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第四話

「おお、なかなかうまく仕上がったじゃねぇか」


含みなしにそう感嘆の言葉をかけてやる俺だったが、肝心のセシリアはやや不服そうな顔をしていた。

時刻は早朝、日の出とともに起きた俺はぐずるセシリアを叩き起こし、自分で服を着替えたことがないというセシリアのために着替えを手伝ってやっていた。


例のいかにも高そうだったドレスの残骸を含めたセシリアの持ち物は、一部の装飾品を除いて小屋の囲炉裏で全て焼いてしまった。中には今でも高値で売れそうだった物もあったので、もったいないと思う心がなかったと言えば嘘になるが、変な欲をかいたことから足がついては困る。


そんなわけで今のセシリアは猟師小屋の主のものだったであろう熊の毛皮をなめした茶色の外套と、刺客の死体から拝借した腰履きと靴といった格好で、極めつけに顔を隠すためにフードを目深に被れば、道行く人もまさかこれが伯爵様の御令嬢だとは思うまい。


「あのう...」


「ん?どうした?」


昨夜の計画では衣服を取り替えて正体を隠す、ということ自体には賛成したはず。

まさか今更格好悪いから嫌だ、なんていうわがままでも言い出さないだろうなと少し身構える。


「いえ、その、臭いが....」


そうおずおずと切り出したセシリアに、一瞬なんのことかと首を傾げた俺だったがすぐに合点がいく。


セシリアの外套は、よく見ると元々の毛皮の茶色に混じって(なに)とも知れぬような黒やら緑やらのシミがこびりついている。更に猟師連中の中には、人の匂いがすると獣が逃げるとか言って普段から沐浴などを避ける者もいる。全員がそうとは言わないが、総じて身綺麗とは言い難い連中だ。

そんな訳で、当然その外套にも持ち主の証たる体臭が染み付いているわけで...


「ま、人間いつかは慣れるもんさ。それまでは取り敢えず口で息をしておくことだな」


「うぅ...」


そんなうめき声を漏らしつつも、律儀に口ですーはーと息を始めるその姿がどうにも魚が口をパクパクさせている姿に重なり非常に面白い。


「......」


「よし、じゃあ準備もできたことだし出発するかな」


面白がっていたのが顔に出てしまっていたのだろう、すごい形相で睨まれ始めたのでさっさと話題を変えることにする。


最後に小屋に向かって軽く頭を下げて前を向くと、ふてくされたように先に歩き始めていたセシリアが妙な顔で俺の方を見ていた事に気がつく。


「どうした、そんなに意外か?」


「い、いえ、ただ随分と礼儀正しいことですわね――――」


「元傭兵なんかにしちゃ、か?」


はっと口元を押さえるセシリア。慌てて謝罪の言葉を口にしそうにしたのを手ぶりで遮る。


「別に信心深いわけじゃねぇがな、いつ何時(なんどき)くたばるかも分からねぇ生活を続けるとな、自然と思うことがあるんだよ」


ちらりと視線を向けると、セシリアは言葉を発することなく真剣に次の言葉を待っていた。


「自分は生きてるんじゃなくて生かされてるんだ、ってな。聖教徒の連中は全部神様のおかげだって説明するんだろうけどな、俺はそうは思わねぇ。もっと小さい、例えば行きずりの旅人がくれた一杯の水や、1日俺等を(かくま)ってくれたこの小屋、そういう一つ一つに意味があるんだ、とな。だから世話になったものには謝意を示す。人だろうとそうじゃなかろうと、な」


「そう、ですか...」


その相づちの後に降りた沈黙に、つい語りすぎたかと急速に後悔の念が湧いてきた。

思えば傭兵団にいる間、副団長という立場もあいまってアラギン以外の団員とは少し距離があった。それもあってか、生来のあれこれ考えすぎる性格と、無自覚にも人との会話に飢えていた事が合わさって全てセシリアに吐き出す形になってしまった。


