表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

第七話

「見られているな」


「え?」


町を出発する準備が整い、いよいよこの町で迎える最後の朝。簡単に朝食を済ませた後、旅に必要な日用品を補充したりするために再度市場を訪れていた俺たちは、たった今携帯食料を買い込み、店主に容姿を褒められたセシリアが照れたように手を振り返していたところだった。


「変に辺りを見回したりするなよ、今までどおり買い物をしている振りをするんだ」


「わ、わかりましたわ」


反射的に後ろを振り向こうとしていたセシリアは、やや硬い動きで再び歩き始める。


最初こそ気のせいかとも思ったが、常に誰かに見られているという感覚は複数の店を回る間中ずっとついて回っていた。何者なのか、向こうが複数人なのか、目的は何かと様々気になるところではある。想定できる中で最悪の事態は、この謎の人物がセシリアの家から放たれた刺客だというもの。しかしそれにしては随分とあからさまに視線を注ぎ続けているようだし、あまりこういったことに慣れていないようにも感じられる。

最も平和な可能性は、ぱっと見では整った顔立ちのセシリアに一目ぼれしたものの、俺が横にいるせいでなかなか声をかけられない純朴な少年とか...


と、そこまで考えたところでフッとつい笑い声を漏らしてしまい、緊張気味のセシリアから不審そうな目を向けられる。


俺も随分平和ボケしたものだ。


なんだか色々と考えているのが馬鹿らしくなった俺は、相手の目的をあぶり出すために動くことに決めた。


「おい、俺と手をつなげ」


「え?な...」


だらだらと説明する時間も勿体ないので強引にセシリアの右手を握ると、そのまま人気(ひとけ)のない路地の方へと歩を進める。


「ちょ、ちょっと、なんですの?」


「安心しろ、俺も好きでやってるわけじゃない。少しの間我慢しろ」


ちょうど良さそうな路地をそれとなく横目に探しつつ、セシリアに言葉少なにそう言うと、緊張からか向こうの手を握る強さが随分と強くなったようだ。


自分の身が狙われている時の緊張は、何度経験しても慣れないものだ。その力み具合にそう納得する俺は、やがてちょうど良さそうな路地を見つけると素早く走り出し、目当ての路地に走り込む。


ここまでずっと俺たちに注がれていた視線は、路地に完全に入った今感じられなくなっていた。

俺は素早くセシリアの手を離すと、少し離れているように手振りで指示し、剣の柄に触れつつ耳を澄ませていた。


今のあからさまな行動で、いくら相手が鈍くとも自分の追跡が俺たちに気取られたと察したことだろう。

もしセシリアに惚れただけの少年であればこのあたりで断念するだろうし、もしそれでも追いかけてくるようであれば――――


じりじりと焦燥感に身を焦がされるようにして身をかがめて待っていると、まもなく足音がこちらに近づいてくるのが聞こえてきた。足音は一組。駆け足に近い急ぎ足であることから、こちらを完全に見失うことを恐れていることが伝わってくる。


相手が誰にせよ、俺たちに随分と()()()()があるのは確実なようだ。


「えっ――――――」



やや太い道から左にそれることで入れるこの横道はほぼ直角に折れ曲がっており、光がほとんど届かないため入った先の様子は外からはわからない。

ちょうど日は反対側にあり、影が道の方へ伸びて待ち伏せが気取られる心配もない。

細部に気を配って待ち構えていた俺に、追ってきた相手は全くの不意打ちを食らう形となった。


俺は左手で相手の肩口を掴むと、相手の走ってきた勢いをも利用する形で思い切りこちら側に引っ張りつつ、脛の辺りを思い切り蹴った。


「がッ....!」


苦悶の声を漏らした相手はなすすべなく地面に倒れ込み、俺はそれに巻き込まれないように身をねじりつつ、相手が完全に倒れ込んだことを確認してから左膝を背中に載せて体重をかけた。ジタバタともがく相手の右腕にこちらの左腕を絡ませることで固定し、右手で素早く相手の腰回りや懐を探る。


