つけないよう加減しようとした。だが、攻撃の一撃が刃先ごと跳ね返され、ひとりの男が足をくじき、もう一人は倒れた拍子に頭を打った。
「怪我をさせたくなかったのに……!」
クラリスはすぐに魔法で応急処置を施したが、民の目には「自分たちが攻撃された」という思いだけが残った。
「やっぱり、支配しようとしてるんだ……!」
その言葉に、クラリスの胸は締めつけられた。
人々の心を救おうとしていた場所で、自分の魔法が誰かを傷つけてしまった――。
その事実が、クラリスの中に深く突き刺さった。
その晩、パウルの執務室。
従者が小声で報告する。
「癒しの家で、民が魔法で弾き飛ばされたそうです」
「……ふふ、そうか。それは“大きな揺さぶり”になりそうだ」
パウルは椅子にもたれかかりながら、ふっと口元を歪めた。
「クラリス。君の甘さが、ようやく牙になったようだね」




