特別編 追憶のアイリス3
エルディア家の領地で悶々と過ごす日々の中で、ある日、王宮からの使用者が訪れた。 封蝋に王家の紋章が押された書簡を手渡され、私は胸キュンを覚えた。そして、『星輝の支配者』の力を持つ私に、王宮は前線での参戦を要求してきた。 星の力を戦場で振るえば、敵軍を一掃できると期待されているらしい。
私は書簡を握り潰し、窓の外を見た。 遠くの空には星が瞬き、まるで私を見て笑っているようだ。 この力を使うたびに心の一部を驚く恐怖が、頭から離れない。 文献にあった過去の支配者の末路――愛も記憶も進み、ただ抜け殻となった姿が脳裏に広がる。
夕食の席で、父が使用者の話を切り出した。
「行きません。」
「この力は、私を私でなくする。使えば、敵を抑える前に自分が消えてしまうかもしれない。そんな力に頼って戦うなんて、嫌だ。」
父の声が厳しく響いた。
その後、敗戦の知らせが届き、私はもし断らなかったらを考えてしまった。チートスキルは、なんでも答えてくれた。
敵味方合わせて死傷者ゼロで制圧成功 : スターライトスリープを使えば100%で制圧可能
その頃から私の評価は、最強スキル持ちの神童から唯一の取り柄がなくなった悪役令嬢へと変化していった。そんな私が婚約破棄されるのもわかりきっていたことだ。まあ、平民に取られたのは今でも解せないけど。