どうやら丸腰らしいことを確認し、ようやく相手が何かを(うめ)いていることに意識がいく。


「ど、どうか命だけは...お願いですから殺さないでください....」


弱々しくそう漏らしているのは、やや痩せ型の男で、年は俺より少し若いぐらいだろうか、必死に命乞いをする姿にはどこか哀愁すら漂っていた。


「俺たちを追ってきた目的は何だ?雇い主は?」


刺客と言うにはあまりにも頼りないその姿に俺はやや困惑しつつも、そんな素振りが気取られないように出来るだけ殺気を込めた声でそういった。


男にはそれだけで十分だったらしい。ゴクリ、と音が出そうなくらい大げさにのどを鳴らすと、苦しそうにしながらも話し始めた。


「わ、私は里からの使いの者でございます...あなた様がお連れしていたお嬢さんに用がありまして...」


と、そこまで言ったところで男は苦悶の声を上げる。セシリアに用がある、と聞いたことで思わず俺の腕に力が入ってしまったせいだ。

慌てて少し力を緩めてやるも、今度はより注意深く質問をする。


「俺の連れにどんな用があるんだ」


「こ、これを...!」


男はもはや息も絶え絶えと言った様子だったが、そこで初めて体をねじろうとした。

それに警戒を強め、膝に更に体重をのせようとすると男は慌ててかろうじて自由な左手を動かし、何かを首元から取り出すとこちらに差し出してくる。


「何だこれは...?」


差し出されたそれを見た俺は、思わずそんな声を漏らしてしまう。

何か金目のものでも差し出して命乞いをするつもりだろうと思っていたが、男の差し出したものは奇妙な生き物の姿が彫られた木彫りの護符のようなものだった。こういった護符のたぐいは特に珍しいものではない。事実、俺も狼よけに狼の神フェルをかたどったものを持っているし、他にも旅人に人気の護符は幾つかあるが、これはそのどれでもないようだった。


何度も撫でられたのであろうそれは幾分擦り減っており、男がことあるたびにその護符に刻まれた対象に祈りを捧げていたことを示していた。


「......!!」


表に裏にとひっくり返しながら、この奇妙なものの正体を示す文字でも刻んでないかと見ていると、横で静かに息を呑む音が聞こえた。


これまで固唾を飲んで一部始終を見ていたセシリアは、いつの間にかこちらに近寄ってきていたようで、俺の手にある護符を見て何か信じられないようなものを見た、というような表情を浮かべている。


「おい、どうした?」


その様子にただならぬものを感じて声を掛けるも、セシリアは無言のまま、首元から何かを取り出した。


貴族だったころからの持ち物で、燃やさず手元に残していた唯一のもの。セシリアは震える手でそのロケットを開け、中から小さな金細工を取り出した。


「ああ、やはり...!」


いまだに組み伏せられたままだった男は、セシリアの取り出した金細工を見るとそう言葉を漏らした。


「どうなってやがる...?」


まるでこの場にいる三人の中で唯一その意味を理解していない俺を嘲笑うかのように、その金細工はキラリと光を放った。



()()は一見、人のような形をしていた。しかし丸まった背中からはコウモリのようにのっぺりとした翼が2対生えており、腕は2本胸の前で組まれ、()()2()()は手のひらを合わせる形で顔の前に掲げられていた。


複腕の神、有翼の神など、ここより北の地にはよくある話だ。この像だって、どこか辺境の地の厳しさを乗り切るために、その地に住む誰かが(すが)り付くものを求めて考え出したものに違いない。

