部屋の中で
読んでくれてありがとうございます!
「隠し階段・・・ってことすか?」
「わからない、でもなんでだろう、なんだか中から呼ばれている気がする」
「大丈夫なんすかね」
「とりあえずは様子見ね、ダメそうなら引き返しましょう」
「へい」
オーカとマックは階段を下る
階層的には地下3階になる訳だが地上3階から地下2階までのマップよりも外に階段が続いている事になる
もしかしたらこの上にの階の同じ場所にも何かあるのかもしれない、オーカはそう思っていた
今までの階層の移動よりも長い階段だった
体感で言えば3階分は下っただろうか
やっと階段の終わりが見えてきた
部屋の中を覗いてみると
「ここも一部屋だけの造りみたいだね」
「そうっすね、それであれが・・・」
「ここのボスって所かしら」
部屋はまるで遺跡の様な造りだった
先程までの階層とは違い奥まで見渡す事ができる
そして部屋の奥には1人の巨人が立っている
「みて、マック、あの武器かっこいいねぇ」
「石でできた長斧っすね、渋いっす」
ボスが右手で杖代わりのようにもっている武器は全てが石で作られている斧だった
長さは大体2mに届かないくらいだろうか
手で持つところには布が巻かれている、それがまたカッコよさを醸し出していた
「あのボス倒せばドロップするかな?」
「するかもしれませんね、やりますか」
「そうだね、全然動かないし、ダンジョン内だし奥の手が使えるかも」
「奥の手?」
「とりあえずちょっと近づいてみてからのお楽しみ、さ、行くよ」
「へいっ!」
オーカとマックはボスの待つ部屋へと足を踏み入れる
少しボスに近づいてみるがボスが動く気配はない
「生きてるんすかね?人形とかだったりしないっすか?」
「うーん・・・それはないと思うけど」
とはいえ死体すら動き回る世界だ、人形だったとしても動き回るだろう
実際そういう魔物は存在している
「ま、攻撃したらわかるよ、魔法耐性が高かったのは地上だけっぽかったしここは私の最大火力で開戦といこうか!」
そういうとオーカは胸の前で手を合わせる
マックはその時風を感じた
それがオーカの全身から溢れる魔力の流れだというのに気づくのには時間はかからなかった
凄い・・・マックは集中しているオーカの邪魔にならないように声はあげなかった
だが一緒に行動を共にしてもうすぐ1年になるがここまでの魔力を使うオーカを見るのは初めてだった
魔力が流れオーカの頭上に集まっていく
いつしかそこには石が出来ていた
それでも魔力は流れ続ける
マックは普段そこまで魔力を感じない、というより感じる人間の方が少ない、そして魔力を他人に感じされる人間はさらに少ない
そのマックですらわかるほどの存在感をオーカの魔力は有している
いや、今オーカが使おうとしている魔法そのものがそれだけの強さを持っているのかもしれない
徐々に石が大きさを変えていく
先程までは拳大ほどだったのだが今は人間の頭以上に、そしてその大きさはさらに増え続けていく
最終的には1m大ほどの岩が空中に浮かんでいた
だがそれで終わりではないようだ
先程までの岩が今度は小さくなっていく
魔法の制御に失敗したのだろうか?マックはオーカに視線を移すがそのような様子は見えない
岩へと再度視線を戻す
そしてわかった
これは圧縮しているのだ
1m大だった岩は2回りほど小さくなった
岩を圧縮させるほどの高密度の魔力をオーカは操っていたのだ
「いくわよ、外だと地形が変わりかねないから絶対に使えないし発動するまでに馬鹿みたいな時間がかかるから使いどころが全くなかった究極のロマン砲!」
ごくり、マックは唾を飲み込み静かに行く末を見守った
「メテオキャノン!」
オーカが合わせていた両手をボスの方へと勢いよく差し出した
その動きに合わせ頭上にあった岩が動く
その速度は相当なものだ
一瞬で50mは離れているであろうボスへと襲い掛かった
だが、メテオキャノンはボスの目の前で急に消え去ってしまった
「あれ?なんで?」
魔法の発動に失敗したのだろうか?