「あー、すまん、ちょっと喋りすぎたな。ただの与太話だと思って―――――」


「そんなこと!」


聞き流してくれて構わない、という俺の言葉は、セシリアの声によってかき消されてしまった。


「そ、そんなことありませんわ。カイエンが生きてきた中で、何を大切にしてきたのかよくわかる、いいお話だったと思いますわ」


自分でも予想以上に大声を出してしまったことに多少恥じらいを感じていたのか、少し頬を朱色にしながらもそういったセシリアは、そこで少しいたずらっぽい笑みを浮かべてこちらを見つめる。


何をいう気かわからんが、非常に面倒な墓穴を掘った気がしてきた。



「でも、それでしたら、最近一番カイエンを助けたものに、十分に感謝していただかないといけませんわね?」


まったく、沈黙は金なりとはよく言ったものだ。

そこからはしばらくの間、自分の知る限りの感謝の言葉を述べ、まだ足りないとはねのけられるという全く持って謎の儀式が行われたのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「そろそろ休憩を挟むぞ」


「い、いえ、わたくしはまだ...」


そう意地を張ろうとするセシリアだったが、返事をする際にも息継ぎを挟みつつ、足は慣れない靴で擦れて痛いのか、できるだけ体重をかけないようにしているせいで妙な歩き方になっていた。


「そこに見える空き地があるだろう。あそこは旅人が何度か使ったことで(ひら)けた野宿場所だ。森で野宿をする機を(いっ)するとな、時期が悪ければ凍死するし遭難の危険性も上がる。今場所を決めて腰を落ち着けたほうが合理的だ」


そう説明すると、納得したのか疲れに負けたのか、頭を上下に振ってひょこひょこと空地へ向かい、足を伸ばして地面に腰を下ろしてしまった。


実のところ、いくら森での野宿とはいえ休むにはまだ早い刻限ではあるのだが、セシリアにこれ以上歩かせると確実に明日以降へ影響が出るとみての決断だった。

そんなわけでさっきの言葉も、妙なところで強情なセシリアを納得させるためのただの方便というわけではないのだ。


最初のころと比べるとずいぶん無口になったセシリアに、とりあえず荷物を見張っておくように言い置くと俺は森に入っていった。


野営に際して必要なものはいくつかあるが、まずは火おこしをするための木の枝を集める。落ちている木の枝を時折ナイフでたたいたり、皮を軽くはぎながら、できるだけ水分が抜けていて燃えやすいものを探す。細いのから子供の腕くらいの太さのものまで、ある程度バラバラに集めて空き地にもっていくと、セシリアはまだ同じ姿勢で座り込んでいた。無言のままこちらをちらりと見るが、特に何かをいう元気もないらしい。


「おい、今はいいが後でお前にも手伝ってもらうからな」


そう釘をさしておくと、軽く絶望したようにうなだれるセシリア。それをわき目に中央に木の枝を適当に放っておき、再び森の中へ。


今度はナイフだけでなく、小さな鍋と皮の水筒を携帯していく。

既に暗くなり始めた森の中で、手早く毒のない野草や、つるにできた白いこぶのような塊を取っては鍋に入れていく。

その間にも注意深く匂いを嗅いでいると、やがて湿った草と苔の独特な匂いが鼻についた。

帰り道を示す印を適当な間隔で木に刻むのも忘れず、注意深く進んでいくとやがて小さな沢に行き着いた。ちょろちょろとした頼りない水量で、革袋と鍋に何とか水を入れきったころには、足元が大分見えにくい頃合いになっていた。


行きに刻んでおいた印をたどりつつ、木の根に足を取られて水をこぼさぬように注意深く空き地に戻ると、セシリアが心細そうに外套にくるまってあたりをきょろきょろと見回していた。