そう分かっているはずなのに、合理的に考えればそうに違いないのに、その像は妙に生々しく今にも動き出しそうな()()()があった。

まるで、実際にこのようなものが存在し、それを忠実に像にしたかのような―――――


「そ、そろそろ離していただけますか...?」


遠慮がちに足元から聞こえてきたその声に俺は我に返ると、再度武器を隠し持っていないかだけ確認した後、一度宿屋まで男も連れて行くことにした。


道中は男がイテ、とかうぅ、とかわざとらしく呻く以外は全員全くの無言で移動した。宿屋に戻ると、何やら作業中だったらしい主人は一瞬顔を上げ、俺たちを一瞥(いちべつ)するや面倒事はごめんだとばかりに顔をしかめて奥に引っ込んでいってしまった。


階段を軋ませて部屋に上がり、男をベッドの方に押し出すと俺は扉を閉め、部屋唯一の出口をふさぐような形でそこに寄りかかった。


セシリアは何かを聞きたそうに男の方を見ていたが、憮然とした表情の俺を見ると遠慮するように(うつむ)いてしまった。


「で、まずはその金ピカの像が何なのか教えてもらおうか」


気まずい沈黙を断ち切るように俺がそう切り出すと、セシリアはロケット越しにその像を撫でるように胸元に手を当てた。


「この像は、お母様がわたくしに残してくれたものの中で、()()()に取り上げられなかった唯一のものですわ。お母様は自分の故郷に伝わる守り神様をかたどったものだと仰っていましたが、それ以上のことは....」


と、そこで言葉を切ったセシリアはまだあちこちの打ち身をさすっては痛がっていた男の方を見る。


「あ、これは私の番ですかな?」


とそうどこか芝居がかった様子で顔を上げた男は、俺の表情を見ると慌てて真面目な顔つきになり、姿勢を正す。


「えー、先ほどは大変失礼いたしました。私はこちらのお嬢様のお母さまが生まれ育った里からやってきた使いの者でございます。つい先ほどまでは確信が持てず尾行のような形で後を追わせていただきましたが、今のお嬢様のお話を聞いて確信いたしました。あなた様こそが、私、いえ、我々が探していたお方だと...!」


と、話すうちにだんだんと興奮してきたのか身を乗り出す男を手で制し、俺は一つずつ気になったことを聞いていくことにする。


「あんたがセシリアの母親の故郷から来たっていうのはわかったが、結局その用ってのは何なんだ?それと、お前はどうやって俺たちがこの町にいることを突き止めたんだ?」


そもそもその里の正確な位置は知らないが、ここから優に馬で三日以上かかるローゼンブルグ領の、さらに森の奥地にあるという話だ。俺たちのたどった道のりを追跡してきたにしては明らかに計算が合わない。特に俺たちは手がかりをほとんど残さない形で、道中失踪したように見せかけてからあの場を去っているはずなのだ。それとも俺は何か重大な何かを、それこそ追手が容易に行き先を推測できるような手がかりを、間抜けにも残してきてしまったとでもいうのだろうか?


素早く思考を巡らせ内心焦っている俺をよそに、男はここで一つ息をつくと、ゆっくりと口を開いた。


「私の役割はそちらの...セシリア様を見つけ、里までお連れすることです。具体的な用事までは知らされておりません。ただ、セシリア様の()()()が必要になるとだけお聞きしております。また、どうやってこの町まで探しに来たのかという質問なのですが...」


