実話"風"
「悠斗、最近“実話風”の話が伸びてる」
「……またそれか。今度は何を偽装する気だ?」
「“実話”だ。“これは実際にあった話です”って書くだけで、読者の没入感が5倍になる」
「いや、それ嘘じゃん。完全にフィクションじゃん」
「フィクションだけど、“実話風”って言ってるだけ。“風”は嘘じゃない」
「確かに……!天才か?」
奧昌が提案したのは、“実話っぽい語り口”で異世界転生を書くという荒技だった。
たとえば、
冒頭に「これは、私が高校生のときに体験した話です」と入れる
途中で「信じてもらえないかもしれませんが」と挟む
最後に「今でも、あの世界のことを夢に見ることがあります」で締める
「これで、“実話風異世界転生”の完成だ」
「いや、ジャンルがバグってるって……」
タイトル案(奧昌作)
『【実話】高校の帰り道、異世界に転移した話をします』
『信じてもらえないかもしれませんが、僕は一度だけ“魔法”を使ったことがあります』
『【体験談】あの世界で出会った“彼女”のことを、今でも忘れられません』
「これ、全部“実話風”でいける」
「……読者に怒られない?」
「怒られてもいい。“怒り”は“感情”だ。そして感情が動けば、PVは伸びる」
「……お前、もうちょっとで悪役になるぞ」
公開後…
「これ本当に実話?って思ったけど、最後まで読んでしまった」
「実話風って書いてあるけど、どう考えても異世界ファンタジーで草」
「でも、なんか泣けた。不思議な読後感」
「……なんか、勝った気がしない」
「勝ち負けじゃない。“読まれた”時点で、俺たちの勝ちだ」
「……お前、そろそろ運営にマークされるぞ」