「どうした?何かあったのか?」


できるだけ平らに近い場所に鍋と水筒を置きながらそう聞くと、セシリアはおびえた様子でこちらを見た。


「先ほどから、森から妙な音がするんですわ...」


そういわれてから耳を澄ませてみるが、聞こえてくるのはせいぜい木々が風で揺れる葉音や、鳥や獣の鳴き声ばかりだ。

いぶかし気にセシリアに目線を戻すと、森から音が聞こえてくるたび、びくりと体を揺らしていた。


そういえばこいつ、(ほとん)どお屋敷から出たこともないようなお嬢様だったんだっけ、と納得する。

夜の森は、実は意外と騒がしい。人は夜休むが、鳥獣の中には夜が活動時間なものも少なくないからだ。かくいう俺も子供のころは、風の吹く中木々が揺れる音を聞いて、幽霊がささやきかけているのではないかとびくびくしていたものだ。


世の中に触れていないという意味では、こいつは実際の年齢よりももっと幼いのだろう。


「ま、ここは人が住む街じゃないんだ。俺たち人間が、鳥や獣の領域にお邪魔してるってことさえ忘れなきゃ、向こうから何かしてくることはそうそうないさ」


そう声をかけてやるとセシリアもとりあえずは頷くが、まだまだ慣れるまで時間がかかりそうだ。


「そんなことより火を起こすのを手伝ってくれ」


実際周囲はもうだいぶ暗くなってきており、火を起こす手元が見えるぎりぎりの暗さになってきていた。


「じゃあ、まずは小さい枝で真ん中に小屋を作るような感じで立てかけて、中くらいのをその周りに、一番太いのを外側に並べてみろ」


慣れない手つきながらも、言われるままに枝を並べ始める。

やがてやや不格好な木の枝の集まりが完成し、セシリアは満足げな顔をしてこちらを見た。

まさか褒めてほしいのだろうか。


「まあ、初めてにしちゃあ上出来だな。じゃ、手を出しな」


得意げに鼻息をついたセシリアは、そう言われて不思議そうに手をこちらに差し出した。


「ほれ、こいつを持っていろ」


そういって俺は、森で枝と一緒に集めてきた()()をのせた。


「な、なんですのこれは...!」


最初はやや不安げだったセシリアは、そういいながらもやがて誘惑に負けたのか、そのふわふわとした感触を楽しむように人差し指でもってそれを(もてあそ)び始めた。


「こいつはこの辺りの森で見つかる植物の一部でな、本当の名前かどうかは知らんが"森の髭"と呼ばれている」


「森の、おひげ...!」


そう繰り返しながらもふもふと茶色い塊をいじくり回しているセシリアはしかし、俺が腰の袋から火打石を取り出したのを見て、髭のたどる運命を悟ったらしい。


「な、何をするんですの!?」


慌てるセシリアをよそに、力いっぱい打ち合わされた火打ち石から火花が飛び散り、髭に降りかかっていく。やがてそのうちのいくつかは髭の繊維の先端を赤く光らせるようになり、うっすらとか細い煙が立ち上り始める。


「ほれ、消えないうちに息を吹きかけろ。火を消さないように注意しろよ」


煙でも目に入ったのだろうか、少し潤んだ目を必死に細めながらもふーふーと髭に息を吹きかけるセシリア。


「よし、じゃあそれをさっきの枝の真ん中に入れて息を吹きかけ続けろ」


持っている手にも熱が伝わり始めていたのだろう。半ば放り投げるように入れられた火種は、息を吹きかけられるたびに赤く光を明滅させ、やがて一番中心の細い枝へと燃え移っていく。


「おい、もういいぞ」


そう声をかけられるまで必死に息を吹きかけ続けていたセシリアの顔は上気しており、気づけばその形の良い額にはうっすらと汗が浮かんでいた。


「綺麗ですわね」


ぼうっと炎が大きくなるさまに見入っているその顔は、どこか遠い場所をみているような表情で、俺は少しはっとしてしまう。


今まで自分で火を起こしたことがなかった、というだけではこんな顔はしないだろう。自分の慣れ親しんだ生活からはるかに離れた場所で、これから生活しなければならないのだ。