と、そこで急に歯切れが悪くなる男。ちらちらとセシリアと俺の両方を見、そこで意を決したのか再度口を開く。



「あのう、お二人は既に()()()になられた後なのでしょうか?」




それまでの真剣極まりなかった雰囲気にそぐわない、どこまでもふざけた質問に俺はあきれ果ててものも言えず、セシリアに至っては顔を赤くし爆発寸前の様子だった。

また宿の主人が出張(でば)ってくるようなことが起きる前に、俺はさっさと誤解を解いておくことにした。


「馬鹿いえ、ガキに手を出すほど落ちぶれちゃいねぇよ。俺はただの旅の連れ、用心棒だ」


そう聞くと男はどこか複雑そうな顔をし、首を横に振る。


「では申し訳ありませんが、里の外の方にお伝えすることはできません。これは里と里長に関する非常に重要な情報ですので....」


なるほど、先ほどの一見馬鹿げたような質問は、俺がセシリア、つまり里の血を引くものとつがいといいうことであれば、多少強引な解釈で里の者だけに話せることを俺にもしゃべることが出来るかもしれないという、この男なりの考えだったのだろう。しかし先ほど話に出たセシリアの持つ力というのは、他でもない血を操るあの不思議な力のことだろう。どういうわけか里の連中はセシリアが力を持っていることを確信しているのだろうか、それとも遺伝しているだろうという予測の上での言葉なのだろうか――――


あれこれと考えをめぐらしつつも、俺は一つ試すように男の方をじっと見つめた。何か嘘を言っている様子はないかと、どんな些細(ささい)な仕草も見逃さない気でしばらく見つめてみる。


「.......」


俺の腰に下げられたままの剣に目をやり、ゴクリと唾を飲み込む男はしかし、最初に見せたひょうきんな態度から一転、唇をかみしめ決意を固めた表情をしていた。


傭兵時代に何度かこういう連中にあったことがあるが、たいていは口を割る前に死を選ぶような連中だった。何かに準じて死ぬ覚悟が出来ているということは、自分という()を超えた何かに全霊の信頼を置いている証左に他ならない。こいつにとっての里とはそれほどのものなのだろう。


「おい、どうする」


と、ここでセシリアのほうを向くと、どこか毒気を抜かれたような、冷めたような顔がそこにはあった。


「そうですわね...敵意はないようですし、その里とやらに行ってもいいのではないかしら」


こいつにとっては母親の故郷、それに自分でも完全に理解できてはいない力についてもっと情報が得られる可能性が高い場所なのだ、行きたいという気持ちは理解できる。

それに、こいつが口にしなかったセシリアの居場所を見つけた方法だが、もしも他の追手も使用できるものであれば、事前にその対策やらも知っておく必要がありそうだ。


「罠の可能性もあるぞ?それでも行くんだな?」


「あら?たとえどんな罠があっても、命を賭してわたくしを守ってくださるのよね、()()()さん?」


念を押すようにそう聞いた俺に返された言葉に、妙なとげが含まれていたのは気のせいだろうか。



「まあ、そういうわけだ。里とやらまで連れてってもらおうか」


と、そこまでのやり取りをなんとも言えない表情で聞いていた男は、ひとまず命が助かったことが嬉しかったのか安堵した様子でうなずいたのだった。





「これが私の馬車です、まあセシリア様はちと狭いですが後ろに乗ってもらって、用心棒さんの方は申し訳ないんですが歩く形で...」


と、大して申し訳もなさそうに言う男のそばには、みすぼらしいロバに少し傾いた荷車がつながれており、男のいうような馬車は見当たらなかった。

荷車には幾らかの農具や塩の入った袋らしきもの、その他いろいろなものが雑多に積まれ、男はそれらを適当にわきによけて何とか人が一人座れるくらいの空間を作り、(うやうや)しくセシリアの手を取り座らせてやる。


「あら、ありがとうございますわ」


本人もなんだかまんざらでもなさそうで、なぜかこちらの方を得意げに見てくる。


「では、行きましょう」


そういいながら男がぴしゃりとロバの尻を叩くと、ロバはいかにも億劫(おっくう)そうに鼻を鳴らしたのちゆっくりと歩き始めた。


それからの五日間はこれと言って大きな出来事は起きなかったのだが、元来おしゃべり好きなのか、それとも見た目だけは良いセシリアの気を引こうとでもしているのか、ことあるごとに下らないことをまくしたてる使いの男には随分と閉口した。最初こそその会話に付き合ってやっていたセシリアも、後半の数日はほとんどうわの空でええ、とか、そうですわね、といった相槌を打つばかりで、内心うんざりしているのがこちらにも伝わってくるようなありさまだった。

