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追憶のルーファス 真②
ルーファスは無我夢中に剣をとる。
恐怖はなかった。死ぬのは嫌だが、生きることに何の意味も見出していなかったのだ。
侵入者を前に、低い位置から一気に加速して近づくと、その剣を振り上げた。侵入者の目が見開いた気がした——が、侵入者は咄嗟に【反射盾】を生み出して、喰らった攻撃をルーファスに跳ね返した。
そしてルーファスの肩から心臓にかけて身体が破れた。
——侵入者の実力があれば、わざわざ受けて反射しなくても、普通に殺せただろう、と第三者視点なら思うだろうが、この時のルーファスにはそんなこと分からなかった。それほどまでに彼我の戦力差は大きかったのだ。
その差は、侵入者が強かったのもあるが、一番の要因はルーファスがそもそも身体が弱い上、戦闘のセンスもなければ、誰にも技術を教わっていなかったことだ。
——それこそ、スライムしか倒せないほどに。




