第47話 歪められる真実
時は夕刻。王都の広場、掲示板の前に人々が集まり、口々にざわめいていた。
そこには“癒しの家”に関する新たな伝聞が貼り出されている。
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『養老減額?備蓄支援=税金投入』
『貧困者に優先配分と称し、特定グループ優遇?』
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「やっぱり……税負担が増えるんじゃないか?」と、老婆が財布を気にする。
「鉱山開発も……環境破壊が先だ」「採掘労働の過酷さが増すだけじゃないか」と若い男性が眉をひそめる。
噂は次第に広がり、人々の不安は深まっていた。
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教会の礼拝堂では、信徒たちが集まり、不安げに告解の順番を待っていた。
ある未亡人が涙ながらに語る。
「クラリス様が良かれと思ってやっているのかもしれませんが……
貧困の救済と言っても、税金で動かないと実現しない。
それこそ、神聖な教会が政治に染まりかねないという話もあります」
神官長メルギスもその声に静かに耳を傾けていた。
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クラリスは、教会のメンバーとともに“癒しの家”へ立ち寄り、市民に直接向き合う時間を設けた。
そのなかで、彼女はある青年と出会う。
青年は眼差しを曇らせながら問う。
「クラリス様、本当に僕たちのためにやってくれているのか?
けれど今、正直心配になっています。
これ、本当に誰かのためになるのか……」
クラリスは静かに彼の目を見つめ、一度深く息をついてから語り始めた。
「わたしは、誰よりも先に“貧しい人”に届くようにしたい。
税金ということは確かに出てしまうかもしれない。
けれど、それはあなたの安心を守るための投資です。
何も知らず、嘘だけを信じられたままでいてほしくなくて――ごめんなさい」
青年は戸惑いのあと、そっと涙を流した。
「ありがとう……信じます」
その一言に、クラリスは意思の強さと思いやりを胸に刻んだ。
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後日、メルギスは神殿の前で信徒たちに語った。
「“癒しの家”とそれに続く備え、鉱山活用による繁栄は、
神様の加護があるからこそ目指せる未来です。
神聖さも、心の支えも、物質的な備えも否定してはいけない」
—と。
信徒たちはそこで初めて、“信仰”と“政治”が共存できる可能性を知った。
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レオンは仲間たちとともに、市場にて「癒しの家の説明会」と題した集会を開いた。
そこでは、税負担がどの程度になるのか、どのように資金が使われるのかが丁寧に提示される。
貴族や商人も含め、約百人が集まり、対話を通じて理解が深まっていく。
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その頃、パウルは宮廷の深奥でグレンに命じた。
「情報を出せ、“反クラリス”の声を拡散させろ。
難民国家になるという恐れを植えつけるのだ。
ただし――表向きは“貧民の心配”。
下品ではなく、偽善の皮を被った批判を流すのだ」
グレンは冷たく笑み、準備の指示を開始した。