しかし当の男本人は極めて楽しそうにしゃべり続け、もう里が近いという男の言葉を聞いたのは時間の感覚も薄れてきたような時であった。


気づけばまわりも随分と高い木々に囲まれており、今進んでいる道も通常の大きさの馬車ではとても通り抜けられないような細く曲がりくねったものになっており、このロバと荷車という組み合わせが案外合理的な選択であったことが理解できた。


「あ、あそこの木、ずいぶんと高いでしょう。私は子供のころずいぶんやんちゃをしていたもんで、あれに上ろうとしたら落っこちて腕を折っちまったことがありまして―――――」


また始まった、とげんなりとする俺たち二人は、しかし目の前の道の様子がまた一段と変わったことにようやく気が付いた。舗装こそされていないものの、踏んだ時に足が沈みこまない程度には踏み固められた土の道。よく見ればここそこに最近つけられたと思しき人の足跡が散見された。


「――――おっと、もう着いたようですね。いやぁ随分と早かったなぁ、普段は一人で往復してるもんで寂しい限りでしたが、今回はお二人という話し相手がいたおかげかいつもより順調に感じましたよ!」


なんだか一人嬉しそうな様子の男に、セシリアは乾いた笑いを返していたが、とうとう目の前の森が開けた瞬間、今まで日の光をさえぎっていた木々がなくなったことから差し込む日の光が直接目を刺激したと見え、思わず手をかざすようにしていた。


「ようこそ、我々の里へ」


得意げにそういった男は、しばらく前からぱらぱらと家々から姿を現し始めた住人たちに得意げな顔を見せつつも、そのまま荷車を進ませ、やがてひときわ大きな木造の家の前につくと歩みを止めた。


「ここが里長様のお屋敷でございます。私の役目はここまでですので、どうぞこの先へお進みください」


と、その言葉にセシリアが荷車から降りるのに手を貸してやった俺は、そのまま屋敷のほうに歩を進めようとし―――――


「あ、ちょ、ちょっとお待ちください!中に入るのはセシリア様だけで、用心棒の方はちょっと...」


慌てた様子の男に制止され、俺は怪訝そうな顔で振り返る。


「なんだ、俺が入ると不都合でもあるのか」


あえて不満な様子を隠さずそう言ってみることにする。


「あ、いえ、そういうわけではないのですが、里の者以外はちょっと...」


と、そこで卑屈な笑みを浮かべつつも、歯切れの悪いままになお続けようとする男。


「カイエンはわたくしの大事な用心棒ですわ。カイエンが入れないというのであれば、わたくしもこれ以上は進みません」


と、そう宣言したセシリアの強情さが今ではありがたい。

重要な客らしきセシリアにそこまで言われ、男はどこか泣き出しそうな顔で眉根をさげ、誰か相談するものがいないかあたりを見回し始めた。


「構わんよ、二人で入ってきなさい」


と、そう突然そう声がかけられたのはそんな時だった。


「さ、里長様!」


救われた、とあからさま表情を明るくさせた男はそう叫んだ。

声がした方を振り返ると、白いものが混じり始めた黒髪を後ろに結わえ、やや上等そうな白い服を身にまとった老婆が屋敷の入り口に立ち、こちらを見下ろしていた。


「あんたが...実際に見るとわかるもんだね。名前は」


セシリアを上から下までじっと見つめた後そうつぶやき、名を聞く老婆。


「わ、わたくしはセシリアと申します」


ややつっかえながらもそう答えたセシリアに満足そうに一つうなずくと、老婆はこちらをちらりとも見ず屋敷の中に引っ込んでいってしまった。


ついてこい、ということなのだろうと判断した俺は、少しためらっていたセシリアの背を押し屋敷へと入っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