問い続ける者たち
週末、リナは図書館に向かう途中で、ふと脇道の古書店へ足を踏み入れた。アンティーク雑貨のように、埃をかぶった書物や石像が並ぶ。
奥の棚を物色していたリナの目に留まったのは、古いギリシャ語の書物。ページを開くと、ところどころに赤ペンのような書き込みがあって、読めない文字も混じっていた。だが、巻末近くにこう書かれているのを見つけた。
「汝は知っているのか? その問いを捨てぬ限り、人はいつだってどこへだって旅をする」
リナは思わず息を呑む。これがただの偶然なのか、それとも――。店主が「その本は非売品だけど、面白いのかい?」と声をかけてくる。リナは少しだけ微笑み、そっと本を棚に戻した。
「いえ、少し見ただけです。でも、また来ますね」
そう答えて店を出ると、まだ暑さの残る風が吹き抜ける。遠くで雷鳴のような音が聞こえた気がしたが、それはただの都会の雑踏かもしれない。けれど、リナの胸にはもう一つの世界が確かに存在していた。
“問いを立てる”――それを忘れない限り、リナは自分の道を開き続けられるだろう。そう信じながら、彼女は大学の門へと足を進めていく。
問いを抱く者たちに、終わりはない。ソクラテス、プラトン、アリストテレス――古代の偉人たちが示してくれた道を、リナはこれからも歩み続けるのだ。