幕間・前半
「なんでこうもうまく行かないんですわ!」
私はこの、『乙女ゲーム』の世界に転生した転生者。この乙女ゲームは前世でやりたかったけれど、中学生であり親も厳しかった私は終ぞプレーできなかった。では、何故この世界を知っているのか——それは私のキラキラした推しの実況を何周もしたからである。そのおかげで、ストーリーは全て頭に入っている。
私が転生したのは、ヒロイン。平民出身だけど聖属性の魔法の適性があって魔法学園に編入して、そしてアルフレッド様と出会う。その、はずだったのに——。
「悪役令嬢が失踪したせいで、アルフレッド王子と出会わないですわ!?」
私はすっかり板についたお嬢様口調で悲痛の叫びをあげる。この口調は、平民のリリエッタが貴族学園に馴染むために形から入ったのが原因である主人公の口癖である。王子様に「君は平民だろう?ふふっ面白いな」と言ってもらうイベント待ちで私も使っているのだが、そのイベントは悪役令嬢アイリス・フォン・エルディアに虐められているのを王子が気付いて発生するのだ。
そして悪役令嬢がいなくなった今、ですわ口調など平民が変な言葉を言っているだけ——要するに、「うおw」案件なのだ。クラスのみんなの冷笑が痛いが、悲しいかな癖になってしまっていて抜けないのだ。
閑話休題、最初こそ邪魔者がいなくなったと喜んだものの、実際は全くの逆だったのである。今となっては「誰かいじめてくれ」と切に願っていたりする。
「私のアルフレッド様を奪ったあの悪役令嬢、許せませんわ…!」
江戸の仇を長崎で討たんとばかりににっくきアイリスへ憎悪を募らせる。




