1人称チェンジ
「悠斗、今回は一人称チェンジ構成でいくぞ」
「……それって意味あるの?」
「ある。**“読者の脳に直接バグを起こす”**効果がある」
「いや害悪じゃん」
「一人称は人格そのもの。つまり、一人称を変えるたびに主人公が別人のように深まっていく」
「深まるっていうか、混乱するだけじゃ……」
「混乱の中に“理解した気になる”読者が絶対出てくる。それがコア読者だ」
◆本文:異世界で目覚める主人公(スタートは「俺」)
俺は、目を覚ました。土の匂い。見知らぬ空。ここはどこだ……?
何かがおかしい。けど、胸の奥がざわざわしてる。
「ようこそ、勇者様」
声の主は、狐耳の少女だった。
◆2段階目:「僕」に変わる
僕は混乱していた。
だって、どうして自分が“勇者”なんて呼ばれてるのか、全然わからなかったから。
でも彼女の目を見たとき、何かが胸の中に“すとん”と落ちた気がしたんだ。
「ここで“知的で繊細な自分”アピールにシフトだ」
「人格が変わってるだけでは……?」
◆3段階目:「私」になる(いきなり丁寧語)
私は、こういう“運命”じみた展開を、少しばかり警戒していた。
“勇者”とは、つねに戦いと責任を背負う役回りだ。
ならば、今後の行動には慎重を期すべきだろう。
「ちょっと“参謀ポジ”入れてみた」
「これもう複数人格じゃないのか……?」
◆4段階目:「ワイ」、軽率な陽キャ化
ワイ、マジで驚いたわ!
なんか急にドラゴン飛んできてんけど!?
しかも“自己紹介の途中”やったのに!そんなんアリか!?世界観ェ!
「ノリで読ませる転換点や」
「読者も混乱しとるわ!」
◆5段階目:「儂」──急に和風老成キャラ化
儂はかつて、この地に似た景色を見たことがある……ような気がするのぅ。
あれは確か、拙者がまだ十と六の頃じゃったか。
……違うな、五百年前じゃな。
「もはや前世が喋ってる」
「今までのテンションはどこいった?」
◆6段階目:「オレサマ」、中二病爆誕
オレサマは知っている。この世界が“崩壊の門”に繋がっていることを。
だからこそ、オレサマはこの剣を振るう。全てを終わらせるために!
「突然ポエム構文突入。読者、ここで完全に置いていかれる」
「お前は読者に“試練”を与えてるのか?」
◆ラスト:「我」、神格化へ
我は、世界そのものだった。
そしてこの物語は、我の夢想に過ぎなかったのだ。
ようこそ、読者よ。貴殿もまた、“物語”に囚われし者――
「最後はもう読者に語りかけて終了。完璧なメタオチ」
「完璧な迷惑の間違いでは……?」
◆公開後コメント欄
「読んでるうちに自分が誰か分からなくなった」
「こんな文章、好きな人にはたまらないやつだ」
「カオスなのに最後だけ壮大で草」
「俺→我の成長物語と見れば……見れる?」
「見ろ悠斗。“混乱してるけど高評価”ってのが一番強い」
「……でもちょっと面白いのが悔しいんだよな」
「“読者の混乱”は、創作者の勝利」




