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unknown  作者: 成瀬裕希
愛されたかった殺人鬼
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第四話

次の仕事のために資料を読んでいたが、端末の光を長時間受け続けて目が痛い、こうなるともう液晶は見たくない。一旦端末をデスクに置いて今朝届けてくれた新聞を手に取り読む。開いた一面は殺人事件の記事だった。記事には霧裂きジャックによる殺人と書かれていたが、殺された奴は俺のあずかり知らない奴だった。世間はおそらく霧裂きジャック、つまり俺がやったと考えているだろうが警察は腐ってもプロだ。しっかり捜査すれば、俺がやったとは考えないだろう。とはいえ、俺の真似をして殺しをする輩は俺の手で殺してやる。

「ジャックさん、博士がお呼びです」

「分かりました、すぐ行きます」

タイミングよくジジイの呼び出しだった。すぐに書斎へと向かいいつも通りのボディーチェックを行い中へと入る。

「何だファーザー」

「資料には目を通したかい?」

「まあ、一応な」

「なら良かった。新聞も読んだろう?」

「あぁ」

「ふむ、偽物ジャックはどうする?」

「もちろん、殺す」

「やはりお前ならそう答えるだろうな。そんなmy boyに部下からの情報だ。記事に書かれているジャック、お前が疑われているぞ」

「は?」

一瞬耳を疑った。だが、この人は胡散臭いが嘘はつかない。故に一旦深呼吸して冷静になる。

「もっと情報が欲しい」

「No,probrem 私ももらった情報を疑ったが、私の部下が嘘の情報を流すとは考えられない。私も情報を集めてみる」

俺は屋敷の全員に支持を出した、有川すずを守れ、と。俺はてっきり理由なりなんなり聞かれると思っていたが、皆何も言わずに指示に従ってくれてる。若干怖くなり逆に俺から何人かに聞いてしまったが、皆口をそろえてこう答えた。

「ジャックさんの頼みならなんだってやりますよ」

あのジジイが根回ししたのもありそうだった。いつか俺から皆さんに頼る日が来ると分かっていたのかもしれない。やっぱりあの人を信じてよかったと心から思える瞬間だった。


俺のやり方を知る人間は絞られる、警察内部か俺たちの仲間の誰かか。皆のことは信頼してると言えど、ジジイに恨みを持つやつの報復という可能性は捨てきれない。警察内部の人間であれば俺が直接この手で殺しに行く。強すぎるがあまり歪んだ正義感ほど面倒なものはない、そういうやつは早く始末しておくに限る。

「あの、ジャックさんの部屋ってここであってますか?」

扉の外から聞いたことがない男の声。

「えっと、どちら様で……」

「ハッキングチームの者っす」

やはりまだまだこの屋敷には何かありそうだ。それなりに長い時間この屋敷にいるがそんなチーム聞いたことがない。警戒しつつゆっくりと扉を開け確認する。すると、扉の外には姿勢の悪い、長髪の男がいた。目の下にはっきりと見えるほどのクマがあり、見るからに体調が悪いのが分かる。

「ども。ハッキングチームの一応責任者を任されてる、ジェームズ・モリアーティです。ジェーンって呼んでもらって」

ジジイや俺と同じくコードネームだから、責任者であることが分かる。この屋敷でネームをもらえるのは何かしらの責任者を任されている証でもある。

「ジェーン、か。てか、ハッキングチームって聞いたことないんだが」

「まあ、俺たち屋敷の隅っこにいるし滅多に出てこないから、ぶっちゃけ知らない人の方が多いっすね」

「あぁ……そ、そういえば要件って」

「えーっと、偽物ジャックさんらしき人物をとらえた映像があるんで持ってきました。こんな情報でも欲しかったりしますか」

「あ、えぇ、欲しいです。その映像確認したいんで、どうぞ中へ」

ジェーンを中に入れて映像を確認する。白昼堂々の出来事だった。映像の人物が何を考えているのか分からない。

「殺された奴らの身元を割り出してみたら、全員大なり小なり犯罪歴のあるやつらっす」

「なるほど、ありがとう。この映像もらってもいいか?」

「いいっすよ」

映像のコピーが終わり部屋の外まで送り届けようとすると、一枚のメモが渡された。

「これ一応どうぞ」

「これは?」

「俺たちネズミの住処っす」

「ネズミ?」

「電子という広い世界で細い通路を使ってちょろちょろ動いて情報を得ることから、そう名付けられました」

何とも皮肉な名づけだなと少し笑ってしまった。

「なんか面白い要素ありました?」

「いや、すごいことしてるのにネズミって名前は皮肉だなって」

「ほんと、あのエセ紳士わざとやってますよ」

ジェーンを送り届け、もう一度映像を見る。だが、やはりこれだけでは個人は特定できない。調査の結果待ちだな。あきらめて仕事に専念することにした。


「一緒に来ないか」腹を空かせ凍え死にそうになっていた俺に、一人の男が声をかけてきた。父親を殺し、隠れられる場所を探しさまよっていた俺にとって救いの手だった。何一つ信用できない謎だらけのおっさんに俺はついていった。一言でいえば温かい人だった。いつかの母と姉の姿を重ねていた。一緒に過ごすだけで満たされるような人。「私のことはファーザーと呼びなさい。だが、無理に呼ぶ必要はないし、父と思わなくてもいい。ジジイとでもなんとでも呼んでいい、ただ私に父親でいさせてくれ。私のただのエゴに付き合ってくれ」あの人は実の父親以上に父親だった。だから、俺は喜んでファーザーと呼んだ。普通の親子とはかけ離れているのかもしれないが、俺にとっての父親はヴィクター・フランケンシュタインだけだ。

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