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ラトソル
「君はとても綺麗だよ、アイリス……いや、ラトソルだっけ?」
「ええ、そうよ。その名前は捨てたもの。それより教えて。どんなとこが綺麗?」
アイリス改め、ラトソルはレオンの答えに満足した様子で顔を綻ばせている。幸い、レオンの額に浮かんだ汗玉に気づいた素ぶりは無さそうだ。
「夕焼けに染まってより赤が綺麗に——夕焼け?」
自分の台詞に違和感を覚えたレオンが空を見上げる。そして、息を呑む。
——まだ正午にもなっていないのに、空は赤く塗り潰されていた。
「……行こう」
レオンがそう口に出した時には、『聖光の剣』はとっくに出発の準備を済ませていた。
「当たり前だろ?」
「水臭いわよ」
「どうせ断ったら一人で行くんでしょ?」
——本当にいい仲間を持った。
目頭が熱くなるのを誤魔化して、レオンはくしゃりと笑った。




