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婚約破棄された公爵令嬢は、実は世界一可愛い猫聖獣だった件 〜猫聖獣として世界を救います〜  作者: 風谷 華


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第60話 星降る庭園と二人の誓い

夜の王宮、白薔薇が咲き誇る庭園――

昼の喧騒が嘘のように静まり返ったその空間に、クラリスはひとり佇んでいた。


銀の髪が月光を受けてふわりと揺れる。

その横顔はどこか寂しげで、美しいのに儚さを含んでいた。


「……クラリス」


静かに響いた声に、クラリスは振り返る。

レオンが立っていた。金の髪が月光にきらめき、紫の瞳が彼女をまっすぐに見つめていた。


「来てくれたのね」


「呼ばれたら、必ず行くって言っただろう? クラリスのことなら、いつだって」


その優しい声に、クラリスの心が少しだけ緩む。


「ありがとう……でも、今日は……少しだけ、甘えさせてほしいの」


「……どうしたの?」


クラリスはゆっくりと歩み寄り、レオンの前で立ち止まる。


「私は、この国でたくさんのことをしてきた。

猫カフェを作って、癒しの家を広げて、政治の仕組みにも踏み込んだ。

でも、それが本当に正しいのか、誰かの幸せに繋がっているのか……自信がなくなる時があるの」


ぽつりぽつりと紡がれる言葉に、レオンは黙って耳を傾けた。


「私は、ただ――幸せになりたかったの。

でも、私は聖獣として生まれ、また人として生まれて……

その度に愛する国を残して去らなければならない。

もう、そんな繰り返しはしたくないの。

誰かの笑顔を、ただ見ていたいの。ずっと、そばで」


その声に、レオンはそっと彼女の手を取った。


「クラリス……それなら、君の幸せの中に、僕を入れてくれないか?」


「……え?」


「君のために僕はここにいる。

この手を取りたい。君と一緒に未来を歩いていきたい。

君の迷いや不安も全部、僕が抱きしめるから。

だから、君も、僕を頼ってほしい」


クラリスの瞳が潤み、レオンをじっと見つめた。


「……本当にいいの? 私にはたくさんの秘密があって、たくさんの越えるべき障害があるのよ」


「知ってる。でも、そんなクラリスが好きなんだ。

聖獣としてでも、公爵令嬢としてでもなく、

君のその強さと優しさに惹かれた」


クラリスはそっと微笑み、レオンの胸に身を寄せた。


「……ありがとう、レオン。私も、あなたが好き。とても」


そのまま、ふたりの距離は自然に縮まり、

レオンの手がクラリスの頬を包み、優しく唇を重ねた。


星の降る夜。

それは、ふたりだけの小さな誓い。

世界がどう変わろうとも、この想いだけは、きっと変わらない。


ふたりがそっと離れたその時――

ふさふさの黒い毛並みを揺らし、セドが姿を現した。


「やれやれ、ようやく落ち着いたようだな。ふたりとも、おめでとう」


「ありがとう、セド。君にも感謝してる」



「セド……!?」


クラリスが驚いた声を上げたのは、セドの“言葉”がはっきり聞こえたからではない。

レオンがその言葉に自然に返したからだ。



「……え、ちょっと待って、レオン……セドの言葉、分かるの?」


レオンは少し照れくさそうに頷いた。


「うん。気づいたら、普通に聞こえてた。たぶん、クラリスが心を開いてくれたからかな」


「なっ……。そんな……」


セドがふふ、と笑う。


「この子はもう、自分のすべてを君に託したってことだよ。

私たち猫の言葉を理解できる人間なんて、そうはいないからね。

誇っていいよ、レオン。

そしてクラリス――君が幸せになること、それが猫神様の望みだ。

だから、どうかこの想いを忘れずにいてくれ」


クラリスの瞳に、静かな涙が浮かぶ。


「……うん。ありがとう、セド。私、頑張るよ。大切な人たちと一緒に」


星の光が降り注ぐ庭園に、ふたりと一匹の影が寄り添っていた。


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