「おい、ちょっとそこどいてくれ」


火を起こしている間、適当な大きさに切った野草や芋を鍋に入れておいた俺は、十分に火が大きくなったのを見ると枝をずらして場所を作り、鍋をそこに置いた。背嚢(はいのう)に入れてある干し肉も合わせて入れるべきかどうか悩んでいるうちに、横から特大のぐぅという音が聞こえてきたので、干し肉も適当な大きさに切って鍋に入れた。


「随分と旅慣れているんですのね。普段からこういう生活を?」


意地でも腹の虫がなったことを認めなさそうな顔したセシリアに、俺は軽く首を振った。


「いや、昨日言ったように俺は傭兵団にいたからな、飯を作ったりする係は決まっていた。自分でやるのは旅をしていたとき以来だよ」


「そういえばカイエンは昔旅をしていたんですのよね、その時の話をしてくださらないかしら?」


「そうだな―――――」


と、そんなふうに昔通りがかった街や目にした風景のことを話しているうちに、鍋からふつふつという音がしてきたので火から外し、セシリアにもそのへんの枝を削った棒を渡してやる。


不思議そうな顔をするセシリアを尻目に、俺は棒で一番大きい芋を突き刺し、はふはふと口に運び始めた。あいにくとこれからの生活では銀の食器や陶器の皿は出てこない。早いうちに慣れておいてくれねば後が困る。


そう思いつつちらりと目をやると、謎に負けん気を発揮し思い切りよく棒で野草をすくい、口に運ぶセシリアと目が合った。どうだ、やってやったぞという得意げな表情を浮かべていたのは一瞬のことで、次の瞬間には苦味にえづきかけていた。


「おい、貴重な食糧なんだから絶対吐き出すなよ。まずくて噛めなきゃ飲み込むんだ。」


目尻にうっすらと涙を浮かべながらもなんとか嚥下(えんげ)したセシリアは、そこからはふっきれたらしく黙って具材を突き刺しては口に運ぶ作業に集中していた。


残った煮汁も大体半分飲んで鍋を渡してやると、取り落としそうになりながらも残りはすべて直接飲み干していた。この娘、案外適応能力があるのかもしれない。


空になった鍋をセシリアから受け取るとそこに水筒の水をあけ、再度火の中にいれる。


「お紅茶でも淹れますの?」


その様子を不思議そうに見ていたセシリアの言葉に思わず吹き出してしまうが、睨むような視線にきまり悪くなって一応説明してやることにする。


「これは野営の鉄則なんだがな、よほど追い詰められた状況でもなきゃ、見つけた水はそのまま飲んじゃいけねぇんだ。たとえその水が沼から汲んだものでも、底の石が見えるくらい透き通った川から汲んだものでもな」


それを聞いたセシリアは一層不思議そうに首を傾げる。確かに何も気にせずそのへんの水をがぶがぶと飲む連中のほうが多いだろうし、ここまで気にする俺の方が変わったやつだということになるんだろうな。だがそれにはきちんと理由がある。



「俺が昔傭兵団に加わったばかりのころにな、俺と年の近いやつがいたんだ。あっちのほうが年は下だったがなかなか体格の良いやつでな、戦場では頼りになったぜ。水についての注意は団の先達から2人とも受けていたんだがな、あいつはそんなもん気にせず其の辺の水を飲んでは言いつけを律儀に守っている俺のことをからかったりしていたよ。そしたらある日、あいつは盛大に腹を壊しちまったんだ」


