【閲覧注意】読後、しばらく動けなくなる物語
「悠斗、PVがまた落ちてきてる」
「……まあ、真面目に書いてるからな」
「じゃあ、真面目に“釣る”ぞ」
「……またかよ」
奧昌が取り出したのは、“タイトルだけでPVを稼ぐ”ための新テンプレだった。
『【1話で泣ける】読者の9割が涙した、たった3000文字の物語』
『【実話風】この話を読んで、人生が変わった人がいます』
『【閲覧注意】読後、しばらく動けなくなる物語』
「これ、内容がどうでも読まれる」
「どうでもって言うなよ……」
「でもさ、内容が伴ってなかったら、読者に見抜かれるだろ?」
「見抜かれてもいい。“読まれた”という事実は消えない」
「……お前、もうPVの亡者だな」
「違う。“PVの守護者”だ」
◇
実際に投稿された小説【実話】
『【1話完結】異世界でもない、転生でもない、ただの“別れ”の話』
本文は、星乃が昔書いた短編をリライトしたもの。
地味だけど、静かに沁みる話だった。
◇
「タイトルに釣られたけど、普通に良かった」
「泣けはしなかったけど、読んでよかったと思える」
「こういうの、もっと読みたい」
◇
「……なんか、ちゃんと読まれてる」
「だろ?“釣り”じゃない。“導線”だ」
「……お前、言葉の魔術師かよ」