だがそれにしては消え方がおかしい
一瞬にして目の前から岩が消えたのである
仮にストーンバレットを途中で辞めたとしてもあのような消え方はしない
魔力で作り出した石がぼろぼろっと崩れ去るように消えていくだけだ
「なんで・・・?ストーンバレット!」
オーカは今度はストーンバレットをボスに向けて放った
結果は同じだった
ボスに届く前にストーンバレットが消えてしまった
「えー・・・?魔法禁止って事?」
「発動までは出来てますから攻撃魔法無効って事なんすかね」
「そんなのあり?」
「いや、聞いた事はないっすけど、目の前で実際にあんな光景見せられちゃったもんで」
「斬撃耐性の次は魔法耐性、そして魔法無効か・・・まーたロマン砲の使いどころがなくなっちゃった」
「さっきの奴当たってたら相当ダメージ与えてたでしょうね」
「動かない敵にしか使えないような魔法だから完全にここ用だと思ったんだけどね、はー・・・まあ、仕方ない、結局はいつも通りよ」
「へいっ!わかりました!」
「魔法が無効じゃ魔力をぶつけて釣る事もできないわね、肉弾特攻あるのみか!」
「へいっ!」
オーカが薙ぎ払い丸を片手にボスに近づいていく
またしても身長の高い相手だ
ジャイアントより頭一つ分は高く感じる
そして1番の特徴は一つ目だという事だ
つまりこのボスはサイクロプスである
武装は石斧だけのようだ、かなり長いから間合いに気を付けなければいけない
そして腕の太さはジャイアントよりもさらに太い、腕力は相当なものだろう
オーカはそんな相手を前に駆け出した
動かない相手だ、まずはなんとか先手を取って1発いれておきたい、そんな思いがオーカを加速させていった
(まだ動かない・・・遠い・・・まだ・・・まだ・・・)
1歩ずつ力をいれ床を踏みしめる
15mくらいの距離になる、サイクロプスはそれまで虚空を見つめていたが初めてオーカの方へと顔を向けた
(まだいける・・・)
10mの距離、サイクロプスは右手に持っていた石斧を持ち上げた
「今だっ!」
オーカは両足に一気に力を入れ薙ぎ払い丸を横に構えながらサイクロプスの方へと跳躍した
巨人族の繰り出す攻撃は大体が大振りだ
大きく腕を振りかぶり全力で振り下ろす
だから間に合うと踏んだ、そして間に合った
サイクロプスの右わき腹に薙ぎ払い丸が襲い掛かった
だが浅い
攻撃は通ったが思ったよりは通らない、そんな感覚だ
オーカは歯噛みする思いだ
しかしここで足を止めていてはサイクロプスの攻撃を受ける事になる、追撃を諦め1度サイクロプスから距離を取る為に全力で横に飛んだ
だがオーカを追いかける影があった
サイクロプスの石斧である
サイクロプスは石斧の柄の部分を片手で持っている
その分距離が延びオーカに届きそうになっている
不味いと思い咄嗟に薙ぎ払い丸で身体を隠す
石斧が薙ぎ払い丸に当たる
オーカは空中にいた為踏ん張りがきかずに大きく後方へ吹き飛ばされてしまった
飛ばされながらも体制を整え左手を付きながらオーカは止まった
本来ならここでアーススパイクなどをお見舞いし敵の追撃を止めるのがいつものオーカのやり方だが今回ばかりはそれも使えない
目の前にサイクロプスが迫る
両手でしっかりと薙ぎ払い丸を構える
またしても上段からの攻撃を繰り出そうとするサイクロプス
今度はその攻撃を避けずにオーカは真正面から攻撃を受け止めた
激しい音がする
サイクロプスはそのまま力で押してこようとはせずに何度も石斧を振り上げ何度もオーカに向けて振り下ろしてきた
そのすべてを薙ぎ払い丸で受け止める
かなりの衝撃である
だがそれでもオーカが膝をつくことはなかった
何度攻撃しても倒れない相手にイライラしだしたのだろうか
サイクロプスは攻撃の手を緩めない
時折角度をかえ横に薙ぐように石斧を振るってきたがオーカはそれすら受け止めた
オーカが攻撃を受け止めている、その理由は1つだ
マックが後ろからサイクロプスの膝の後ろに薪割を振り下ろした
だが膝は崩れなかった
刃は通っている、だがその巨体を支える足はマックの渾身の一撃だけでは倒れなかった
攻撃をされサイクロプスが振り向く
この流れは大体いつも同じだ
そうはさせるかとオーカがサイクロプスに攻撃を加える
するとサイクロプスはまたオーカの方へと向きを変え攻撃を繰り出す
この流れでサイクロプスの足を狩れるならそれはそれで構わないとオーカは思っている
自分が攻撃を受け続ければいいだけの話
それで相手の足を潰せるなら簡単な仕事である
だが事態はそう簡単に進んでくれないらしい
サイクロプスが石斧を両手で持ち始めた
その姿はまるで目の前のオーカを真似しだしたかのようだ
初めて両手持ちから繰り出されるサイクロプスの振り下ろし
それを薙ぎ払い丸で受け止める
受け止める事はできた
出来たのだがその衝撃のすべてを殺す事はできなかった
オーカはこの世界で初めてと言えるダメージと呼べるものを受けた
効果が合った事がわかったのだろう、サイクロプスの攻撃は止まない
攻撃を受け流したり躱したりもしたがどうしても受け止めなければいけない場面がでてくる
その時はダメージを負ってしまう
隙をついて反撃も繰り出すがそこまでのダメージをサイクロプスに与える事ができていない
それは後ろから懸命に攻撃をしてるマックもだった
「一度離れるわよ!」
オーカが叫ぶとマックは瞬時に後方へ駆け出した
オーカはサイクロプスの攻撃を待ちそれを躱し距離を取る
移動速度ではオーカの方が上である
「まずいわね・・・どうしたもんか・・・」
ダンジョン内部なのでアースクリエイトは使えない、攻撃魔法を相手に当てる事ができないので動きを止める事も難しい
オーカ自身の攻撃は通るがちゃんと全身の力を注がないとダメージは期待できない
「うーん・・・困ったな・・・」
オーカの脳みそがフル回転する
だが策というものはなかなか降って湧いてこないものだ
(一度逃げるのもありだけど・・・)
そう思った時マックの叫ぶ声がオーカに届いた
「師匠!入ってきたところがなくなってます!」
オーカの選択肢から逃げるという項目がなくなった瞬間であった
寒いから身体には気を付けないとね