「いいお友達でしたのね」


ふふっと話を聞きながら思わず笑ってしまったセシリアだったが、俺はその言葉に肯定も否定もしなかった。なぜならこの話には続きがあったからだ。


「まあ、最初はそらみたことかと周りの連中も笑っていたんだがな、数日経っても一向に治らないんで医者を呼びに行ったんだ。運良く街の近くに滞在してたんでな」


そこで少し口を閉じると、パチパチという火の弾ける音がやけに耳についた。


「そうしているうちにもあいつはどんどん痩せていってな、飯を食っても食ってもすぐ全部出ちまうからどうしようもなかった。最後には血と黄色い液しか出るものがなくなってな。後々やってきた医者がいうには、大方水の中にあった悪いものに当たったんだろうと。適当に薬みたいなものを飲ませようとしたみたいだがすぐに吐いちまってな。ある朝様子を見に行ったら、冷たくなってたよ」


「......」


再びパチパチという音が、間を強調するように響き渡る。


「みんなでそいつのために穴を掘ってな、俺が体を運んだんだが....驚いたよ。まるで枯れ木みてぇに軽かった。それから俺は水は絶対沸かしてから飲むようにしてる」


ガサリ、と自分を支えきれなくなった枝が崩れ落ち、炎が躍るように形を変える。


水が湧くまでの小話にしてはちと重すぎたか、とちらりと横に目をやった俺は思わずぎょっとしてしまった。


「おい、なんでお前が泣いてんだよ...」


半ば呆れるようにして適当な布切れを渡してやると、セシリアはびーむと鼻をかみ、こちらを見る。


「ご、ごめんなさい。あなたのお友達のお話なのにわたくしが泣いていては変ですものね...」


「いや、友達というかなんというか...」


無論その当時は多少悲しかったが、他にも凄惨な最期を遂げた顔見知りなどたくさんいるのでなんとも形容しがたい気まずさがある。


結局ぐしぐしと泣くセシリアに何を言うべきか分からなかったので、大人しく水が沸くのを待って火から外し、虫などが入らないように布を被せて四隅に石を置いておく。


「おい、そうだ、お前ちょっと靴を脱いでみろ」


「...?」


もう大分落ち着いて時折鼻をすするだけだったセシリアは、不思議そうな顔でこちらを見る。


「元々歩き慣れてない上に他人の靴を履いていたんだ、おおかた靴ずれでもして痛いんだろう」


図星なのかどこかバツの悪そうな顔をしながらも、足を何故か遠ざけようとするセシリアを問答無用で押さえつけ、靴をすぽっと外してやる。


淑女がどうの恥じらいがどうのという抗議に関しては一切耳を貸してやらない。


せめてもの意地なのか、顔を真っ赤にしながら両手で顔を覆っているセシリアに呆れてため息をつきつつ、簡単に足の様子をみてやる。


白く柔らかそうなその足は男のそれよりも少し小さく、どこか丸みを帯びていた。だがそんな中に痛々しく赤い擦過傷(さっかしょう)が出来ており、少し触れると大げさな悲鳴が下のほうから聞こえてきた。


血もほとんど出ていないし、明日に影響は出ないだろう。念の為にできるだけ綺麗な布切れに先ほど沸かした水を垂らし、足を拭ってやる。


この頃にはもう抵抗を諦めていたようで、時折悔しそうなうめき声が聞こえてくる以外は比較的静かなものだった。


「明日は適当に柔らかい布かなんかを擦れる場所に詰めておくと楽になるぞ」


そう声をかけてやると、顔を真っ赤にしたセシリアは無言で足を抱え込み、ためつすがめつしてややマシな状態になったことをみると焚き火の反対側の方に移動してしまった。


「おい、野宿は基本的に交代で火の番をすることになる。今回は俺が先に起きているからお前は寝ていろ」


と、そう声をかけるまもなくセシリアはミノムシのように外套にくるまり横になっていた。


これはちゃんと見張りの交代ができるか怪しいな、と思いつつ、追加の薪を適当に追加しながら夜は静かに更けていった。

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