第48話 揺れる民意、立ち上がる人々
第一王子パウルサイドからの情報戦が効を奏し、数人の重臣が口を開く。
「本当に貧困層に届くんですか?」
「税負担は追って明らかにされていません。予算オーバーの懸念があります」
声は穏やかだが、明らかに懐疑を孕んでいた。
議長は重く頷き、生真面目にこう促す。
「クラリス殿、噂に説得力を与えているのは、事実や数字ではなく不安です。ご説明を」
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クラリスは静かに息を吸い込み、目の前の議場に向き直った。
「私の提案は民のためにあります。税金も、透明に使います。
備蓄に回す物資の量、その配分計画、鉱山開発で得られる利益、それらはすべて、資料としてここに提出します」
手元の書類を丁重に差し出す。
「今日この場で、資料をお見せし、説明します。
噂や不安ではなく、事実に基づいた選択をしてください。」
重臣たちは資料に目を落とし、数分の静寂が流れた。
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そのとき、王宮内の小扉が静かに開き、中年の商人が一歩進み出た。
「私は市場の者です。昨夜、クラリス様の説明会に参加して…
実は初めは少し疑っていました。ですが、説明を聞いて賛成に変わりました」
彼は胸を張る。
「税金だと言われましたが、貧しい人が助けられるならそれでいいと感じました。
備蓄がある安心、鉱山が生む仕事――それが国を強くすると感じたのです」
議場も一瞬静まり、その後に温かなざわめきが広がり始めた。
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続いて、教会長老メルギスが立ち上がる。
「我々神官団も、この政策に賛同します。
信仰は心を支えますが、体を支える勇気も必要です。
猫神は心と物、両方の幸せを望まれているはずです」
その言葉に、多くの支持が集まり、信仰層の安堵の空気が漂った。
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パウルは眉をしかめながら立ち上がった。
「…たしかに資料は揃った。だが、本当に実行できるかどうかは未知数だ。
税負担を増やす前に、我々は国の収支と民の負担を見極めねばならん!」
しかしその声は、既に重臣たちの多数派を失いかけていた。
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しばらくの議論の後、議長は厳かに口を開く。
「クラリス殿の提案は、資料と実証可能性においても十分に評価できる。
本案は修正を加えつつ、この場で可決とする。満場一致とは言えぬが、
多数の支持により実行に移すことを決定する!」
議長の槌が静かに下ろされ、議場には清々しい決着の空気が広がる。
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クラリスは深く頭を下げ、でもその目には前より強い光が宿っていた。
「ありがとうございます。私は必ず、この国の心と未来を守ります」
レオンと支援者たちも拍手を送る。
そして王も静かに、しかし確かな笑みを浮かべていた。




