第36話 癒しと信仰の猫カフェ構想
クラリスは、王宮の会議室の片隅で、大きな羊皮紙を机に広げていた。
猫のイラストが踊るその紙には、建物の見取り図と施設名の候補が書き込まれている。
「……“癒しの猫カフェ・ねこのしっぽ亭”……ちょっとかわいすぎるかしら?」
眉をひそめながら悩むクラリスの後ろから、にゃあとひと鳴き。
机に飛び乗ってきたのは、もちろんセドだった。
「よくある名前だな。もうちょっと捻れ」
「ふふ、あなたにネーミングセンスを求めるつもりはないわよ」
クラリスは笑って、紙の端をくるくると巻いた。
その視線は、どこか遠くを見ていた。
「この場所に、猫たちと人が一緒に過ごせる“癒しの空間”を作るの。
ただの店じゃない。“心を癒す共同体”。
森のカフェと同じように、誰でも来て、誰でも温かさを感じられる場所にしたい」
その言葉に、扉を開けて入ってきたレオンが目を見開いた。
「クラリス、もしかして……“猫カフェ”を、王都に?」
「ええ。
信仰とか、政策とか、難しい話ばかりじゃなくて。
もっと人の“心”を直接支える場所を作りたくなったの」
クラリスは図面を広げて見せた。
「猫たちが自由に歩き回って、訪れた人が自然と癒される。
食事もお茶も出すけれど、それだけじゃないの。
疲れた人が、黙って座って、ただ猫を撫でるだけの時間も用意するわ」
「……君らしいな。森のカフェと同じ。あの場所で、俺も癒された」
「誰かと話したい時には、スタッフとお喋りしてもいいし、
祈りたい人のために、小さな祭壇も作るつもり」
「なるほど。信仰と癒しを、自然な形で共存させるのか」
セドは尻尾を振りながら、にゃあと満足げに鳴いた。
「よし、その案、俺も気に入った。
クラリスが作るなら、癒しだけじゃなく、“誇り”にもなる場所になるだろう」
レオンは頷き、クラリスの隣に腰を下ろす。
「……準備は、俺も手伝うよ。必要な人材、場所、宣伝、全部一緒に考えよう」
「ありがとう、レオン」
彼女の心には、確かな光が差し込んでいた。
“癒し”は、与えるものじゃなく、分かち合うもの。
それを体現する“猫カフェ”は、彼女が目指す“心の共同体”の第一歩だった。




